表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
744/839

樹里ちゃん、バラエティ番組の収録に参加する

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 今日は日曜日です。樹里は先週に引き続き、大東京テレビ放送へ行きます。


 いろいろと省略されて、いきどおっている者達がいますが、全力で無視する地の文です。


 不甲斐ない夫の杉下左京は、樹里の姉の璃里と留守番ができるので、喜んでいます。


「やめろ!」


 無視されたと思ったら、いきなり事実無根の心理描写をされて切れる左京です。


 


 そんなこんなで、樹里は何事もなくDTBの本社に着きました。


「本日はよろしくお願いします」


 ロビーで出迎えたCDの大外刈りが言いました。


大外一朗おおそといちろうだよ!」


 名前ボケが大好物の地の文に切れる大外です。


「よろしくお願いします」


 樹里はいつも通り、深々とお辞儀をしました。


「おう、樹里ちゃん。今日はよろしくな!」


 そこへスケベの権化が来ました。


「誰が東大寺奈良男だ!」


 大御所芸人をディスって地の文に切れる大山田英俊です。


「大山田さん、よろしくお願いします」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「大山田さん、どうされたのですか?」


 キョロキョロしている大山田に大外が声をかけました。


「あ、いや、何でもない。気にせんといて」


 大山田は早よ行けとジェスチャーで大外に指示しました。


「あ、はい」


 何かを察した大外は樹里を連れて奥へ行きました。


 実は、愛人であるアイドルの山本絵里加を待っているのは内緒です。


「内緒にしろや! 殺すぞ!」


 まるで反社のように凄んで地の文に切れる大山田です。


 でも、樹里の母親の由里より怖くないので、平然と聞き流す地の文です。


「何だって!?」

 

 地獄耳で聞きつけて、地の文に詰め寄る由里です。そのせいで身体中の水分が蒸発してしまった地の文です。


 


 樹里は大外と共に収録が行われる第一スタジオに入りました。


「ああ、樹里さん、よろしゅう頼んまっせ」


 大山田の相方の村松高志が言いました。


「よろしくお願いします」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「樹里さん、頑張ろうね」


 西園寺伝助が樹里の親友のような顔で挨拶しました。


「親友だろ!? 俺は樹里さんとは付き合いが長いんだよ!」


 「樹里ちゃん、取材される」以来十三年にも及ぶ長い付き合いを強調する伝助です。


「それには触れないで!」


 取材の一件は黒歴史なので、涙目で地の文に懇願する伝助です。


「はい、頑張りましょう」


 何を頑張るのかわからないまま、樹里は笑顔全開で応じました。頑張る必要はないと思う地の文です。


「おはようございまーす」


 大山田の愛人が到着しました。


「違います!」


 直球勝負に出た地の文に抗議する山本絵里加です。


「おはーす」


 その後、白々しく入ってくる大山田です。絵里加とアイコンタクトをしています。


(めんど臭いなあ、おじさんは)


 そのつもりはない絵里加は仕方なく応じていました。何も知らないのは大山田だけです。


 ADの女の子の誘導で、各自がセットの席に着きました。伝助は絵里加と樹里の間なので、喜んでいます。


(キモ)


 その顔を横目で見ている絵里加です。右隣は伝助で、左隣は大山田です。大山田が右足で絵里加の足を突いてきました。


 絵里加はウザかったのですが、微笑んで大山田を見ました。なかなかしたたかだと思う地の文です。


「では、本番、始めます!」


 フロアディレクターが言いました。MCの村松がMC席に着きました。


 テーマ曲が流れ、カメラが上から村松を狙って降りて来ます。


「カランコロンの日曜日、始まります。よろしくお願いします」


 村松が言いました。樹里達は拍手をしました。


「では、まず最初のプレゼンターはこの方です」


 村松の紹介で、正面のセットが回転して、コントコンビのZエッサが現れました。


「おお、暴力コント師や」


 早速ボケをかます村松です。


「やめてください。村松さん、影響力強いんですから。ホントかと思われますので」


 Zエッサのツッコミのアケミが言いました。


「ホントやろ。ウチら、暴力で売ってるやん」


 ボケのエナが間を置いてボケました。


「やめて! 自分から墓穴掘らんといて!」


 アケミがすぐに突っ込みました。


「早よ先進めェや!」


 大山田が切れて叫びました。


「はい」


 途端に真顔になるアケミとエナです。


「そうなんですか」


 それにも関わらず、樹里は笑顔全開で応じました。


(あ、また入っていけなかった……)


 人知れず落ち込む伝助です。


「私達が紹介するのはこの人達です」


 アケミが言うと、スタジオの大画面に紹介文が映りました。


『群馬県の名物の焼きまんじゅうをバズらせたいです!』


 すると村松の顔色が変わりました。村松はフロアディレクターを睨みつけました。


(これは俺が差し替えろと言ったネタやんけ! どういうつもりや!)


 身振り手振りで怒りを伝える村松です。フロアディレクターは慌てて調整室サブとインカムで話しました。


 そして、スケッチブックに走り書きをして、村松に見せました。


(どうしたんだ? 俺が何かミスったのか?)


 何故か伝助が焦りました。


「あ」


 村松はカンペを見てスウッと怒りを解きました。カンペには、


『スポンサーの五反田グループが一推しの企画なので、差し替えは不可能です』


 そう書かれていました。いくら村松がお笑いのカリスマでも、スポンサーには勝てません。


「では、VTR、どうぞ」


 にこやかに進行する村松です。


 VTR中にも、Zエッサが出て来ました。それを見ている本人達は、村松が鬼の形相になり、その後観音菩薩のようなにこやかな顔になったので、怖がっていました。


(何があったんや?)


 顔を見合わせるアケミとエナです。


 内容については、村松の判断が正しかったと思わざるを得ない地の文です。


 VTRが流れている間、誰もクスリとも笑いませんでした。樹里はずっと笑顔全開でしたが。


(終わった。ウチら、もう呼ばれへん……)


 嫌な汗が背中を滝のように流れているZエッサです。


(誰も笑わないから、笑えない。すまない、アケミ、エナ)


 心の中で二人に謝罪する伝助です。


「そうなんですか」


 それにも関わらず、樹里は笑顔全開です。


 


 めでたし、めでたし。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ