表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
610/839

樹里ちゃん、シャーロットの話を聞く(水無月皐月編)

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 しつこくドロントの正体を追い続けているシャーロット・ホームズは、ベロトカゲこと六本木厚子から遂にドロントの本名を聞き出しました。


 その名も「鬼瓦権子おにがわらごんこ」です。


「違います!」


 どこかで地の文に切れる有栖川倫子ことドロントです。


 失礼しました。水無月みなづき皐月さつきです。しかも、出身がG県のさいの河原市でした。


「それも違うわよ! 東京都多摩郡小江戸村よ!」


 また切れる倫子です。


 倫子と不倫関係のどうしようもなく不甲斐ない夫の杉下左京は呆然としました。


「不倫してねえし、どうしようもなく不甲斐なくもねえよ!」


 今度は左京が地の文に切れました。


「そうなんですか」


 それにも関わらず、樹里は笑顔全開で応じました。


 シャーロットは身を乗り出して、


「以前も申し上げたと思いますが、ドロントの正体を知っていながら、隠したりすると罪になりますよ」


 左京はシャーロットの言葉にギクッとしましたが、


「ドロントさん達の犯行はすでに時効を迎えていますから、逮捕できませんよ」


 樹里は笑顔全開で告げました。


「え?」


 シャーロットはそれを聞いてびっくりしました。


「ですから、その正体を知っているのに教えなくても、罪になりませんよ」


 更に笑顔全開で告げる樹里です。


「そうなんですか」


 左京は樹里の口癖でホッとして応じました。


「そんなはずはありません! ドロントはつい最近まで世界各地で犯行を重ねています。少なくとも、海外での犯行は時効は成立していないはずです!」


 シャーロットは動揺しながらも反論しました。


「これがその事件の概略です。今年の初め、昨年、一昨年と欧州各国やアメリカ合衆国で予告状を出して犯行に及んでいます」


 シャーロットはスーツの内ポケットから封筒を取り出し、中身をテーブルに並べました。


「その日は有栖川先生は五反田様の令嬢の麻耶様の受験で会場近くまで行っています。そして、この日は摩耶様の本試験の日で、同じく試験会場に行っています」


 樹里は次々にアリバイを提示して、シャーロットのプライドをズタズタにしました。


「ご存知でないようですからお教えしますが、ドロントとは個人の窃盗犯の名前ではありません。先日も東京にドロントが現れましたが、それも有栖川先生が貴女の目の前にいる時でした。ドロントは世界中にいるのです」


 樹里の笑顔全開の言葉にシャーロットは唖然としてしまいました。


「貴女のお父様が対決したドロントも、別のドロントだったのではないですか?」


 樹里が笑顔全開で言うと、


「し、失礼しました」


 シャーロットはいたたまれなくなったのか、出て行ってしまいました。


「すごいぞ、樹里!」


 左京は感激して樹里を抱きしめました。


「や、やめてください!」


 樹里は何故か左京を突き飛ばしました。とうとう離婚の手続きに入るのでしょうか?


「樹里、どうしたんだ?」


 左京は涙ぐんで樹里を見ました。すると樹里は顔をバリバリッと剥がして、倫子になりました。


「あああ!」


 左京は仰天して叫びました。妻だと思って抱きついたら、不倫相手だったからです。


「違う!」


 左京と倫子が揃って地の文に切れました。


「これでようやくシャーロットも諦めてくれるでしょう」


 倫子は樹里の服を脱ぎながら、胸から大きな肉まんを取り出してテーブルに置きました。


 左京が目を見張ると、倫子は顔を赤らめて、


「わかってますよ! どうせ貧乳ですから!」


 ツンとして背を向けました。


「そんな事ないですよ。有栖川先生は貧乳じゃありませんよ」


 左京は微笑んで言いました。


「やっぱりお風呂を覗いたんですね?」


 倫子がキッとして左京を睨みました。


「それも違いますって!」


 焦って後退あとずさりながら弁解する左京です。


「只今帰りました」


 そこへ本物の樹里が帰ってきました。


「樹里!」


 左京は喜びのあまり、抱きつきました。


「左京さん、有栖川先生が見ていますよ」


 本物にも拒否され、左京は落ち込みました。


「私の名前は水無月皐月です、樹里さん」


 皐月が微笑んで言いました。


「そうなんですか?」


 首を傾げて応じる樹里です。


 皐月と左京が樹里にシャーロットの事を説明しました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「これでホームズさんも諦めてくれると思うよ」


 左京が言うと、皐月は、


「いえ、まだだと思います。今度は世界中のドロントの事を調べて、私を追い詰めてくるかも知れません」


「でも、貴女の起こした事件は全部時効が成立しているんじゃないんですか?」


 左京が尋ねると、


「事件は時効が成立していますが、ドロントという組織の時効は成立していません。シャーロットは銀座の宝石店に現れたドロントと私のつながりを調べるでしょう。これに関しては、時効は成立していませんから」


 皐月の言葉に左京はハッとしました。


「どちらにしても、私の出身地と本名がバレたのはまずかったです。またご迷惑をおかけしてしまうので、家庭教師は辞退させてください」


 皐月は涙ぐんで樹里を見ました。


「迷惑なんてかけられていませんよ。私達は貴女方に何度も助けられているのですから、今度は私達が貴女方を助ける番です」


 樹里は笑顔全開で言いました。


「そうですよ。全然迷惑なんて思っていませんから」


 左京は皐月と本格的に不倫ができると思い、微笑んで言いました。


「断じて違う!」


 不倫報道がしたい地の文に切れる左京です。


「ありがとうございます」


 皐月は涙を流して頭を下げました。


「そうなんですか」


 樹里も目を潤ませて笑顔全開で応じました。


 


 その頃、シャーロットは事務所の所長室に帰ると、


「先日の銀座に現れたドロントの事で、いくつかお願いがあるんだけど」


 早速英国にいる父親のモーリーに連絡していました。


 しつこさだったら、刑事○○ンボよりもすごいと思う地の文です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ