樹里ちゃん、なぎさの訪問を受ける
祝・五百話です☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
特別な話にはなりませんでした。
御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。
今日は、樹里はお休みです。
「有給休暇ですから、大丈夫ですよ」
樹里の全く悪気のない一言で、深く傷ついてしまう不甲斐ない夫の杉下左京です。
「そうなんですか」
左京は顔を引きつらせて応じました。
「るりもゆきゅうきゅうかにしたい!」
長女の瑠里がワガママを言いましたが、
「ダメです」
真顔全開の樹里を見て、
「あっちゃんにあいたいから、がっこうにいくね、ママ」
蒼ざめて応じる瑠里です。
(樹里、怖い)
それを見て、瑠里以上に怯える無職の夫です。
「無職じゃねえよ、仕事がないだけだよ!」
自営業なのをいい事に屁理屈を言って地の文に切れる左京です。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で応じて、瑠里を送り出しました。
「おはようございます!」
あっちゃんより前に出て、挨拶をするお笑いコンビです。
「おわらいコンビじゃねえよ!」
地の文のボケに的確に突っ込む小島翔と渡部悠斗です。
「おはようございます、小島君、渡部君」
樹里が笑顔全開で応じたので、顔を赤くして喜ぶ大島と渡辺です。
「こじまだよ!」
「わたべだよ!」
名前ボケをした地の文に切れる小島と渡部です。
「はっ!」
二人が我に返ると、集団登校の一団はすでに路地を曲がって、見えなくなっていました。
「ひいいん!」
まだまだ子供の小島と渡部は涙ぐんで駆け出しました。
「樹里様と冴里様と乃里様にはご機嫌麗しく」
そこへ刑務所を脱獄した昭和眼鏡男と愉快な仲間達が現れました。
「我々は罪を犯していません! 交番で事情を説明して、ご納得いただきました!」
何故かドヤ顔で言う眼鏡男ですが、
「おはようございます。今日はお休みなので、申し訳ありません」
樹里が深々と頭を下げました。
「そうなんですか」
がっかりして帰ろうとする眼鏡男達に、
「事前にお知らせできるように電話番号を交換しましょう」
樹里が笑顔全開で言ったので、有頂天になる眼鏡男達です。
「ええ!?」
それを聞いて、心が狭い左京は嫌な顔をしました。
「やめろ!」
本当の事を告げた地の文に理不尽に切れる左京です。
「では、また明日お伺い致します」
樹里の携帯の番号をゲットした眼鏡男達は、ニヤニヤして去りました。
(不安だ)
それを見て嫉妬に狂う左京です。
「ひっ!」
ふと脇を見ると、樹里の親友の松下なぎさが青白い顔をして立っていたので、悲鳴をあげる左京です。
「おはよう、樹里、左京さん」
いつもの必要以上の元気がないなぎさです。
「おはようございます、なぎささん」
樹里は笑顔全開で応じましたが、左京は引きつり全開です。
(しばらく現れなくて、ホッとしていたのに)
左京はなぎさの登場を迷惑に感じているようです。早速樹里に伝えようと思う地の文です。
「お願いです、やめてください」
会心の土下座をして地の文に懇願する左京です。
「はっ!」
我に返ると、すでに樹里はなぎさと共に家に入っていました。
「ワンワン!」
ゴルデンレトリバーのルーサが、
「相変わらず、バカだな」
そう言っているかのように吠えました。
樹里はなぎさをリヴィングルームに通して、冷たいお茶を出しました。
「クリームソーダはないの?」
元気がないのに、厚かましさはいつも通りのなぎさです。
「申し訳ありません、ないです」
それでも樹里は笑顔全開で応じました。
「そうなんだ」
なぎさは力なく微笑んで応じました。
(なぎささん、相変わらず目の保養、いや、目に毒な格好だな)
左京は反対側のソファに腰を下ろして、タンクトップにショートパンツのなぎさをじっくり見ました。
「じっくり見てねえよ!」
ズバッと指摘した地の文に動揺して切れる左京です。
「最近、食欲がなくてさあ。夏バテかなあ」
なぎさはお茶が入っているグラスを持って言いました。
「そうなんですか」
樹里は左京の隣に座って応じました。
「今朝もステーキだったんだけど、五百グラムしか食べられなくてさ。いつもは八百グラムは食べるのに」
なぎさはつらそうに言いますが、
(食欲旺盛過ぎだよ!)
心の中で突っ込みを入れる左京です。
「そうなんですか」
樹里はそれでも笑顔全開です。なぎさはお茶を飲み干して、グラスをテーブルに置くと、
「熱はないし、咳は出ないし、喉も痛くないし、鼻水も出ないんだけど、だるいんだよね」
肩をすくめて病気アピールをしました。それを半目で見る左京です。
(健康そのものじゃねえかよ!)
早く帰って欲しいのですが、素敵な格好をしているので、もう少し観賞したいと思う左京です。
「やめてくれ!」
深層心理を見抜いた地の文に手を合わせて頼み込む左京です。
「特殊なケースですが、多分そうです」
樹里が笑顔全開で告げました。
「え?」
なぎさと左京が何故かハモって応じました。樹里は更に笑顔全開で、
「なぎささん、乳房が張っていませんか?」
その言葉に過敏に反応し、顔を赤らめるエロ左京です。
「うるせえ!」
当たっているのでキレ方が若干弱い左京です。
「そう言えば、栄一郎が言ってたよ。いつも大きいけど、更に大きくなった気がするって」
なぎさはタンクトップの上から胸を持ち上げて言いました。
「ブッ!」
それを見て鼻血を噴き出しそうになる左京です。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で応じてから、
「なぎささん、多分妊娠したのですよ。おめでとうございます」
「え? そうなの? 栄一郎は何も言ってなかったよ」
謎めいた事を言うなぎさです。樹里は笑顔全開のままで、
「お医者さんに行って診てもらってください。間違いないと思います」
「そうなんだ。よかった、海流に妹ができるんだ」
嬉しそうに応じるなぎさですが、
「妹か弟かはまだわかりませんが」
樹里は言い添えました。しかしなぎさは、
「でも、海流は妹が欲しいはずだから、絶対に妹だよ。栄一郎も女の子が欲しいって言ってたから」
口を尖らせて譲りません。
「そうなんですか」
樹里はそれでも笑顔全開で応じましたが、左京は、
(女の子だと、かなりの確率でなぎささんのコピーが誕生する予感がする)
身震いしてしまいました。
めでたし、めでたし。