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樹里ちゃん、更にしつこく殺し屋に狙われる(前編)

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 その樹里の雇い主である五反田氏の身に、大変な事が起ころうとしていました。


 ええと、例の何とかという組織が五反田氏暗殺を某所に依頼されたのです。


「いい加減、覚えてください。世界犯罪者連盟です」


 少し強めに地の文に言う組織の幹部の野矢亜のやあごうです。


「ついでに御徒町樹里も始末してください。我が連盟の名に傷をつけた許しがたい存在ですから」


 野矢亜は、向かいのソファにふんぞり返っている黒尽くめの男に告げました。


 頬髯ほほひげ顎鬚あごひげ口髭くちひげを生やしたこの時期には会うのを躊躇うようなむさ苦しい顔です。


「わかった。そちらはサービスにしておこう。報酬は五反田の暗殺のみでいただく」


 黒尽くめの男はフッと笑って言いました。


「助かります」


 野矢亜もフッと笑いました。


 


「何ですって!?」


 五反田氏の愛娘の麻耶の家庭教師を未だにしているおばさんが突然叫びました。


「おばさん言うな! 突然叫んだ訳じゃないわよ!」


 挨拶代わりの地の文のボケに過剰に反応して切れるもうすぐ四十路の有栖川倫子です。


「まだ三十代前半よ! ちなみに深○恭子と同い年よ!」


 聞いてもいないのに有名女優を引き合いに出す見栄っ張りな倫子です。


 彼女は、お忘れの方も多いと思いますが、世界的大泥棒のドロントです。


「それは確実な情報なの?」


 倫子は、住み込み医師の黒川真理沙ことヌートに尋ねました。


「はい。世界犯罪者連盟に所属している人物からのリークです」


 真理沙は真顔で応じました。


「罠の可能性はないんですか?」


 もう一人のメイドの目黒弥生ことキャビーが口を挟みました。


「その可能性は低いわ、キャビー。そのリーク元のオヤジは、ヌートにメロメロだから」


 倫子がニヤリとして言うと、真理沙は、


「やめてください、首領。あの人と私では、祖父と孫くらい年が違うのですから」


 身震いしました。


「そうなんですか」


 倫子と弥生は樹里の口癖で応じました。


 いずれにしても、以前から思っている事ですが、情報がダダ漏れの組織だと思う地の文です。


「それなら、迷っている時間はないわね。すぐに旦那様の護衛に行くわよ」


 倫子の言葉に頷く真理沙と弥生ですが、


「キャビーは残って」


 倫子が言いました。弥生はムッとして、


「どうしてですか!? 私が一番動けますから!」


 つい本音を吐いてしまい、倫子と真理沙に睨まれました。


「樹里さんも狙われる可能性があるからよ。気を悪くしないで、キャビー」


 倫子に頭を撫でられ、


「そういう事なら、了解です」


 口を尖らせながらも承諾する弥生です。


 


 いつもと導入部が違ったので、昭和眼鏡男達はもちろん、保育所の男性職員の皆さんも登場をカットされました。


 樹里の家に居候をしている松下なぎさとその夫の栄一郎も出てきません。


 言うまでもなく、ヘボ探偵は名前すら出してもらえません。


「どういう事だよ!?」


 長女の瑠里と次女の冴里を保育所に送ってから切れる左京です。




 そして、樹里は三女の乃里を乗せたベビーカーを押し、無事に五反田邸に到着しました。


「おはようございます、樹里さん」


 門の外で待っていた弥生が真顔で言いました。


「おはようございます、弥生さん」


 樹里は笑顔全開で応じました。弥生は樹里の耳元で、


「また殺し屋が樹里さんを狙っている可能性があります。早く邸に入りましょう」


 周囲を見渡しながら告げました。


「そうなんですか」


 樹里も弥生の耳元で言いました。


「ああん」


 耳が弱点の弥生はつい変な声を出してしまいました。


「うるさいわね!」


 事実をありのままに指摘した地の文に切れる弥生ですが、


「はっ!」


 我に返ると、すでに樹里は玄関から中に入っていました。


「樹里さん、待ってください!」


 慌てて走り出す弥生です。

 

 


 樹里は乃里に授乳をすませ、庭掃除を弥生とこなし、二階の部屋から掃除を始めました。


(やっぱり、樹里ちゃんより先に旦那様を狙うのかな?)


 いつまで経っても殺し屋が現れないので、退屈になって欠伸あくびをする弥生です。


「弥生さん」


 そこを樹里に見られ、声をかけられたので、焦る弥生です。


「あ、あの、昨日の夜、祐樹と話していて寝不足だという事ではないですから」


 動揺し過ぎて、訊かれてもいない事を言ってしまうお茶目な弥生です。


「そうなんですか?」


 樹里はとんちんかんな事を言う弥生に首を傾げました。


(しまったああ!)


 その時になって自分が墓穴を掘った事に気づき、赤面する弥生です。


「はっ!」


 玄関のチャイムが鳴りました。弥生はビクッとしてロビーへと走りましたが、


「いらっしゃいませ」


 いつの間にか樹里が玄関に着いており、ドアを開いて来訪者を招き入れていました。


「ゲッ!」


 弥生は来訪者の顔を見て驚きました。真理沙から聞いている殺し屋の特徴と同じ顔だったからです。


 そして、その殺し屋と思われるむさ苦しい顔の男が連れている人を見て、更に驚きました。


「麻耶お嬢様、お帰りなさいませ。海水浴は如何でしたか?」


 何も知らない樹里は笑顔全開で尋ねました。


「只今、樹里さん。楽しかったわ」


 嬉しそうに返した麻耶は、


「今田先生、どうぞお入りください」


 むさ苦しい顔の男を招き入れました。


(ええっ!? 麻耶お嬢様の学校の先生?)


 あまりにも予想外の展開に唖然としてしまう弥生です。


「お邪魔しまーす」


 今田と呼ばれた男の後ろから、三人の男子と二人の女子が入ってきました。


 どうやら、今田先生の隠し子達のようです。


「違う! 教え子だ!」


 ちょっとした間違いを犯した地の文に切れる今田先生です。


「樹里さん、申し訳ないんだけど、みんなに飲み物を出してください」


 麻耶は汗を掻いている同級生達を見て言いました。


 その中には、あのボーイフレンドの市川はじめはいません。


 別れてしまったのでしょうか?


「別れてません! はじめ君は私と違って優秀だから、都立の○比谷高校に進学したのよ!」


 顔を赤らめて地の文に訂正を迫る麻耶です。


 彼女も登場の機会が少ないので、いつの間にか受験を終えて高校に入学していました。


 麻耶の名誉のために申し上げますが、受験に際して、一切の忖度はなかったと断言する地の文です。


 麻耶は今田先生と同級生を応接間に案内しました。


「麻耶君、トイレはどこかな?」


 今田先生が尋ねました。麻耶は微笑んで、


「廊下を奥へ進んで、右です」


「ありがとう」


 熊田先生はニッコリして応じました。


「熊田じゃねえよ!」


 それでも、地の文の間違いにはきっちり突っ込む今田先生です。


 樹里は麻耶の友人達と今田先生に飲み物をだすために、キッチンに行きました。


 弥生は男子達に囲まれて嬉しそうでしたが、


「あの、もう一人のメイドさんは独身ですか、おばさん?」


 かなり失礼な質問をされて切れそうになりましたが、


(麻耶お嬢様のお友達だから、怒ってはダメ!)


 そうは思いながらも、子供が三人いる樹里の方が魅力的に見えている現実を突きつけられ、泣きそうです。


 


 樹里がキッチンの冷蔵庫から大きめの瓶に入ったオレンジジュースを取り出して、グラスに注いでいると、


「ああ、こちらにいらっしゃいましたか」


 今田先生がニコニコして入ってきました。


「何かご用ですか、熊田先生?」


 樹里は全く悪気なく笑顔全開で応じました。


「熊田じゃねえよ、今田だよ!」


 今田先生は顔つきを変えて怒鳴り、樹里ににじり寄りました。


「死んでもらおうか、御徒町樹里」


 ニッと笑って言う今田先生です。


「そうなんですか」


 それにも関わらず笑顔全開で応じる樹里です。


 タイトル通り、次回に続くと思う地の文です。

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