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樹里ちゃん、三角関係を修正する

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 樹里の実の父親の赤川康夫が、実の母親の由里にアメリカに一緒に行って欲しいと言い出したために、義理の父親の西村夏彦が、得意の被害妄想を発動し、康夫と由里がヨリを戻そうとしていると考え始めてしまいました。


 樹里は、実は夏彦にも渡米してもらい、居酒屋チェーンを展開して欲しいと康夫が思っている事を伝えたのですが、夏彦は由里から何も聞いておらず、また波乱の予感がしてくる地の文です。


「あんた、前回の終わりに私の悪口言ったよね? この先ずっと、あんたの出番なくしてやろうか?」


 絶対零度の冷たい声で由里が脅かしたので、地の文は失禁してしまいました。


 まさかと思っていたため、大人用紙おむつをしていなかったので、大変な事になってしまった地の文です。


 帰宅後、樹里は夏彦が何も聞いていない事を姉の璃里に伝えました。


「わかったわ。私がお母さんによく言っておくから」


 元警察庁のキャリアで、人一倍正義感が強い璃里は、あまりにも自由奔放な由里に厳しく言う良い機会だと考えました。


(その前にお父さんね。もう離婚して何年にもなるのだから、自分の立場をわきまえてもらわないと) 


 樹里と同じで悪気が全くない康夫にも、言って聞かせないとダメだと考える璃里です。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じ、通話を終えました。


「お姉さんに任せておけば、安心だな」


 璃里に邪な思いを抱いている理想のヒモ生活を謳歌している不甲斐ない夫の杉下左京が言いました。


「いろいろうるさい!」


 数多くのネタを持っている地の文に切れる左京です。


 左京を潰しておかないと、今後ずっと登場できなくなると危惧している地の文です。


「明日、お父さんと話に来るそうです」


 樹里が笑顔全開で告げたので、左京はビクッとしました。


「そ、そうなの?」


 何故か全身から尋常ではない汗を噴き出して応じる左京です。


「お、俺は立ち会わなくていいよね?」


 ハンカチで汗を拭いながら尋ねる左京です。


「左京さんはお仕事が忙しいですから、立ち会わなくて大丈夫ですよ」


 樹里は笑顔全開で、全く悪気なく、左京のプライドをズタズタに切り裂くような事を言いました。


「そうなんですか」


 左京は引きつり全開で応じました。翌日は一つも仕事が入っておらず、無給で働いてくれている斎藤真琴にも休みにすると告げている事は樹里には知らせない方がいいかも知れないと思う地の文です。


「絶対に知らせるな!」


 血の涙を流して地の文に警告する左京です。

 

「左京さん、瑠里達をお風呂に入れてあげてください」


 樹里がキッチンで洗い物をしながら言いました。


「わかった」


 左京はリヴィングで康夫と一緒にテレビを観ている瑠里と冴里に声をかけました。


「瑠里、冴里、パパとお風呂に入ろうか」


「うん、はいろう、パパ」


 瑠里と冴里は笑顔全開で応じました。


 瑠里は大喜びで浴室へと走って行きましたが、冴里はトテトテと左京に近づいてきて、


「パパ、おはなしがあるの」


 左京はデレデレした顔で、


「何だい、冴里?」


 しゃがみ込んで冴里に尋ねました。すると冴里は左京の耳元に口を近づけて、


「さーたんがさんさいになったら、もうパパとおふろにはいれないの。ごめんね」


 衝撃的な通告をしました。


「ええ、どういう事、冴里?」


 左京はひどく動揺して訊きました。冴里は悲しそうな顔をして、


「いつまでもパパとおふろにはいっていると、おっぱいがおおきくならないって、ありさちゃんがおしえてくれたの」


「そうなんですか」


 あまりにもとんでもない理由を聞かされ、思わず樹里の口癖で応じてしまう左京です。


(ありさの奴、いつの間にそんなバカげた事を冴里に!?)


 元グータラ所員の加藤ありさを出入り禁止にしようと思う左京です。


(しかも言うに事欠いて、自分の事を『ありさちゃん』て呼ばせているのか、四十過ぎたくせに!)


 別の事にも腹が立ってくる左京です。


 


 翌日の事です。


 璃里と顔を合わせるのが何となく気まずい左京は、いつもより早めに瑠里と冴里を保育所に連れていこうと考えましたが、


「おはようございます」


 それよりも早く、璃里が来てしまいました。


「お姉さん、ありがとう」


 樹里は笑顔全開で応じました。璃里は苦笑いして、


「樹里にはお父さんの面倒を見てもらっているから、これくらい当然よ」


 康夫も出迎えに来て、


「璃里、久しぶりだね。今日は私に話があると聞いたのだが、何かね?」


 笑顔全開で尋ねました。璃里は真顔になって、


「話が長くなるから、リヴィングで話しましょうか、お父さん」


「そうなのかね」


 璃里が真剣な表情なので、康夫はキョトンとしましたが、左京は鼻血が出そうになりました。


(璃里さん、かっこいい!)


 樹里の実の姉に欲情する神をも恐れぬバカ者だと思う地の文です。


「違う!」


 動揺しまくりながらも、全力で地の文の分析を否定する左京です。


 


 璃里は康夫に、由里の現在の夫である西村夏彦が疑惑を抱いている事を告げ、由里と一緒に渡米する事を諦めて欲しいと説得しました。


「そうなのかね」


 話を聞き終わった康夫は真剣な顔になり、腕組みをしました。


「お母さんには新しい夫と家族がいるのよ、お父さん。わかって」


 璃里は涙ぐみながら言いました。


(璃里さん、可愛い!)


 結局立ち会わないと言いながらも、仕事がないので立ち会ってしまっている左京は、またしても璃里に欲情しました。


「ああ、仕事に行かなくちゃ!」


 自分の不利な状況に気づいたので、慌てて逃げ出す変態夫です。


「うるさいよ!」


 そんな時でも地の文に切れるのは忘れない左京です。


「わかったよ。璃里や樹里に心配をかけて、すまなかったね」


 康夫は笑顔全開で詫びました。


「そうなんですか」


 璃里は樹里とハモって言いました。


「それに、お父さんもアメリカの仕事を辞めて、日本にいるようにしてよ。私も樹里も、妹達も、それを望んでいるのよ」


「そうなのかね」


 康夫の目に光るものを見た地の文です。


 璃里と樹里も涙ぐんでいました。


 めでたし、めでたし。


「めでたくなんかないよ! アメリカで大儲けの話はどうしたのさ!?」


 後で由里が一人で悔しがったのは良いオチだったと思う地の文です。

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