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樹里ちゃん、樹里ちゃん、大食い番組の収録に参加する(前編)

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 今日はあの「楽しくないけどテレビじゃない」でお馴染みのブジテレビが制作する「一番大食いは誰だ選手権」の収録の日です。


「そのキャッチ、違う!」


 地の文の言い回しにイチャモンをつけるブジテレビ常務取締役の酒野さけの投馬美つまみです。


 樹里となぎさはリムジンに乗り、ブジテレビへ向かいました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「車酔いしちゃいそうだから、お薬飲むね」


 なぎさは夫の栄一郎が渡した酔い止めの薬を飲みました。


「水、水」


 なぎさは家から持ってきた二リットル入りの水を全部飲んでしまいました。


「私、お薬飲むのが下手だから、水ばっかり飲んじゃうんだよね」


 結局、なぎさは全部で四リットルの水を飲み、ようやく酔い止めの薬を飲み込みましたが、車はブジテレビに着いていました。


 何の意味もないと思う地の文です。


「ごめん、トイレ」


 局内に入るなり、なぎさは走ってトイレに行きました。


「大丈夫ですか、なぎささんは?」


 酒野は苦笑いをして樹里に尋ねました。


「わかりません」


 樹里は笑顔全開で応じました。引きつり全開になる酒野です。


 


 樹里達が収録するスタジオに着くと、すでに他の出演者が来ていました。


「樹里さん、久しぶりです!」


 嬉しそうに近づいてくる変質者です。


「西園寺伝助だよ!」


 地の文のボケに激ギレする伝助です。


「お久しぶりです、西園寺さん」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「初めまして、アリゲーター淺間さん」


 なぎさは伝助の隣にいたクロコダイル藤山に挨拶しました。


「初めまして、松下なぎささん。私はクロコダイル藤山です」


 歯軋りしてなぎさに言う藤山です。


「あれ、そうなの? 改名したんだ。知らなかったよ」


 全く悪びれずに応じるなぎさです。


「改名してませんから!」


 藤山は早速切れ出しました。樹里には目も合わせられないくせに、なぎさには言い返せる藤山です。


「うるさい!」


 細かい事が気になってしまう地の文に切れる藤山です。


(なぎささん、相変わらず際どいファッションだなあ。いいなあ)


 エロい目でなぎさを見る伝助です。樹里に伝えましょう。


「勘弁してください」


 土下座をして地の文に懇願する伝助です。


「本日はよろしくお願いします」


 そこへ大食いクイーンのアンジョリーナ沢入そうりが来て言いました。


「よろしくね、大統領」


 悪気なく名前ボケをぶっ込むなぎさです。


「私はアンジョリーナ沢入です。大統領じゃないです。改名もしてません」


 沢入は先回りして言いました。するとなぎさはすでに樹里と一緒に歩き去っていました。


「きいい!」


 歯軋りして悔しがる沢入です。


(精神的に追い詰められなさい、小娘が!)


 それを嬉しそうに見ている元大食い女王の中曽根まどかです。


「あ、久しぶり、箕輪さん」


 なぎさがいきなり名前ボケして来たので、


「そのまどかじゃないです! 中曽根です!」


 果敢に突っ込む中曽根です。


「え、そうなの? 総理大臣だった人?」


 更に名前ボケするなぎさです。


「その中曽根じゃねえよ! 私は女だし!」


 なぎさの悪気のないボケに激ギレする中曽根です。


 沢入の事を笑っていたのに、自分の方が精神的に追いつめられてしまった中曽根です。


(しまった、興奮してしまったら、爆食できなくなるわ。落ち着かないと)


 中曽根は深呼吸をしました。


(何としても、大食い女王に返り咲いて、またレギュラー番組をたくさん持つのよ!)


 ガッツポーズする中曽根です。


「はい、まず、オープニングを撮りますので、よろしくお願いします」


 ガタイのいいディレクターが言いました。


 出演者が並んで、タイトルコールです。


「一番大食いは誰だ選手権!」


「一番初めは一宮!」


 誰かが全然違う事を言いました。


(多分、なぎささんだ。このままでいいか)


 諦めが早いディレクターは全員を連れて、ロケバスが待つ地下駐車場へ行きました。


 全員を乗せたロケバスが出発しました。


「まず最初は回転寿司店に行きます」


 ディレクターが言いました。


「ここからは、新人アナウンサーの畠町はたけまち真理子まりこがご説明します」


 ブジテレビの一番の有望株の女性アナウンサーですが、多分お局のSアナウンサーに潰されると思う地の文です。


「誰の事よ!」


 ブジテレビのどこかで切れる崎山陽子アナです。


「回転寿司店は貸切になっておりますので、他のお客様がお皿を取ったりしませんし、ましてやネタを舐めたりしませんし、醤油差しをしゃぶったりもしませんので、ご安心ください」


 妙な事を言う畠町アナです。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「何かご質問はありますか?」


 畠町アナがにこやかに言いました。


「はい!」


 なぎさが手を挙げました。ディレクターがカンペで「訊かなくていい!」と指示しましたが、


「はい、松下さん」


 気づかずに畠町アナはなぎさに振ってしまいました。


「おしっこ漏れそうです。停めてください」


 樹里以外が転ける事を言うなぎさです。


 ロケバスはコンビニの前に停まり、なぎさはコンビニへ走りました。


「お、俺も!」


 すっかり頻尿になっている伝助もコンビニへ走りました。


「やっぱり俺も」


 クロコダイル藤山も走りました。項垂れるディレクターです。畠町アナは苦笑いしています。


 


 そんなこんなで、ようやくバスは目的地の回転寿司店に着きました。


「本日はよろしくお願います」


 ディレクターと畠町アナが店長に挨拶しました。


「こちらこそよろしくお願いします」


 店長はさわやかな笑顔で応じました。畠町アナが好きなのです。


「やめろ!」


 真実をバラした地の文に切れる店長です。


「では皆さん、皆さんのお名前のプレートがある席に着いてください。お互いがどれだけ食べているのかわからない配置になっています」


 畠町アナが言いました。六人の出演者は他の出演者が見えない席に座りました。


「これですと、自分が今何位なのかわからないというスリリングな展開になります。楽しみですね」


 可愛い顔で六人をあおる小賢しい新人アナだと思う地の文です。

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