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樹里ちゃん、同級生に謝罪される

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 樹里は、中学時代の同級生である市ヶ谷鋭太と夕食を共にしましたが、その鋭太が、実は世界犯罪者連盟に雇われて樹里に近づいた事を、五反田氏の愛娘の麻耶の家庭教師である有栖川ドロントから聞きました。


「有栖川倫子です! ドロントなんて知りません!」


 今更ながら、白々しいお惚けをかまして、地の文に切れる倫子です。


「ううう……」


 どっちの味方なのかわからない某ウラキのような地の文のせいで項垂れる倫子です。


 倫子は樹里に対して、また鋭太が連絡をしてきたら、必ず知らせてくれるように言いました。


 いよいよ、ドロント一味と世界犯罪者連盟の血を血で洗う恐ろしい戦いが始まると思う地の文です。


「そんな事にはならないわよ!」


 いい加減な迷推理を展開した地の文に切れる倫子です。


(あまり関わり合いになりたくないんだけど、仕方ないか)


 倫子は上州新田郡の出身でした。


「誰が木○らし紋○郎だ!」


 現在BSで再放送中の時代劇風に切れる倫子です。


 


「一体何の用よ?」


 警視庁のロビーで仏頂面をして倫子を出迎えたのは、ようやく二人目の子供を妊娠したおばさんでした。


「名前を言いなさいよ!」


 しばらくぶりの登場なのに、切れ味鋭い突っ込みを地の文にする平井蘭警部です。


 倫子は、自分がドロントである事を話して自首したのです。


「違います!」


 見当外れの事を言ってボケたつもりの地の文に激ギレする倫子です。


「世界犯罪者連盟を壊滅させる糸口になる話をしにきたんだけど、聞きたくないのなら、帰るわよ」


 倫子は敵意剥き出しの蘭を挑発しました。


「なんですって!?」


 蘭が食ってかかろうとすると、


「まあまあ、警部。話だけでも聞きましょうよ」


 割って入ったのは、以前、探偵になりすました倫子と不倫をした蘭の夫である平井拓司警部補です。


「不倫はしていません!」


 異口同音に地の文に切れる倫子と拓司です。


「そうだぞ、平井。話を聞かないで追い返すなんて、お前は個人的感情で動き過ぎだ!」


 そこへ脱獄囚が現れて言いました。


「脱獄囚じゃねえよ!」


 鉄板のネタを放った地の文に切れる加藤真澄警部です。


 倫子は会議室の一室に通され、蘭と拓司と加藤警部に樹里の身に起こった事を話しました。


「その話が本当だとすると、市ヶ谷鋭太はもう一度樹里に接触してくる可能性が高いわね」


 蘭が腕組みをして言いました。


「世界犯罪者連盟は、失敗した者には容赦がないと聞く。もうそいつは消されたんじゃないか?」


 加藤警部が物騒な顔で物騒な事を言いました。


「うるさい!」


 気にしている事を指摘した地の文に切れる加藤警部です。


「市ヶ谷鋭太自身はしくじっていないから、消されてはいないはず。だから、必ずもう一度樹里さんに連絡してくるはずよ」


 倫子が加藤警部を見て言いました。純情な加藤警部は倫子に見つめられて顔を赤らめました。


 早速、妻のありさにメールを送ろうと思う地の文です。


「やめろ!」


 嫌な汗をしこたま掻いて地の文に切れる加藤警部です。


「了解しました。では、捜査員を樹里さんにつけましょう。市ヶ谷が接触してきたら、身柄は拘束せずに泳がせます」


 平井警部補が言いました。


「お願いします」


 倫子が平井警部補を見ると、


「用事は済んだから、サッサと帰りなさいよ」


 嫉妬深いおばさんが割って入りました。


「おばさん言うな!」


 もう一度地の文に切れる蘭です。


「言われなくても帰るわよ。しくじったりしないでよね」


 倫子が捨て台詞を言うと、


「しくじったりしないわよ!」


 また倫子に掴みかかろうとする蘭を、


「まあまあ」


 平井警部補が加藤警部と二人で止めました。




「どうして、有栖川さんを事情聴取しなかったのですか、警部?」


 倫子が警視庁を出て行くと、平井警部補が尋ねました。すると蘭は、


「有栖川倫子がドロントだと思われるから?」


 平井警部補を見ました。平井警部補は頷いて、


「そうです。任意で聴取して、今まで積み上げてきた証拠を突きつけ、勾留する事も可能だったはずですよ」


 ニヤリとしました。蘭はムッとして、


「今はその事より、世界犯罪者連盟の方が優先だからよ。あの女、その程度の事では、尻尾を出したりしないから、今まで捕まえられなかったのよ」


 必死に言い訳がましい事を言いました。


「うるさいわね!」


 図星を突いた地の文に理不尽に切れる蘭です。


「そういう事にしておきましょうか」


 平井警部補はフッと笑って言いました。


「有栖川先生がドロント? そんな訳ないだろう?」


 美人は絶対に犯罪者ではないというトンチンカンな考え方をしている加藤警部が口を挟みました。


「加藤君、相変わらずバカね」


 加藤警部を軽蔑の眼差しで見る蘭です。


 


 その頃、樹里は何事もなく五反田邸に到着し、三女の乃里に授乳をすませて、着替えをし、庭掃除を始めていました。もちろん、もう一人のメイドも一緒です。


「名前を言いなさいよ!」


 素通りしようとした地の文に抗議する目黒弥生です。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。するとそこへ、一人の若い男が近づいてきました。


 それに気づき、目の色を変えるエロい事しか考えていない弥生です。


「違うわよ!」


 弥生は入ってきたのが鋭太だと気づき、樹里のそばに駆け寄りました。


「樹里さん、市ヶ谷さんがお見えですよ」


 弥生は一心不乱に庭の枯葉をかき集めている樹里に告げました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じ、鋭太の方を見ました。


「樹里ちゃん、この前はごめん。俺、何も知らずに時給のいいバイトだと思って応募してしまって……」


 鋭太は樹里に駆け寄って、頭を下げました。


「そうなんですか?」


 樹里は不思議そうな顔で応じました。


「だから、もう君の前には現れないようにするよ」


 謎めいた事を告げる鋭太に、


「そうなんですか?」


 ますます不思議そうな顔をする樹里です。


「でも、君の事を好きなのは本当だよ。元気でね、樹里ちゃん」


 鋭太はこぼれそうな鼻水をすすって、駆け去りました。


「鼻水じゃなくて、涙を拭ったんだよ」


 感動的なシーンに水を差すのが趣味の地の文に軽く切れて邸の庭から出て行く鋭太です。


「お元気で!」


 樹里は笑顔全開で見送りました。


「いけない!」


 弥生が慌ててスマホを取り出して、鋭太を撮影しました。


「違うわよ!」


 展開を捏造した地の文に切れる弥生です。スマホで黒川真理沙に連絡したのでした。


「真理沙さん、市ヶ谷さんがたった今、五反田邸を出ました。危険だと思われます」


「わかったわ。後を尾けます」


 真理沙の声が応じました。


 ドキドキしてしまう地の文です。

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