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樹里ちゃん、大食い番組の収録に参加する(中編)

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 樹里と親友の松下なぎさは、ブジテレビというヤクザなメディアに騙されて、大食い選手権に参加しています。


「ヤクザじゃありません!」


 地の文の的確な表現に切れる常務取締役の酒野さけの投馬美つまみです。


「さあ、皆さん、準備はよろしいでしょうか?」


 司会の畠町真理子アナが言いました。


「よくないよ。おしっこ行かせて」


 なぎさが言いました。


「早く行って来てください」


 顔を引きつらせて告げる畠町アナです。全員、なぎさのトイレ待ちです。


 十五分経っても戻って来ません。道に迷っているのでしょうか?


「ごめんごめん、◯んこもしたくなっちゃってさ」


 羞恥心のかけらもないなぎさは笑顔で戻って来ました。


「そうなんですか」


 あまりにもストレートな表現なので、苦笑いで応じる畠町アナです。


「さあ、本番、十秒前」


 ディレクターが叫びました。


「スタート!」


 ディレクターのキューで、畠町アナがにこやかにカメラに映りました。


「皆さん、今晩は。私は今、都内にある一番大きい回転寿司のお店に来ています」


 畠町アナは店内を歩いて行きます。


「今宵、真の大食い王者を決める選手権が始まろうとしています。それでは、出場者をご紹介致します」


 畠町アナはまず最初に過去の人のところへ行きました。


「うるさい!」


 プロフィールを述べただけの地の文に理不尽に切れる元大食い女王の中曽根まどかです。


「レジェンドの中曽根まどかさんです。本日は体調は如何ですか?」


 畠町アナがマイクを向けました。


「絶好調です!」


 中曽根は右の拳を握りしめて言いました。


「よろしくお願いします」


 中曽根がまだ何か喋っているのに、容赦なく次へ行く畠町アナです。


「さあ、次は現在、大食いクイーンの名をほしいままにしているアンジョリーナ沢入そうりさんです」


 畠町アナの紹介に機嫌良さそうにフレームインする沢入です。


「本日の対戦相手で、一番の強敵はどなたでしょうか?」


 畠町アナが尋ねました。沢入はフッと笑って、


「そうですね。どなたも大した事ありませんが、強いて挙げるなら、御徒町樹里さんですかね」


「そうですか。頑張ってください」


 畠町アナはまた話の途中で次に行ってしまいました。沢入が切れていますが、カメラマンもディレクターも無視しています。


「さて、次は……」


 畠町アナはクロコダイル藤山と目が合いましたが、素通りしてなぎさの席へ行きました。


「無視するな!」


 切れる藤山ですが、誰も相手にしていません。


「ダークホースの松下なぎささんです」


 畠町アナはなぎさにマイクを向けました。


「ヤッホー、なぎさだよ。みんな、観てる?」


 なぎさは畠町アナを無視して、カメラに近づきました。


「あの、なぎささん、大食いには自信がありますか?」


 ピクッとしながらも、冷静に尋ねる畠町アナです。


「自信がなきゃ、来ないよ。でも、ダイエット中だから、あまり食べられないかなあ」


 いきなりのトンデモ発言です。


(今のはカットだな)


 ディレクターは畠町アナにそのまま進めるように指示しました。


「そうですか。健闘を祈っています」


 畠町アナは西園寺伝助が映りたそうにアピールしているのを無視して、樹里のところへ行きました。


「樹里さん、今日はどうですか? 勝てそうですか?」


 畠町アナはディレクターからの巻きの合図に質問を変えました。


「わかりません」


 樹里は笑顔全開で言いました。


「はい、それでは戦いに入っていただきましょう。店長さん、よろしくお願いします」


 畠町アナは寿司を載せるベルトコンベアの内側に立っている店長に言いました。


かしこまりました」


 ベルトコンベアが動き出しました。


「さあ、第一ラウンド開始です!」


 畠町アナが叫びました。


「うおおおお!」


 最初に寿司が流れてくる位置につけているのは、中曽根です。中曽根は全ての皿を取ってしまい、まるで流し込むように口の中に寿司を突っ込んでいきます。二番手の沢入には一皿も流れて行きません。


「ちょっと、どういう事ですか? お寿司が流れて来ないんですけど!?」


 沢入が様子がおかしいのに気づき、叫びました。


「中曽根さん、いっぺんに十皿より多く取るのはルール違反です。戻してください」


 畠町アナが言いました。


「チッ」

 

 中曽根は舌打ちして、皿を戻しました。


(やる事がいじましいのよ、おばさん)


 沢入は流れて来た皿を次々に取りながら口に放り込み、まるでゴミ箱のような勢いで食べて行きます。


『もっと寿司を流してください』


 ディレクターが店長に指示しました。店長は頷き、寿司職人を二人追加して、握らせました。


(やっと流れて来た)


 三番手のクロコダイル藤山は皿を取りました。


(ゲッ、嫌いな穴子だよ。どうしよう?)


 一度取った皿は戻せません。藤山は花を摘んで穴子を食べました。


(ぐうう、耐えられない。お茶、お茶!)


 藤山はお茶で穴子を流し込みました。


「あ、美味しそう!」


 なぎさはいきなりカットメロンを取って食べました。


「なぎささん、デザートは食べても構いませんが、カウントされませんよ」


 畠町アナが告げました。


「え? そうなの? じゃあ、デザートだけ食べれば、只なんだね?」


 なぎさは自分に都合が良い解釈をしました。


「違うんですよ」


 顔を引きつらせて言う畠町アナです。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


(俺の大好物の玉子焼きだ!)


 伝助は喜んで取り、食べました。


「伝助さん、それはお寿司ではないので、カウントされません」


 畠町アナが非常な通告をしました。


「ええ? そんなあ……」


 ナマモノが苦手な伝助は、食べるものが限定されるのです。


(じゃあ、かっぱ巻きとかんぴょう巻きしかないよ)


 項垂れる伝助ですが、食べられないものがある人は大食い選手権に出てはいけないと思う地の文です。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で流れて来る寿司を全部食べています。


(樹里さん、一番不利な位置なのに、一番食べてる)


 ディレクターは顔を引きつらせて樹里の食べっぷりを見ていました。


 まだ続くと思う地の文です。

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