表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
600/839

樹里ちゃん、シャーロット・ホームズとドロントを探す(中編)

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 ドロント一味の居場所を探している私立探偵のシャーロット・ホームズは、樹里に協力を依頼して、再び五反田邸を訪れています。


 ビビリの元泥棒の目黒弥生は、シャーロットに呼び出されて、焦りまくっていました。


「取り敢えず、おかけください、目黒さん」


 シャーロットは酷く動揺している弥生に言いました。


「はいー!」


 作り笑顔全開の弥生はまた素っ頓狂な声で応じると、シャーロットの隣に座りました。


「目黒さんは面白い方ですね。向かいのソファに座ってください」


 シャーロットは冷めた視線で言いました。


「はいー!」


 弥生は慌てて向かいのソファに移りました。


(キャビー、何してるのよ?)


 それを傍で見ていた住み込み医師の長月葉月は呆れていました。


(この子、どうしてそんなに動揺しているのかしら? やっぱり、ドロント一味?)


 シャーロットは眉をひそめて弥生を見ます。


「あは、あははは……」


 弥生はそのシャーロットのいぶかしそうな目に気づき、顔を引きつらせて笑いました。


 シャーロットはかねてから考えていたテストをする事にしました。


「貴女はドロントという窃盗犯をご存知ですか?」


 シャーロットの直球の質問に、


「はい、もちろん知っています」


 弥生はとんでもない返答をしてしまいました。葉月は目を見開きましたが、


(知りませんと答えるよりはマシかな?)


 キャビーの作戦かも知れないと考えました。


(しまったあああ! もちろん知っていますって言っちゃったああ!)


 心の中で血の涙を流して雄叫びをあげている弥生です。全然作戦ではありません。


「そうですか。その仲間も知って言いますか?」


 シャーロットは更に仕掛けてきました。


「はい、知っています。ヌートとキャビーという可愛い女の子ですよね?」


 弥生はすでに意識が半分飛んでいる状態で答えていました。


「よくご存知ですね。どうしてそれ程お詳しいのですか?」


 シャーロットは畳み掛けるように尋ねました。


「樹里さんのご主人の杉下左京さんが、何度もドロント一味と対決しているので、よく知っています」


 何とか辻褄を合わせる弥生です。すると何故か、シャーロットは腕組みをしてソファに寄りかかりました。


(どうしたのかしら?)


 弥生と葉月はシャーロットを見ました。


(樹里さんから聞いている話と矛盾していない。口裏を合わせる事ができないように門の前で落ち合って、そのまま質問をしたのだから、樹里さんと目黒さんが打ち合わせる時間的余裕はない)


 シャーロットは弥生はドロント一味ではないと結論づけました。


 樹里も弥生も嘘は吐いていませんから、矛盾がないのは当然だと思う地の文です。


「わかりました。貴女がドロント一味について、何か他に知っている事はありますか?」


 念のため、もう一問尋ねるシャーロットです。


「元警視庁の刑事だった亀島という男が、一味に加担していた事ですね」


 弥生は絞り出すように言いました。


「ありがとうございます。質問は以上です。ご協力、感謝致します」


 シャーロットは立ち上がると、手を差し出しました。


「ああ、ありがとうございます」


 弥生は手汗を拭ってから、握手に応じました。


「お騒がせしました」


 シャーロットは葉月に会釈すると、応接間を出て行きました。


「終わったのですか?」


 そこへ樹里が紅茶を淹れて現れました。


「はい。お手間を取らせました。失礼します」


 シャーロットは樹里に微笑むと、ロビーを歩いて行きました。樹里は廊下にあるテーブルにトレイを置くと、シャーロットを見送るために玄関へ行きました。


「失礼します」


 シャーロットは樹里が開いたドアを通り抜けると、外へ出ました。


「お疲れ様でした」


 樹里はシャーロットが見えなくなるまで、深々とお辞儀をしました。


 


「そう。もう帰ったの。何もなくてよかったわ」


 杉下左京探偵事務所で、樹里の長女の瑠里の家庭教師となった有栖川倫子がスマホに言いました。


 心配になった倫子が葉月に連絡をしたのです。


「とにかく、そう簡単に諦める女じゃないから、しばらくは警戒して」


 倫子はスマホを切ると、スカートスーツの内ポケットに入れました。


 そして、やりかけの掃除を再開しました。


 


「すみません、お手伝いできなくて」


 夕方になり、倫子は申し訳なさそうにキッチンの端に立って言いました。


「いやいや、瑠里と冴里と乃里の面倒を見てもらっているので、すごく助かっています」


 左京は苦笑いをして料理をしています。


 倫子は掃除と洗濯は得意ですが、料理はからきしなのです。


 左京は倫子と一緒に料理を作って、不倫気分を味わいたかったようです。


「断じて違うよ!」


 捏造を繰り広げる地の文に切れる左京です。


「只今帰りました」


 樹里の声が聞こえました。


「ママー!」


 瑠里達三人が一斉に駆けて行きましたが、すぐに顔を引きつらせて戻ってきました。


「どうしたの、三人共?」


 倫子が樹里を出迎えようと玄関に向かうと、そこには意外な人物が樹里と立っていました。


「今晩は」


 倫子は思わず一歩退いてしまいました。


「シャーロットさんが、有栖川先生とお話がしたいそうですよ」


 樹里が笑顔全開で言いました。


「そうなんですか」


 思わず樹里の口癖で応じてしまう倫子です。


「あ、どうも」


 左京も顔を出してシャーロットに気づき、顔を赤らめました。


 シャーロットの胸の谷間に釘付けです。


「やめろ!」


 図星を突かれた左京が動揺しながら地の文に切れました。


(やはり、この人が一番怪しい。ドロントと同世代、背格好もほぼ同じ)


 シャーロットは倫子に狙いを定めて樹里について来たのです。


(結局、こうなっちゃうのか)


 倫子は微笑んでシャーロットを見る余裕を見せましたが、心の中は動揺していました。


 まだ続くと思う地の文です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ