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樹里ちゃん、またしても殺し屋に狙われる

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 その樹里の途轍もなく不甲斐なくて金に目がない夫の杉下左京は、その性格の悪さのせいか、あらゆる人の恨みを買っており、何度となく命を狙われています。


「いろいろうるさい!」


 殺し屋の放ったメスで割られたガラスを片付けながら切れる左京です。


 ガラスで首を切って命を落とせばいいのにと思う地の文です。


「更にうるせえ!」


 すると、鑑識に連絡を取っていた元カノの平井蘭が戻ってきて、


「あ、バカ、どうしてガラスを片付けちゃったのよ! 鑑識が来るから、現場を荒らさないでって言ったでしょ!」


 鬼の形相で左京に詰め寄りました。


「あ、悪い……」


 左京は蘭の凄まじい怒りに顔を引きつらせ、後退りして詫びました。


「全く、元警視庁の警部まで務めた男が、何してんのよ」


 蘭の怒りは全く収まりません。これはごめんねのチュウをしないとダメでしょうか?


「するか!」


「させるか!」


 見事なまでに息を合わせて地の文に切れる左京と蘭です。


「警察官が不倫なんかしたら、それこそセンテンススプリングの餌食でしょ!」


 顔を赤らめてベッ◯ーの事をディスる蘭です。


「ディスってないわよ!」


 見事な推理を展開したはずの地の文に切れる蘭です。


 あ、もしかして、某テレビ局の女子アナをディスっていますか?


「それも違うわよ!」


 情報番組が大好きな蘭は、的確にボケる地の文にもう一度切れました。


 最近出番が少ないので、気合が入っています。


「ううう……」


 今度こそ図星を突かれ、項垂れてしまう蘭です。


 するとそこへ、


「まあまあ、落ち着いてください、平井警部」


 ニコニコしながら、コーヒーを淹れたカップを差し出す真琴です。


「ありがとう、斎藤さん」


 少しもありがたそうな顔をしないで言う性格が悪い蘭です。


「斎藤さんはやめてくださいよォ、平井警部ゥ。それだと、お笑い芸人みたいじゃないですかァ。真琴でいいですよォ」


 蘭の嫌味な顔もどこ吹く風で笑顔全開で応じる真琴です。


 ようやく、彼女のフルネームが紹介できてホッとする地の文です。


「あ、そ」


 更に無愛想に応じる蘭です。多分、胸の大きさで真琴に負けているから悔しいのだと推察する地の文です。


「そんな事は思っていません!」


 名探偵ぶりを発揮したはずの地の文の見解を全面否定する蘭です。


(真琴ちゃんが来てから、ありさも蘭も機嫌が悪いんだよなあ。どうしてなんだろう?)


 その機嫌が悪くなる元凶である左京が全く気づいていないのが恐ろしいと思う地の文です。


 


 一方、ありさの夫である加藤真澄警部が、樹里の護衛のために来ている五反田邸に、一人の脱獄囚が近づいていました。


「脱獄囚じゃねえよ!」


 その強面は、顔つきを見事なまでに表現した地の文に切れました。


 どこかで見た事がある顔だと思ったら、左京の依頼人の夫である島根洋二さんでした。


「それは偽名だよ! 本名は江川えがわ紹治しょうじだよ!」


 自ら個人情報を明かしてしまう間抜けな殺し屋です。すぐに警視庁に通報しようと思う地の文です。


「余計な真似すると、てめえの可愛い彼女が東京湾に沈む事になるぜ」


 江川は加藤警部より怖い顔で地の文を脅迫しました。


 でも、地の文には可愛い彼女はいません。だから、脅迫には屈しません。


「くそ、引っかからなかったか」


 意味不明な事を言う江川です。もしかすると、残念な人なのかも知れないと察する地の文です。


「誰が◯ンジャッシュ児◯だ!」


 特定の人物を誹謗中傷する発言を江川がしたので、伏字にした地の文です。


「おっと、こうしちゃいられねえ。俺はこれから杉下左京の女房の御徒町樹里を始末しに行くんだった」


 またしても重要な情報を喋りながら歩き出す江川です。


「それにしても、夫婦なのに名字が違うって、どういう事なんだ?」


 首を傾げる江川ですが、それは言わないお約束なのがこのシリーズだと思う地の文です。


 


 その頃、樹里ともう一人のメイドの元泥棒は、五反田邸の広大な庭の掃除を終えたところでした。


「元泥棒はやめてー!」


 過去を執拗にほじくり返すタチの悪いストーカーのような地の文に泣きながら懇願する目黒弥生です。


「樹里さん、あの刑事さん、ずっと一緒にいますけど、気にならないですか?」


 弥生は小声で樹里に尋ねました。


 加藤警部は、二人が掃除をしている場所から数メートル離れた位置にピタリと付け、付かず離れずでいました。


「気になりませんよ。加藤さんは私を守ってくれているのですから」


 樹里はそう言って、笑顔全開で加藤警部を見ました。すると、顔はあれでも、心は純情な加藤警部は、耳まで真っ赤になり、俯いてしまいました。


(似合わねえ……)


 そんな加藤警部のリアクションに寒気がしてしまう弥生です。


「え?」


 その次の瞬間、弥生は背筋が凍りつくような殺気を感じました。


(まさか!?)


 途端にいつもの泥棒の顔になり、周囲を見渡す弥生です。


「その表現はやめてよ!」


 涙ぐんで地の文に抗議する弥生です。


「弥生さん、どうかしましたか?」


 樹里が笑顔全開で訊きました。弥生は周囲を見渡しながら、


「誰かが見ているような気がするんです。樹里さん、気をつけてください」


「そうなんですか」


 それにも関わらず、樹里は笑顔全開で応じました。


「む?」


 加藤警部は、弥生の様子が変わったので、ハッとしました。


(平井の話じゃ、あの子は怪盗ドロントの一味だっていう事だが)


 しかし、「可愛いは正義」の加藤警部は、弥生が泥棒だとは微塵も思っていません。


 さすが、「私、おっぱいでかいので」とか訳のわからないボケをかますグウタラ女の夫です。


「誰が米◯涼子だ!」


 どこかで、臨月間近のありさが切れましたが、誰もそんな事は言っていないと断言する地の文です。


「刑事さん、後ろ!」


 その時、弥生が叫びました。


「え?」


 可愛い上にメイド服という、この上ない「神の如き姿」をしている弥生に叫ばれ、加藤警部はつい、デレっとしてしまいました。


「邪魔だ、ブサイク」


 そこに現れたのは、島根洋二さんでした。


「江川紹治だよ!」


 地の文の一周回って間違っているボケに突っ込む江川です。


「ぬああ!」


 後頭部にハイキックを見舞われ、加藤警部は顔面から地面に叩きつけられて動かなくなりました。


「何の恨みもございませんが、お命頂戴致します、御徒町樹里さん」


 江川がニヤリとして告げました。


「そうなんですか」


 この危機的状況で、加藤警部が気絶しているにも関わらず、樹里は笑顔全開で応じました。


「樹里さんには指一本触れさせない!」


 弥生が、死亡フラグが立つようなセリフを言って走り出しました。


「不吉な事を言わないで!」


 弥生が地の文に気を取られた一瞬の隙を突き、江川は弥生を交わし、樹里に一足飛びに接近しました。


「とったあああ!」


 ガッツポーズを決めて雄叫びをあげる江川です。


「樹里さん、逃げてください!」


 弥生は慌てて踵を返しました。


「そうなんですか?」


 樹里は首を傾げて笑顔全開で応じました。


「死んでもらいます」


 江川はその凶悪な顔を更に当社比五割増しで怖くし、樹里に右の手刀を突き出しました。


「樹里さーん!」


 弥生が絶叫しました。


「え?」


 ところが次の瞬間、江川は宙を舞い、地面に背中から叩きつけられていました。


「合気道?」


 それを見ていた弥生が呟きました。


「先月から通信教育で習っているんです」


 樹里は笑顔全開で言いました。


「そうなんですか」


 唖然としながら、樹里の口癖で応じる弥生です。


「おのれ!」


 しかし、江川はまだ意識がありました。彼は飛び起きると、次の攻撃を樹里に仕掛けようとしました。


「ぬ?」


 何故か江川の右腕はぶらーんとし、動かせません。


「投げた時、関節を外しました」


 樹里は笑顔全開で告げました。その離れ業に驚愕する弥生です。


(樹里ちゃん、何者なの?)


「樹里さん!」


 そこへ更に有栖川倫子と黒川真理沙が駆けつけました。


「命拾いしましたね、樹里さん。またお会いしましょう」


 嫌な汗をたくさん掻いているのに強がりを言って逃げ出す江川です。


「追う必要はないわ」


 倫子が駆け出した弥生に言いました。


「奴の黒幕を探るのが先よ」


 真剣な表情で言う倫子です。


「そうなんですか」


 それにも関わらず、樹里は笑顔全開です。


 取り敢えず、めでたし、めでたしだと思う地の文です。

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