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樹里ちゃん、クリスマスパーティをする

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 今日はクリスマスです。不甲斐ない夫の杉下左京はまだ不倫旅行から帰って来ません。


「不倫旅行じゃねえよ! まだ橋の復旧が終わらねえんだよ!」


 群馬県吾妻郡にある山神村から地の文に切れる左京です。


 すでにどうして左京がそこにいるのか忘れてしまった地の文です。


「殺人事件があったんだよ! それを解決したんだよ!」


 妄想を大声で話す左京です。


「妄想じゃねえよ!」


 地の文が相手をしてくれないので、激ギレする左京です。


 クリスマスがちょうど日曜日なので、樹里はお休みです。


 長女の瑠里と次女の冴里も小学校が冬休みに入っています。


 通知表はどうだったのでしょうか?


「嫌な事を思い出させないでよ!」


 成績がかんばしくなかった瑠里が地の文に切れました。


「さーたんはだいじょうぶだよ」


 冴里は笑顔全開で応じました。


 瑠里は樹里にしっかりとお説教され、冴里は誉められました。


「そこまでバラさないで!」


 涙ぐんで地の文に懇願する瑠里です。


「瑠里、ママは成績が悪かった事をとがめたのではありませんよ。通知表を隠そうとしたから叱ったのです」


 樹里が真顔全開で告げたので、


「ごめんなさい、ママ」


 大泣きして樹里に謝る瑠里です。それを見て、ほくそ笑む冴里です。


 今日は、樹里の母親の由里の一家と、姉の璃里の一家が来て、盛大なクリスマスパーティを開く事になっています。


 璃里に会いたい左京は、さぞ悔しがっているでしょう。


「やめろ!」


 遠方で聞きつけて、またしても地の文に切れる左京です。


 瑠里と冴里と三女の乃里は、飾り付けをしました。


 四女の萌里はそれを笑顔全開で見ています。


「邪魔するよ」


 そこへ由里一家が来ました。由里、今の夫の西村夏彦、前の夫の赤川康夫、三女の真里が高校二年生、四女の希里が高校一年生、中学三年生の五女の絵里、小学校五年生の六女の紅里、七女の瀬里、八女の智里です。


「瑠里、冴里、乃里、久しぶり! 萌里はお姉ちゃん達を覚えているかな?」


 真里が言いました。すると瑠里が、


「萌里、真里おばちゃんと希里おばちゃんと絵里おばちゃんだよ」


「瑠里、叔母ちゃんはやめてよ。お姉ちゃんでいいでしょ?」


 真里と希里と絵里がむくれました。


「瑠里ちゃん、私達もおばちゃんになっちゃうの?」


 紅里が言いました。瀬里と智里も不安そうに瑠里を見ています。


「冗談よ。お姉ちゃんでいいの」


 瑠里は流石に自分と同じ学年の三つ子の叔母さんには「おばちゃん」とは言いにくいようです。


「しょうなんですか」


 萌里は意味もわからず笑顔全開で応じました。


「壮観ですね。ここまで似ている親戚は珍しいから」


 夏彦が康夫に囁きました。何しろ、十二人もそっくりな女性がいるのですから。


 まるで「御徒町殿の十二人」だと思う地の文です。


「そうなのかね?」


 康夫は笑顔全開で応じました。


「遅くなりました」


 そこへ璃里一家が来ました。夫の竹之内一豊、長女の実里みり、次女の阿里です。


 また久しぶりコールがあちこちから湧きました。


 これで「御徒町殿の十五人」になり、こちらの勝ちだと思う地の文です。


「樹里の誕生日の時より人数が多いから、ケーキ屋さんに発注したわ」


 璃里がワゴンに積んで運んできたのは、ウェディングケーキ並みの大きさのホールケーキでした。


「わあ!」


 真里以下十代の女子達が色めき立ちました。


「うわ」


 夏彦、一豊の二人は胸焼けがしているようです。


「由里さん、私はパス。由里さんが食べて」


 夏彦が言いました。


「そうかい? 康夫さんは?」


 由里が康夫に訊きました。


「私も由里さんにあげるよ」


 康夫は笑顔全開で告げました。


「そうなの? 悪いねえ、三つももらえて」


 由里はニコニコして応じました。それを呆れ顔で見ている璃里と笑顔全開で見ている樹里です。


「お母さん、血糖値大丈夫なの?」


 璃里が言いました。


「大丈夫だよ。健康診断でどこも悪いとこ見つからなかったんだからさ」


 由里は胸を張って言いました。悪いのは性格だけですね。


「何だって?」


 由里に詰め寄られて、身体中の水分が抜けてしまった地の文です。


「真里達はこれね」


 璃里がペットボトル入りの炭酸飲料を渡しました。


「選挙権はあるけど、お酒はだめなんだよね」


 真里は残念そうです。きっと隠れて飲んでいると思う地の文です。


「私は生徒会役員なのよ! そんな事する訳ないでしょ!」


 地の文の冗談に本気で切れる真里です。


「偉いわ、真里。貴女のお母さんは中学生で飲酒していたらしいわよ」


 璃里はケーキを貪り食う由里を半目で見て言いました。


「ぐほ、がほ……」


 思わずむせてしまう由里です。


「知ってます」


 真里も半目で由里を見ました。


「そうなんですか」


 樹里はそれにも関わらず、笑顔全開で応じました。


「じゃあ、私達はシャンパンで」


 璃里が嬉しそうに言いました。実は飲兵衛なのです。


「バラさないで!」


 何でも発表してしまう地の文に切れる璃里です。


「樹里も飲むでしょ?」


 自分がたくさん飲みたいので、樹里にも勧める璃里です。


「私は、左京さんから連絡があって迎えにいかなければならないかも知れないので、遠慮します」


 樹里は笑顔全開で断わりました。


「そうなんだ」


 璃里は残念そうに応じて、


「じゃあ、お母さんは……」


 由里を見ると、すでにシャンパンをラッパ飲みしていました。


「ぷはあ! 何か言った、璃里?」


 陽気に璃里を見る由里です。


「何も」


 璃里は苦笑いをしました。


「左京さん、心配ですね」


 一豊が樹里に炭酸飲料を入れたグラスを勧めましたが、


「炭酸飲料は飲めませんので」


 樹里は笑顔全開で断わりました。


「そうなんですか」


 思わず樹里の口癖で応じてしまう一豊です。


「ママ、野菜ジュース」

 

 瑠里がグラスを差し出しました。


「ありがとう、瑠里」


 樹里は笑顔全開で受け取りました。


 そして、みんなで聖歌を合唱しました。


 めでたし、めでたし。

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