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樹里ちゃん、ケーキ三昧をする

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 樹里達は次の対戦会場である有名パティシエがいる洋菓子店に着きました。


(樹里さんとなぎささんが一勝で、ここではアンジョリーナ沢入そうりに勝ってもらわなければ、決勝会場のラーメン店が無駄になる)


 酒野投馬美さけのつまみはギリギリヤラセと言われない程度に演出で乗り切ろうと考えています。


 でも、ヤラセと言えばブジテレビなので、もうどんどんやってしまえばいいと思う地の文です。


「ヤラセなんかした事ないわよ!」


 顔を引きつらせて地の文に切れる酒野です。


(樹里さんもなぎささんも、前の二軒で食べ過ぎているから、ここへ来ての甘いものは厳しいはず)


 酒野はニヤリとしました。


「さて、選手権も後半戦に突入です。ここは本場フランスで修行した有名パティシエがいらっしゃる洋菓子店です。ここでは、それぞれワンホールずつケーキを食べていただき、一時間で一番食べた方が勝利となります」


 進行役の畠町アナが言いました。


(ここで勝たないと、負けが決まって、今後の芸能活動に支障が出る。何としても勝たなければ)


 中曽根まどかと沢入は同じ事を考えていました。そして互いを見て、


(こいつにだけは負けない!)


 決意を新たにしました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「ええと、トイレ行っていい? 酔い止めの薬を飲んだせいで、おしっこが近くて」


 場所をわきまえず、なぎさが言いました。露骨に嫌な顔をするオーナーパティシエです。


「どうぞ」


 店の女の子が苦笑いをして言いました。なぎさはトイレに駆けて行きました。


「なぎささんは、トイレで戻しているんじゃないだろうな?」


 ディレクターがなぎさに疑惑を抱きました。


「それはないです。焼肉店で、『たくさん出たよ」って、見せられましたから」


 気持ち悪そうにADの女の子が言いました。


「そ、そうか」


 ディレクターはその場面を想像して、吐き気を催しました。


「またなぎささん、戻って来ないな。様子を見て来てくれ」


 ディレクターが言いました。ADの子はうんざりした顔でトイレに行きました。


 するとなぎさが戻って来て、


「さっきはごめんね。私のう◯こ見せちゃって。気持ち悪かったでしょ?」


 ADの子に謝りました。


「いえ、大丈夫です」


 ADの子は確認しなくて済んだので、ホッとしました。


「じゃあ、今回も見てくれる?」


 結局、ADの子はなぎさの排泄物を見せられてしまいました。


 なぎさのせいで、非常に下品な話になっていると思う地の文です。


(取り敢えず、すまん)


 心の中でADの子に謝るディレクターです。


「それでは本番始めますので、所定の席に着いてください」


 ディレクターが言いました。樹里達はネームプレートが設置されているテーブルに着きました。


「第三回戦、開始です!」


 畠町アナの掛け声で、一斉に四人がホールケーキを食べ始めました。


「おお!」


 酒野は沢入と中曽根が凄まじい勢いでケーキを食べていくのを見て、ガッツポーズしました。


(この回は、中曽根と沢入のどちらかが勝つわね)


 一安心した酒野ですが、


「次、ちょうだい」


 なぎさが言ったのを聞き、ギョッとしてなぎさを見ました。なぎさはすでにワンホール食べ終えており、次を食べ始めました。


「負けるか!」


 それを見た中曽根はケーキを手づかみで食べ始め、なぎさを猛追しました。


「そうはさせないわ!」


 沢入も両手でケーキを鷲掴みして口に押し込んでいきました。


「ああああ……」


 それを見て、パティシエが震え出しました。


「え?」


 酒野がパティシエの様子に気づきました。


(まずい。あんな下品な食べ方をしては……)


 酒野はディレクターに、


「中曽根と沢入にもっと品良く食べるように指示して!」


 耳打ちしました。


「わかりました」


 ディレクターはカンペで指示しましたが、夢中になっている二人にはそれがわかりません。


「いい加減にしろ!」


 遂にパティシエが切れてしまいました。


「命を削って作っているケーキをそんな風に食べるのなら、もう我慢できない。出て行け! 放送はするなよ! 弁護士と相談して、損害賠償請求をしてやるからな!」


 鬼の形相で怒鳴り散らしたパティシエの迫力に、中曽根と沢入は止まってしまいました。


「何、どうしたの?」


 全然気づいていないなぎさは、まだケーキを食べており、三ホール目を完食していました。


「お前も食べるのをやめろ!」


 パティシエはなぎさに詰め寄りました。


「嫌だよ。親友の六ちゃんにテレビ観てねって言ったんだから」


 なぎさはパティシエを無視して次のケーキを食べ始めました。


「親友のろくちゃんだと!? そんな奴関係ないだろう! 私がダメだと言っているんだから、やめろ!」


 パティシエはそれでも怒鳴りました。


「あのお、六ちゃんは、五反田六郎様の事で、番組のメインスポンサーの五反田グループの会長です」


 酒野が仲裁に入りました。それを聞いて、パティシエが真っ青になりました。


「ご、ご、五反田六郎様!?」


 パティシエは心臓が止まりそうです。


(この店が入っているビルのオーナー企業だ……。まずい、非常にまずい……)


 パティシエはまさしくてのひらを返して、


「あはは、冗談ですよお。どんどん続けてくださいね! ケーキ、追加して!」


 引きつり笑いをして厨房へ逃げて行きました。


「何、あの人? 具合が悪いの?」


 なぎさは首を傾げました。


「そうなんですか」


 樹里はそれにも関わらず笑顔全開で応じました。


「よし!」


 なぎさが別の事に気を取られている隙を突いて、中曽根と沢入がケーキをがむしゃらに食べました。


「時間です! そこまで!」


 畠町アナが言いました。


「今回は沢入さんが勝利です。決勝戦はラーメン店で行います!」


 畠町アナが告げました。


「もう、あの変な人のせいで、負けちゃったよ」


 なぎさは肩をすくめました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開です。


 次回、遂に長い戦いが終結します。


 ワクワクが止まらない地の文です。

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