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樹里ちゃん、ストーカーに出会う

あの伝説のキャラであるネコにゃんとのほんの一瞬のコラボです。

 御徒町おかちまち樹里じゅりは、居酒屋と喫茶店で働き、場合によってはデートもしてくれるメイドです。


 本当にいつ寝ているのか謎ですが、樹里は全く疲れた様子がありません。


 先日、警視庁特捜班の亀島馨がおかしな行動をしたのを同僚の神戸蘭かんべらんから伝え聞いた特捜班の班長である杉下左京は、樹里に会いに居酒屋に行きました。


「迷惑をかけたな。亀島には、俺からきっちり注意しておいた。悪く思わないでくれ」


「そうなんですか」


 樹里は全然そんな風には思っていません。


「それから、バ加藤が来たらしいな?」


 これも神戸警部からの情報です。


「はい。デートのお誘いも受けたので、デートしました」


「な、何ーッ!?」


 樹里が笑顔全開で報告すると、左京はあごも外れんばかりに驚きました。


「杉下さんも如何ですか? 一日一万円です。要予約だそうです」


 屈託のない笑顔で言う樹里に、左京は脱力してしまいました。


「俺はいい……」


「そうなんですか」


 樹里が寂しそうに言ったので、


「ああ、ウソウソ! したいしたい! 予約入れるよ」


 バカな男丸出しです。実は店長から、


「デートの誘いは積極的にして下さい。拒否されたら、悲しそうにすると効果的です」


と言われている樹里です。


「ありがとうございます」


 樹里は嬉しそうに厨房に戻りました。


 そんな二人のやり取りを、まるで牛乳瓶の底みたいな昭和丸出しの眼鏡越しに見ている男がいます。


 彼は熱狂的な樹里信者の一人です。


 あまりに好き過ぎて、脳内デートでプロポーズまで済ませています。


 危険度MAXです。


「僕の樹里たんとデートするなんて、許せない」


 彼の小さな目がギラッと輝きました。




 そして居酒屋の業務が終了しました。外はもう明るくなっています。


 左京は翌日の仕事が早いので、深夜に帰ってしまいました。


 樹里は片づけを終えて、居酒屋を出ました。


 そこに先ほどの昭和眼鏡の男が近づきます。


「樹里たん」


「はい?」


 樹里は全く警戒するなく、笑顔MAXで応じます。


「僕という婚約者がありながら、他の男とデートするなんて、どういうつもりなのさ?」


 樹里は何の事かわかりませんでしたが、


「申し訳ありません」


と謝りました。彼が居酒屋の常連客なのは知っていたからです。


「あ、謝られてもさ……。とにかく、デートはしないでよ。僕の立場がないから」


「そうなんですか」


 樹里は意味がわからないまま言いました。そして、


「ご予約していただければ、デート致しますよ」


と言いました。すると昭和男はムッとして、


「僕は君のフィアンセなんだよ。どうしてデートするのに予約がいるのさ!? ふざけないでよ!」


と切れてしまいました。


「申し訳ありません」

 

 樹里は男が怒り出したので、また謝りました。


「クレームは迅速に処理して下さい」


 樹里は店長の言葉を思い出しました。


「では今からデートしましょう」


「え?」


 意外な提案に、眼鏡男は舞い上がってしまいました。


 この男は樹里信者として居酒屋に通いつめていましたが、樹里と話したのは今日が初めてなのです。


「は、はい」


 さっきまでの強気な態度とは百八十度方向転換して、男は借りて来た「ネコにゃん」のように大人しくなりました。


 そして樹里とマ○クデートを満喫しました。


「ご馳走様でした。また誘って下さい」


「はい」


 いや、誘われたんだけど……。でも嬉しいから何も言いません。


 夢のような時間でした。


 今まで恐れ多くて触れる事すらできなかった樹里と腕を組んで歩いたのですから。


「では、一万円になります」


 樹里のその言葉に、思いっきり現実に引き戻された昭和眼鏡男でした。

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