表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
508/839

樹里ちゃん、左京に謝罪される?

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 先日、降板間近の不甲斐ない夫の杉下左京が、無給で事務員をしてくれている斎藤真琴に無理やりキスをしました。


「誰がみ◯◯み町の町長だ!」


 左京が問題発言をしたので、伏字にする地の文です。


 失礼しました。斎藤真琴が、左京に突然キスをしました。


 左京はラッキーと思いながらも、動揺しました。


「ラッキーとか思ってねえよ!」


 事実をありのままに伝えるのが信条の地の文に切れる左京です。


(このまま樹里に顔を合わせるのがつらい)


 いよいよ離婚事由が揃ったので、風前の灯状態の左京です。


「やめろー!」


 シャレにならない事を平然と言ってのける地の文に血の涙を流して切れる左京です。


(真琴ちゃんにキスをされたのも問題だけど、これも問題だ……)


 左京は真琴に渡された請求書を見ました。


 真琴は、もし思いに応えてくれないのであれば、今まで働いた分の給料を払ってくれとごく当たり前の要求をしたのです。


「ううう……」


 正論をぶつけられた左京は、首の骨が折れるくらい項垂れました。


 毎度思う事ですが、是非折れて欲しいと思う地の文です。


「うるせえ!」


 希望を述べただけの地の文に理不尽に切れる左京です。


(どっちも、樹里に話さない訳にはいかない)


 左京は頭が痛くなりました。早く話して、離婚して欲しいと思う地の文です。


「勘弁してください」


 全く容赦のない地の文に遂に涙を流して懇願する左京です。


 解決方法を見出せない左京は、


(お義父さんに相談してみようか?)


 樹里の父親の赤川康夫に相談したら、一言一句間違えずに樹里に伝えてしまうと思う地の文です。


(ダメだ。お義父さんは絶対に樹里に話してしまう)


 左京は事務所を閉めると、家のリヴィングルームに戻りました。


「ああ、左京君、今日も仕事がないのかね?」


 康夫が笑顔全開で、樹里と同じくらい悪気なく訊きました。


「はい、そうです」


 顔を引きつらせて応じる左京です。


「わーい、パパ、あそぼう!」


 左京の声を聞きつけたのか、長女の瑠里が部屋からやってきました。すると康夫が、


「瑠里、宿題は終わったのかな?」


 真顔で言いました。途端にピクンとする瑠里です。


「るり、いいこだから、おべんきょうしなくっちゃ」


 瑠里は脱兎のごとくリヴィングルームから逃げ出しました。


「樹里はもうお勉強は終わりにしなさいと言ってもやめなかったのに、一体誰に似たんだろうね?」


 康夫は難問を考えるように腕組みしましたが、


(間違いなく、貴方の元奥さんですよ)


 左京は心の中で由里をディスりました。早速由里にメールをしようと思う地の文です。


「よせ!」


 光の速さで地の文に切れる左京です。


「そろそろお昼ご飯の支度をしますね」


 左京はエプロンを着けると、キッチンに行きました。


「そうなのかね」


 康夫は笑顔全開で応じました。


 左京は慣れた手つきで朝ご飯の残りを使い、チャーハンを作りました。


 厳しい師匠の樹里のお陰で、いつでも一人暮らしを始められるだけの腕はあります。


「その言い方、やめろ!」


 他意はない地の文に言いがかり同然に切れる左京です。


「瑠里、お昼だぞ」


 左京は瑠里に声をかけました。


「わーい!」


 すぐに瑠里が現れました。恐らく、勉強をしないで、聞き耳を立てていたのだと推測する地の文です。


 三人は揃ってチャーハンを食べました。瑠里はそのまま、リヴィングルームでテレビを見ようとしましたが、


「瑠里」


 康夫が真顔で言うと、


「るりはいいこだから、おべんきょうしなくちゃ」


 テヘッと笑って瑠里は部屋へと走って行きました。


(ちょっと可哀想な気もするが、仕方ないか)


 隔世遺伝が強めな瑠里は、厳しく育てないといけないと思う左京です。


 そして、洗い物をすませて、あちこちの部屋を掃除して、洗濯物を取り込んでいると、


「左京君」


 康夫が声をかけてきました。


「何かあったのかね? いつもより家事をこなしているように思えるんだが」


 鋭い指摘をしてきたので、左京はビクッとしました。


(どうしたものかな……)


 迷いましたが、意を決して事情を説明しました。


「そうなのかね」


 康夫は笑顔全開で応じました。


(反応が樹里と同じだ)


 さすが親子と思う左京です。


「どうしたらいいですか?」


 左京は思い切って尋ねました。すると康夫は、


「樹里に同じように話すしかないと思うよ。あの子は左京君の事をよくわかっているはずだから、大丈夫だよ」


「そうなんですか」


 左京は樹里の口癖で応じました。


「わかりました」


 左京も覚悟を決めました。いよいよ離婚するようです。


「したくねえよ!」


 血の涙を流して地の文に切れる左京です。


 しばらくして、次女の冴里と三女の乃里を保育所に迎えに行き、夕食の支度に取りかかりました。


「るりも!」


 瑠里が勉強に飽きて、夕食の用意を手伝う事を口実に康夫を説き伏せました。


(やっぱり、由里さんに似ている……)


 瑠里の立ち回りのうまさを見て、しみじみ思う左京です。


 


 やがて、樹里が帰宅しました。左京は瑠里達を康夫に頼むと、一人で玄関に行きました。


「只今帰りました、左京さん」


 樹里が笑顔全開で言ったので、左京は気まずそうに、


「お帰り、樹里」


 そして、話を切り出そうとしました。


「左京さん、真琴さんからお電話をいただいて、事務所を辞めると言われたのですが、何があったのですか?」


 樹里が驚愕の事実を言いました。


「えええ!?」


 あまりの展開に顎が外れそうになるくらい驚く左京です。


 まだ続くとは思っていなかった地の文です。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ