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樹里ちゃん、狙われる(後編)

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 樹里と不甲斐ない夫の杉下左京は、元女優の竹林由子の差し金で動いていた週刊誌の記者とカメラマンに付きまとわれていました。


「元女優じゃないわよ! 現役よ!」


 休業宣言したはずの竹林由子が地の文に切れました。もうどうでもいいと思う地の文です。


 樹里は昭和眼鏡男と愉快な仲間達の活躍で事なきを得ましたが、ダメな夫の左京に事件が起こりました。


 以前、樹里と共演した事がある貝力奈津芽が突然左京の閑古鳥探偵事務所に現れたのです。


「閑古鳥じゃねえよ!」


 正しい状況説明をしたはずの地の文に理不尽に切れる左京です。


「ずっと好きでした。左京さん、私を愛人にしてください」


 奈津芽の衝撃の告白に左京は二つ返事で了承しました。


「してねえよ!」


 一部そんな気持ちがあった左京は動揺して地の文に切れました。


「樹里さんと別れてくれなんて言いません。只、週に何度か会ってくれればいいんです。そして、そのうち何度か、愛してくれれば……」


 過激さを増す奈津芽の言葉に左京の理性は崩壊し、そのまま奈津芽を押し倒しました。


「押し倒してねえよ!」


 更に地の文に切れる左京です。


 奈津芽は恋人の社長と別れたばかりなので、精神的に混乱していると考えた左京は、彼女を外に連れ出して、帰らせようとしました。


 そこへ記者とカメラマンが現れ、ツーショットを撮られてしまいました。


「貝力奈津芽さん、御徒町樹里さんの夫の杉下左京さんと不倫ですか?」


 記者らしき男が二人に詰め寄りました。


「違う。彼女はクライアントだ。そういう関係じゃない」


 左京は奈津芽を庇って言いました。ところが、


「はい、そうです。ホテルで何度も愛し合いました」


 奈津芽のトンデモ発言に驚愕しました。


 奈津芽は記者達と一緒に車で去ってしまい、呆然としている左京の背後に樹里が現れました。


「只今戻りました、左京さん」


 笑顔全開で告げた樹里を見て、顔を引きつらせる左京です。


 そして、遂に離婚届を突きつけられ、左京は降板しました。


「違う! 断じて違う!」


 しばらくぶりに某進君の真似をして切れる左京ですが、樹里はすでに家に入っていました。


 脱力して玄関へトボトボと歩き出す左京です。


 


 左京は樹里や娘達と夕食をすませて、長女の瑠里と樹里がお風呂に入っている間、次女の冴里と三女の乃里の相手をして遊んであげ、次に二人と一緒にお風呂に入りました。


「きょうはとくべつだからね」


 冴里が言いました。


「うん」


 左京は涙ぐんで感激しました。冴里は左京が寂しそうなのを感じて、ずっと一緒に入らなかったお風呂に入ってあげたのです。


 そして、娘達を寝かしつけると、リヴィングルームで樹里と話をしました。


 まず、樹里が何者かが尾けてきた事を話して、見事に対応してくれた眼鏡男達の事を絶賛しました。


 左京は話を切り出すのを躊躇しましたが、思い切って話しました。


 奈津芽にキスをされてしまった事も正直に話し、それが嬉しかった事も話しました。


「嬉しくねえよ!」


 捏造を繰り返す地の文に血の涙を流して切れる左京です。


「そうなんですか」


 それでも樹里は笑顔全開で応じました。


「貝力さんを送り出して門のところまで行った時に、不意に週刊誌の記者とカメラマンが現れて、写真を撮られ、貝力さんは連中と車で行ってしまったんだ」


 左京が更に状況を説明しました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


稲垣いながき琉衣るいさんから連絡がありました」


 樹里が言いました。


 稲垣琉衣とは、以前樹里と共演した事がある性格の悪い女優です。


「違います! 性格は悪くありません!」


 どこかで子供と遊びながら切れる琉衣です。


「琉衣さんから?」


 左京は琉衣の顔と名前を覚えていません。要するにバカです。


「うるせえ!」


 本当の事を言っただけの地の文に切れる左京です。


「奈津芽さんが恋人と別れて、精神的に不安定になっているので、もし連絡があったら、話を聞いてあげてくださいと」


 樹里の言葉に左京は奈津芽を追い出してしまったのを後悔しました。


 間違いなく愛人にできたはずなのにと。


「違う! そうじゃない!」


 想像さえも捏造する地の文に激ギレする左京です。


「そうだったのか。悪い事をしてしまったな。樹里が帰るまで、話を聞いてあげるべきだった」


 左京が項垂れて言うと、


「左京さんは女性に優しいですから、奈津芽さんが左京さんを好きになってしまうと困るので、私はそれで良かったと思っています」


 樹里に笑顔全開で言われ、顔が火照ほてる左京です。


(もしかして、樹里が嫉妬してくれた?)


 ついにやけてしまう左京です。


「左京さん」


 樹里が左京の横に座りました。


「は、はい!」


 お説教をされると思い、かしこまる左京です。


 すると樹里がキスをしてきました。目を見開く左京です。


「もうダメですよ。左京さんの唇は私だけのものですから」


 樹里が少しだけ頬を赤くして告げたので、


「樹里」


 左京は感激して樹里を抱きしめました。


 


 そして……。


「いやあ、竹林さん、凄いネタをいただきましたよ。ありがとうございました」


 週刊誌の記者から連絡をもらった由子は、


「は? 何の事?」


 意味がわからずに首を傾げましたが、全然可愛くありません。


「うるさい!」


 地の文の正直な感想に切れる由子です。


「貝力奈津芽さんの事ですよ。竹林さんの仕込みですよね? 絶妙なタイミングで現れてくれましたよ」


「はあ?」


 由子にはますます意味がわかりません。


「あれ? もしかして、違うんですか?」


 記者も流石さすがに妙だと思ったのか、尋ねました。


「知らないわよ! 何言ってるの! 私がそんな酷い事をさせる訳がないでしょ!」


 そう言いながらも、ニヤニヤしてしまう由子です。


「じゃあね」


 由子は通話を終えると、ガッツポーズをしました。


(よくわからないけど、結果的に御徒町樹里と杉下左京を陥れる事ができそうね)


 由子はまるであの上から目線作家のような顔で笑いました。


 また別の騒動が起こる予感がする地の文です。

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