表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
478/839

樹里ちゃん、ドロント一味に助けられる

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 中学時代の同級生の市ヶ谷鋭太が再び五反田邸に現れて、樹里に別れを告げると、立ち去ってしまいました。


 事情を飲み込めていない樹里は鋭太を笑顔全開で見送りました。


 鋭太の身に危険が及ぶと悟った元泥棒の目黒弥生は、すぐに仲間の黒川真理沙に連絡しました。


「元泥棒は言わなくてもいいでしょ!」


 地の文の前回までのあらすじにいちゃもんをつける弥生です。


「そうなんですか」


 それにも関わらず、樹里は笑顔全開です。


 


 弥生からの連絡を受けて、真理沙は普段着である泥棒スタイルに着替え、鋭太を尾行しました。


「普段着ではありませんから」


 ごく冷静に地の文に抗議する真理沙です。


「首領、これから鋭太君を尾けます」


 真理沙はおばさんに連絡をしました。


「おばさん言うな!」


 真理沙よりは絶対的におばさんの有栖川倫子が、理不尽に地の文に切れました。


「うるさいわね!」


 すでに三十路を過ぎてしまった倫子は、涙ぐんで地の文に切れました。


 よく考えてみると、今年で真理沙も三十路だと気づく倫子です。


(もう同年代と言っても間違いではないわね)


 つまらない事で喜びを感じてしまうもうすぐ四捨五入すると四十路の倫子です。


「違います!」


 年齢設定を適当に捏造する地の文に切れる倫子です。


(鋭太君を守らないと!)


 若い男が三度の飯より好きな倫子は、よだれを垂らしてスマホを取り出しました。


「涎は垂らしていないわよ!」


 若い男が三度の飯よりも好きなのは否定しない倫子です。


 倫子と真理沙は、弥生が密かに鋭太に着けたGPSを頼りに走りました。


 


(市ヶ谷鋭太、組織を裏切りましたね。死んでもらうしかありませんね)


 暗い部屋で、部下からの連絡をSNSで確認した世界犯罪者連盟の幹部である野矢亜剛はニヤリとしました。


 JKもびっくりな速さでスマホを操作して、鋭太抹殺の指令を発信する野矢亜です。




 その頃、一足遅れで五反田邸に平井蘭警部と平井拓司警部補が車で現れました。


 弥生から、鋭太が現れた事を聞かされた蘭は、


「どうしてすぐにこっちに連絡をくれなかったのよ!」


 迫力満点な凄みで弥生に詰め寄りましたが、


「ついさっき来たところですよ! 連絡したって、間に合わなかったでしょ!」


 負けずに反論する弥生です。


「まあまあ」


 平井警部補は間に入って二人を止めました。そして、女医の真理沙がいないのを残念に思いました。


「それは内緒にしてください!」


 女医モノのHなDVD鑑賞が未だに趣味の平井警部補は地の文に懇願しました。


「とにかく、市ヶ谷鋭太を探すわよ」


 蘭は平井警部補に告げました。平井警部補は頷いて、


「警部は樹里さんを守ってください」


 爽やかな笑顔で走り出して、車に乗りました。


(いい男!)


 イケメンに目がない弥生は、うっとりとしました。


「し、してないわよ!」


 深層心理を見抜かれた弥生は、地の文に八つ当たりで切れました。


「蘭さん、おめでたなのですね?」


 そういう事には目敏い樹里が言いました。


「そうなんですか」


 その年でまだ産むのかと思った弥生はびっくりしました。


「そんな事、思っていません!」


 蘭に殺人光線が出そうな目で睨まれ、慌てて地の文に切れる弥生です。


「ええ。五月の下旬に出産予定なの」


 年甲斐もなく、頬を赤らめて照れる蘭です。


「うるさい!」


 表情を正確に描写した地の文に切れる蘭です。


 


 市ヶ谷鋭太は小田急線に乗り、新宿へ向かっていました。


(樹里ちゃん……)


 鋭太はもう二度と樹里に会えない事を感じていました。


 脂肪フラグが立ったと思う地の文です。


「死亡フラグだよ!」


 誤変換をしてしまった地の文に切れる鋭太です。


(週刊誌に樹里ちゃんとの記事が載ったのを見て、不審に思ってバイト先をネットで調べたら、そんな会社は存在していなかった)


 鋭太は、世界犯罪者連盟の存在は知りませんが、自分がまずい仕事を引き受けてしまったのは理解しているのです。


 やがて、電車は新宿駅に到着し、鋭太は改札を出て、JRのホームへと向かいました。


 その鋭太を人混みの中から観察している黒尽くめの男二人がいます。


 必殺の方でしょうか?


「違うよ」


 鉄板のボケを放った地の文に静かに切れる黒尽くめの男二人です。


 一人は角刈り、もう一人はスキンヘッドです。


「病死に見えるやり方で始末しろとの事だ。二手に分かれるぞ」


 角刈りが言いました。


「わかった」


 スキンヘッドがニヤリとして応じます。二人は離れて行動を開始し、確実に鋭太に近づいて行きました。


 スキンヘッドは右手に細長い針を隠し持っています。角刈りは左手に注射器を隠し持っています。


 鋭太は何も知らずにホームへと歩いて行きます。


 角刈りの方が鋭太に近くなったので、彼に急速に接近しました。そして、何食わぬ顔で鋭太のすぐ後ろに立ち、やばそうな色の液体が入った注射器を取り出しました。


「おっと、ごめんよ」


 角刈りの男に貧乏神がぶつかりました。


「誰が貧乏神だ!」


 正しい表現をしたはずの地の文に切れる不甲斐ない夫代表の杉下左京です。


「更にうるさい!」


 多めに修飾語を使った地の文に切れる左京です。


「てめえ、何しやがるんだ!?」


 角刈りは左京に左腕を強く掴まれて、もがきました。


「くそ!」


 スキンヘッドが角刈りの加勢に入ろうとすると、


「あんたの相手は私よ」


 倫子が立ちふさがり、目にも留まらぬ早技の回し蹴りで倒してしまいました。


 騒ぎに気づいた周囲の人々がざわつく中、鋭太は呆然としていましたが、


「鋭太君、こっちよ」


 黒のスカートスーツに着替えた真理沙が現れて、鋭太の手を掴むと、走りました。


「ああ、ええと、その……」


 鋭太は真理沙の事を知らないので、焦っていました。真理沙は現場からある程度離れた柱の陰に隠れると、


「ごめんなさい、鋭太君。私は黒川真理沙。五反田邸の住み込み医師です。貴方を守るために来ました」


「そうなんですか」


 鋭太は思わず樹里の口癖で応じました。


 


 角刈りも、左京によって取り押さえられ、事件は未遂で終わりました。


「結局巻き込んでしまって、申し訳ありません」


 倫子が角刈りを縛り上げながら言いました。


「いえ、とんでもないです。元はと言えば、樹里が発端ですから」


 左京は近くで見ると想像以上に美人の倫子に顔を赤らめながら応じました。


 そして、愛人になってくれないかな、と思いました。


「思ってねえよ!」


「全力でお断りします!」


 左京と倫子がほぼ同時に地の文に叫びました。


 


 野矢亜は鋭太抹殺が失敗に終わった事を知り、


「仕方ありませんね。我々が関係している事を探られる前に、あの二人を始末しなさい」


 氷点下の声でスマホに告げました。


 


 蘭は平井警部補を通じて、鋭太襲撃が倫子と左京の活躍で未遂に終わった事を知りました。


「鋭太君、無事だって、樹里」


 蘭が伝えると、


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で涙ぐんで応じました。




 果たして、めでたし、めでたしなのかと、疑問を投げつける地の文です。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ