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樹里ちゃん、左京に心配される

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 樹里は若い女性の不審者につきまとわれました。


 それを知った不甲斐ない夫の杉下左京は、大阪での仕事を終えると、不倫相手の坂本龍子弁護士を置き去りにして、東京へ帰ってきました。


「不倫相手じゃねえよ!」


 品川駅で新幹線を降りた左京が地の文に切れました。


「しまった、五反田に事務所があった時のくせで、品川で降りちまった!」


 新年早々やらかしてしまった左京です。


「まだ新年になってねえよ!」


 物語的な事で切れる左京ですが、そんな些細な事はどうでもいいと思う地の文です。


「酷いです、左京さん!」


 地の文に切れていたせいで、坂本弁護士に追いつかれてしまい、コンコンと説教をされた左京です。




 樹里はつきまとわれた日を最後に、五反田邸の仕事は終わったので、新年を迎え、仕事始めの日まで何事もなく過ごしました。


「若い女か」


 左京は樹里から話を聞き、リヴィングルームで考えているふりをしました。


「考えてるよ!」


 血も涙もない地の文に血の涙を流して切れる左京です。


「樹里には心当たりはないのか?」


 左京が尋ねました。


「ありません」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「一番の心配は、そいつが樹里だけではなくて娘達まで狙い始める事だ。坂本先生の仕事はしばらくお断わりして、瑠里達の警護をした方がいいかも知れない」


 左京にしてはなかなか賢明な判断だと思う地の文です。


「うるせえ!」


 褒めたはずの地の文に切れる理不尽な左京です。


「それは有栖川先生と黒川先生が引き受けてくださいましたよ」


 樹里が笑顔全開で悲しいお知らせをしたので、


「そうなんですか」


 樹里の口癖で応じる左京です。


「それなら、樹里の警護を俺がするよ」


 左京は顔を引きつらせて言いました。すると、


「それは目賀根さんが引き受けてくれましたよ」


 樹里が笑顔全開で告げたので、


「めがねさんて誰?」


 左京が尋ねました。


「毎朝、お迎えに来てくださる方ですよ」


 樹里が言うと、左京はびっくりしました。


(あいつ、めがねっていう名前なのか。本名なのかな?)


 誰でも考える疑問に思い当たる左京です。

 

「左京さんは、坂本先生とお仕事をしてください」


 樹里が笑顔全開で皮肉とも取れる事を言ったので、ビクンとする左京です。


(ああ、俺は本当に樹里の夫なのだろうか?)


 哲学的な思考に陥る左京です。


 


 そして、仕事始めの日です。


「おはようございます」


 有栖川倫子(33)が樹里の家を訪れました。


「どうして私だけ年齢が出るのよ!」


 気を利かせた地の文に切れる倫子です。


「おはようございます」


 樹里が笑顔全開で出迎えました。


「おはよう、りんこおばちゃん」


 長女の瑠里が笑顔全開で全く悪気なく言いました。


「おはよう、瑠里ちゃん」


 涙ぐんで応じる倫子です。


(仕方ないの。小学一年生から見れば、私もヌートもおばちゃんなのよ)


 黒川真理沙ことヌートも巻き込んで堪える倫子です。


「おはようございます」


 そこへ真理沙が現れて、挨拶しました。


「おはよう、まりさおねえちゃん」


 瑠里と次女の冴里と三女の乃里が言いました。衝撃を受ける倫子です。


「おはよう、瑠里ちゃん、冴里ちゃん、乃里ちゃん」


 真理沙は倫子に苦笑いをしてから、三人に挨拶を返しました。


「では、行って参ります」


 瑠里は項垂れている倫子を慰めながら登校しました。


 冴里と乃里は笑顔全開で真理沙と出かけました。


「では、行って参りますね、左京さん」


 樹里は他に誰もいないので、左京にキスをしてから玄関を出ました。


「行ってらっしゃい!」


 一気に復活する単純な左京です。しかし、見送りに出ると、すでに昭和眼鏡男と愉快な仲間達に囲まれて、駅へと歩き出していました。


「ううう……」


 寂しさが倍返しで押し寄せてくる左京です。


「おはようございます」


 するとそこへ坂本弁護士が現れました。


「お、おはようございます」


 ビクッとして一歩退き、挨拶をする左京です。


「左京さん、今年もよろしくお願いします」


 深々と頭を下げて挨拶する坂本弁護士が顔を上げる時、また襟が大きく開いているシャツなので、胸の谷間が見えてしまいました。


 ジッと見入ってしまう左京です。


「見入ってねえよ!」


 激しく動揺して否定する左京です。


「左京さんのエッチ」


 坂本弁護士は頬を赤くして胸元を隠しました。そして、


「先程、五反田邸の方が瑠里ちゃん達を送って行ったようですが、何故なのですか?」


 鋭い突っ込みをしてきました。左京は一瞬どうしようか迷いましたが、


「実はですね……」


 事情を説明しました。すると坂本弁護士は、


「やはりそうですか。その不審者に心当たりがあります」


「え? そうなんですか?」


 左京が身を乗り出したので、坂本弁護士はまた顔を赤くして、


「左京さん、顔が近いです」


「ああ、失礼しました」


 左京は坂本弁護士を事務所まで誘導して、中で話を聞きました。


「私と同期で弁護士になった人がいます。その人は、何がきっかけなのか、私に異常な程のライバル心を持っていて、何かというと、対抗しようとするのです」


「なるほど」


 左京は樹里を尾けていた女性が何者なのか、推測しました。


「彼女の名前はかつ海加みか。そして、彼女の事務所に雇われているのが、私立探偵の隅田川すみだがわ美波みなみ。おそらく、隅田川さんが樹里さんを尾けたのだと思います」


 坂本弁護士が言いました。左京は頷いて、


「そうでしたか。尾行が素人だったと聞いていたので、私立探偵ではないかもと思ったのですが、弁護士絡みだと、私立探偵が妥当ですね」


「申し訳ありません、左京さん。先日、勝弁護士から、『貴女の関係者の身元調査をしています』とメールがあったんです。お伝えすべきでした」


 また坂本弁護士がソファに座ったままで深々と頭を下げたので、胸の谷間が見えました。


(この人、もしかして意図的に見せているのか?)


 スケベな左京は都合のいい解釈をしました。


「スケベは余計だ!」


 真相報道がモットーの地の文に切れる左京です。


「危害を加える事はないと思いますので、それ程警戒する必要はないと思います」


 また胸元を隠して告げる坂本弁護士です。


「そうなんですか」


 覗いていたと思われたのがわかった左京は引きつり全開で応じました。


 


 この話はまだ続くと思う地の文です。

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