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樹里ちゃん、水無月皐月の出産祝いにゆく

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 今日は日曜日です。樹里は怪盗ドロントの出産祝いに行くところです。


「やめて!」


 高齢出産をして疲れている水無月皐月が過去をほじくり返した地の文に切れました。


 四女の萌里は、最近母親の由里とうまく行っていない姉の璃里が預かってくれました。


「嘘を吐かないで!」


 真相を発表したはずの地の文に切れる璃里です。


「そうなんですか」


 それにも関わらず、樹里は笑顔全開で応じました。


「おはようございます、樹里さん」


 行く途中で、もう一人のメイドの目黒弥生と五反田邸の住込み医師の長月葉月と会いました。


 葉月は暴飲暴食がたたったのか、お腹がせり出しています。


「私ももうすぐ出産なのよ!」


 以前とは違い、地の文に切れるようになってくれた葉月です。馴染んできたようで嬉しい地の文です。


「そうなんですか」


 樹里はそれでも笑顔全開で応じました。


「葉月さんはいつ出産なんですか?」


 弥生が尋ねました。葉月はお腹をさすりながら、


「来月よ」


「なら、首領の子とは学年が違いますね。良かったですね」


 弥生が笑顔で言ったので、


「言いつけるわよ、弥生」


 葉月が半目で見て言いました。


「やめてくださいよお。もう怒られたくないんですからあ」


 弥生は涙ぐんで応じました。


「だったら、怒られるような事を言わない事よ」


 葉月にたしなめられ、


「はい」


 しょんぼりする弥生です。


 やがて三人は、皐月のマンションに着きました。


「お待ちしていました」


 ロビーで待機していた皐月の夫の霜月しもつきかけるが言いました。不用意な発言だと思う地の文です。


「お待たせして申し訳ありません」


 樹里が深々と頭を下げたので、


「いや、その、そういうつもりはないのですが……」


 真面目な翔はアタフタしました。


「気にしないでください、樹里さんのルーティーンみたいなものですから」


 葉月が苦笑いして告げました。


「そうですか」


 顔を引きつらせて応じる翔です。


(前もこんなやりとりをした気がするんだけど)


 葉月は翔の記憶力の悪さに辟易しました。


「そこまで思ってないわよ!」


 事実を盛るのが大好きな地の文にまた切れてくれる葉月です。嬉しくて悶えてしまう地の文です。


 四人はエレベーターで上がり、外廊下を進んで、皐月達の部屋の前に来ました。


「皐月、皆さんがお見えだよ」


 翔が玄関のドアを開けて言いました。


「はーい」


 奥から皐月の萌が聞こえました。


「お邪魔します」


 樹里達は玄関を入りました。


「いらっしゃい」


 皐月は産着に包まれた赤ちゃんを抱いて出て来ました。女の子のようです。


「可愛い!」


 弥生が早速見え透いたお世辞を言いました。


「お世辞じゃないわよ!」


 涙目で地の文に切れる弥生です。


「本当に可愛いわ」


 葉月は眠っている赤ちゃんの顔を覗き込みました。


「あやめって名付けたの」


 皐月が言いました。


「どういう字を書くんですか?」


 弥生が興味もないのに尋ねました。


「興味津々よ!」


 心情を正確に描写した地の文に切れる弥生です。


「ひらがなよ。漢字の菖蒲って、知り合いにいるからやめたの」


 皐月は苦笑いして言いました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じましたが、その「菖蒲」さんを知っている葉月と弥生は顔を引きつらせました。


「さあ、どうぞ上がってください」


 翔が促し、樹里達は奥のリヴィングルームへ通されました。


「どっちに似ていますかね?」


 弥生が小声で葉月に訊きました。


「目を瞑っているからはっきりわからないけど、翔さんに似ている気がするわ」


 葉月は言うと、弥生は頷いて、


「私もそう思います。女の子は父親に似ると美人になるんですよね」


 母親似のレッサーバンダはどうなのだろうと思う地の文です。


「私の子供は颯太そうた! レッサーパンダは風太!」


 しばらくぶりに名前ボケをした地の文に激ギレする弥生です。


「弥生、それって遠回しに私に似るとブサイクって聞こえるんだけど?」


 いきなり背後に皐月が立ったので、


「ウヒャア!」


 弥生は驚愕して飛び上がりました。その声にあやめが目を覚まし、泣き出しました。


「もう、あんたが大きな声出すから、起きちゃったじゃないの!」


 皐月が弥生を睨みつけました。


「ごめんなさい!」


 弥生のその声も大きかったので、更に火が着いたようにあやめが泣きました。


「あわわ……」


 それを見て顔面蒼白になる弥生です。


「僕に任せて」


 翔があやめを抱き、あやしました。すると途端にあやめが泣き止みました。


しゃくさわるけど、あやめは翔にあやされると、すぐに泣き止むのよね」


 皐月は肩をすくめました。


(きっとあやめちゃんは、その人の本性を見抜く能力があるんだわ)


 弥生は思いました。早速皐月に教えようと思う地の文です。


「そういう反則技は使っちゃダメ!」


 縦横無尽に時空を飛び回る地の文に懇願する弥生です。


「ごめんね、弥生。育児疲れでちょっとイライラして、当たっちゃったみたい」


 皐月は弥生に手を合わせて頭を下げました。


「いいんですよ。私も経験ありますから」


 弥生は心にもない事を言って、皐月を慰めました。


「違うわよ!」

 

 血の涙を流して地の文に切れる弥生です。


 今回は不甲斐ない夫の杉下左京がいないので、地の文の集中砲火を浴びています。


(こんな時に役に立つ左京さん……)


 弾除け代わりになる左京がいないのを悲しむ弥生です。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「樹里さんも、瑠里ちゃんが小さい時は大変だったでしょう?」


 皐月が訊きました。


「私は妹達が歳が離れているお陰で随分予行演習ができました。瑠里は妹達に比べれば、ずっと楽だった気がします」


 樹里は笑顔全開で応じました。


(そう言えば、樹里さんの妹さんて三人いるのよね? で、樹里さんは四人の子供がいて……)


 尊敬の眼差しで樹里を見る皐月です。


(私には到底無理)


 それは皐月だけではなく、葉月も同じ思いでした。


「すごいですよね、樹里さんて」


 弥生が二人の想いを知ってか知らずか、言いました。皐月と葉月は大きく何度も頷きました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


 


 めでたし、めでたし。

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