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樹里ちゃん、左京に更に嫉妬される

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 長女の瑠里のボーイフレンドであるあっちゃんの父親の田村さんが、樹里に異常接近していると昭和眼鏡男から告げられた不甲斐ない夫の杉下左京の嫉妬の炎がますます激しくなっている頃、樹里は何も知らずに田村さんと楽しく会話をしていました。


(まさか、樹里ちゃん、今再ブームの不倫? 斉藤さんに続いて?)


 応接間のドアで聞き耳を立てている元泥棒のキャビーは野次馬根性丸出しです。


「やめてよ!」


 元泥棒というキラーワードに過敏に反応する目黒弥生です。


「キャビーもやめて!」


 揚げ足取りが得意な地の文に更に釘をさす弥生です。


 どうやら、野次馬根性丸出しなのは認めたようです。


「ううう……」


 どこまでも人をからかうのが生きがいの地の文の汚いやり口に項垂れてしまう弥生です。


「お話ができてよかったです。またどこかでお話ししていただけますか?」


 田村さんが爽やかな笑顔で尋ねました。


「いいですよ」


 樹里はいつも通りの笑顔全開で応じました。


「ありがとうございます、樹里さん」


 田村さんは樹里の手を取って握手しました。


「そうなんですか」


 樹里はそれでも笑顔全開で応じました。


「では、これから取引先に行かなければならないので、失礼致します」


 田村さんがドアに近づいてきたので、弥生は慌ててドアを離れ、廊下を掃除しているふりをしました。


「失礼致します」


 弥生にも爽やかな笑顔で挨拶する田村さんです。


「お気をつけて」


 夫がいる身でありながら、田村さんにポオッとして応じる根が浮気性の弥生です。


「ち、違います!」


 顔を真っ赤にして地の文の推理を否定する弥生です。


(ごめん、祐樹、他の男の人の笑顔にドキッとしてしまって……)


 もうすぐ元夫になる目黒祐樹に心の中で詫びる弥生です。


「違うわよ!」


 仮面夫婦なのをばらした地の文に泣きながら切れる弥生です。


「仮面夫婦でもないわよ!」


 更に畳み掛けるように地の文のボケに機敏に対応する弥生です。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


(結局、樹里ちゃんと田村さんが何を話したのか、全然わからなかったわ)


 つまらなそうに口を尖らせる弥生です。


 


 一方、眼鏡男に妙な事を吹き込まれた左京は、ドキドキしながら事務所に向かいました。


「おはようございます、所長」


 左京より早くきていた無給で働いている所員の斎藤真琴が挨拶をしましたが、


「あ、おはよう」


 いつもなら、真琴をハグして挨拶を返すセクハラでパワハラな左京ですが、素っ気なく返して自分の席に座りました。


「違う!」


 いろいろと捏造した地の文に切れる左京ですが、今は気もそぞろで、いつものキレがありません。


「どうしたんですか、所長? お腹でも痛いんですか?」


 優しい性格の真琴が尋ねました。


「いや、何でもないよ、斎藤さん」


 左京は力なく微笑みました。


「そうなんですか?」


 真琴が小首を傾げて樹里の口癖で応じたので、


「ううう……」


 樹里が田村さんと仲良くしているのを妄想して、項垂れる左京です。


(田村って奴と樹里、お似合いだった……。それはどう足掻いても否定できない事実だ)


 左京は、田村さんと樹里のツーショットがあまりにも絵になっていたので、それがよりショックだったのです。


 早く離婚すればいいのにと思う地の文です。


「鬼か!」


 霊長類最強の冷徹さを誇る地の文に涙ぐんで切れる左京です。


「お久ー」


 そこへ元グウタラ所員の加藤ありさが、愛娘の加純を連れて現れました。


 樹里の次女の冴里と同い年の加純は三歳になり、幸いにも父親の加藤真澄には全く似ず、性格には難がありますが、顔は有名女優に似ているありさにそっくりなので、一安心の地の文です。


「余計なお世話だ!」


 事件の捜査中にも関わらず、どこかで地の文に切れる加藤警部です。


「性格に難があるって、どういう意味よ!」


 ありさも地の文に切れました。言葉通りだと思う地の文です。


「何しに来た、ありさ?」


 落ち込んでいるところにありさが現れたので、左京は不機嫌そうに言いました。


 すると、ありさは加純と一緒にソファに座って、


「加純が入れる保育所を探してるんだけど、どこも全部断られて、困ってるのよね」


 アメリカ人も驚く程肩を竦めてみせました。


「断られて当たり前だ。お前、働いてないだろう? だからだよ」


 左京はアホかという顔で応じました。


「え? そうなの?」


 ありさはキョトンとしています。


(バカだとは思っていたが、ここまでとはな)


 更に呆れる左京ですが、もうありさの事を相手にしたくはないので、何も言いません。


「幼稚園にしたらどうですか? そもそも、警察官の奥さんて、同業以外は働いてはいけないんですよね?」


 真琴がありさにはお茶、加純にはオレンジジュースを出しながら言いました。 


「ああ、それは都市伝説みたいなもので、そんな事はないよ」


 左京は真琴に言いました。


「へえ、そうなんですかあ。所長って、物知りなんですね」


 真琴が悪気なく言いました。


「いや、俺、元警察官だからさ」


 でも、樹里と離婚したら、貧乳の熱血女性弁護士よりも、巨乳の真琴だと思っている左京は嬉しそうです。


「全然違う!」


 血の涙を流して、捏造が過ぎる地の文に切れる左京です。


「私も元警察官だけど、それ、本当の話だとずっと思ってた」


 ヘラヘラ笑いながらいうありさを、左京と真琴は白い目で見ました。


 加純も、自分の母親が「やっちまった」のを察したのか、そっぽを向いてジュースを飲んでいます。


「それよりさ、樹里ちゃんて、不倫の噂があるけど、どうなの、左京?」


 ありさの突然の危険球に左京は心臓発作を起こしそうになりました。


「え? どういう事ですか?」


 真琴まで興味津々の顔で左京を見ました。


(誰か助けてくれ!)


 左京は心の中で絶叫しました。


 波乱はまだ続くと思う地の文です。

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