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樹里ちゃん、左京の仕事を応援する

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 不甲斐ない夫の杉下左京は、遂に犯罪に手を染め、警察に逮捕されました。


「違う!」


 超絶的な捏造を繰り返す地の文に切れる左京です。


「浮気調査を依頼されたんだよ! 金に糸目はつけないってな!」


 でも、本当は依頼人の女性が貧乳だったので、受けるのをやめようと思った事は内緒にしたい左京です。


「やめろー!」


 依頼の今後を左右する証言をした地の文に今年一番の激ギレをする金の亡者の左京です。


(顔は綺麗なので、余計に胸は残念さが増しているな)


 心の声を聞く道具をドラ◯もんに出して欲しいと本気で思う地の文です。


「勘弁してください」


 自分が全面的に間違っていた事に気づき、土下座をする左京です。


「調査対象は貴方の夫である島根洋二さんでよろしいのですね?」


 左京は、依頼人に提出された写真を見ながら尋ねました。


 夫の顔はどちらかというと、脱獄囚顔でお馴染みの加藤真澄警部に近い感じです。


「俺を比較対象にするな!」


 どこかで切れる加藤警部です。


(この顔で浮気ができるか? まあ、世の中、どんなマニアも存在するって事か?)


 樹里も貴方と結婚したのですから、相当なマニアだと思う地の文です。


「余計なお世話だ!」


 結婚に至る経緯の核心に触れるような事を言ってしまった地の文に動揺しまくって切れる左京です。


 でも、今回はいつもよりセリフが多めなので大満足です。


「ううう……」


 あれこれと真実を解き明かした地の文のせいで、首が折れるくらい項垂れる左京です。


「その顔で、浮気しているのかとお思いですか?」


 貧乳の依頼人が左京に尋ねました。


「え、いや、決してそんな事は思ってはいませんよ……」


 嫌な汗を身体中の汗腺から噴き出しながら応じる左京です。


「私の胸も小さいと思っていますよね?」


 若干怒気を含んだ声で言い添える依頼人です。


 肩までストレートの黒髪を伸ばし、グレーのスカートスーツの上にアイボリーホワイトのハーフコートを着込んでいますが、それでもその胸の貧相さははっきりとわかる地の文です。


「何ですって!?」


 地の文の挑発にソファから立ち上がる依頼人です。


「やめろ!」


 依頼人の感情を逆撫でし続ける地の文に切れる左京です。


「決してそのような事は思っておりませんよ……」


 左京は依頼書に記入してもらった依頼人の氏名を確認しながら、


「島根祐子さん」


 愛想笑いをして言いました。島根祐子と呼ばれた女性は溜息を吐いてソファに座り直し、


「申し訳ありません。夫の浮気相手が、これ見よがしな巨乳なので、つい……」


 顔を赤らめて頭を下げました。


(綺麗な人だな)


 そんな仕草にグッと来てしまうおっぱい星人の左京です。


「おっぱい星人じゃねえよ!」


 依頼人がまたイラつき始めたので、焦って地の文に切れる左京です。そして、話題を変えるために、


「浮気相手の女性に心当たりがあるのですか?」


 仕事がすぐに片付いてしまうと困ると思った左京は、取り乱して尋ねました。


「はい。夫の勤務している会社の同僚です」


 祐子はハンカチで目頭を押さえながら答えました。


「私の親友だった女性です」


 更に衝撃的な証言をする祐子です。


「そうなんですか」


 思わず樹里の口癖で応じてしまう左京です。


「どうか、動かぬ証拠を見つけ出して、夫との離婚に有利になるようにしてください。そのためには経費はいくらかけても差し支えありませんから」


 祐子は潤んだ目で左京を見ました。本来であれば、貧乳の女性に見つめられても何も感じない左京ですが、


(綺麗だ)


 何故かその時はそんな風に思ってしまいました。根が単純だから仕方がないと思う地の文です。


「あれこれうるさい!」


 チャチャが三度の飯より好きな地の文に切れる左京です。


 でも、決して竹内◯子のファンではありません。


「わかりました。最善を尽くします」


 左京は真顔で応じました。もって十五秒だと思う地の文です。


「では、よろしくお願い致します」


 祐子はお辞儀をし、ソファから立ち上がりました。そして、


「念のためにお聞きしますが、杉下先生は巨乳好きですか?」


 その質問にギクッとして背中を大量の汗が流れ落ち始める左京です。


「そんな事はありませんよ。女性の価値は胸の大きさで決まるものではありませんから」


 白々しい嘘を臆面もなく言ってのける左京です。


「そうですの。では、失礼します」


 祐子が入り口のドアに向かって歩き出した時でした。


「只今帰りましたあ、所長」


 そこへ突然、ロンドンブーツみたいな靴でショートパンツとピンクのタイツを履き、上は袖だけ白であとは黒いメジャーリーグのスタジアムジャンパーを着た巨乳の女性が入ってきました。髪は祐子より短めのストレートです。年の頃は樹里と同じくらいでしょうか?


「まあ……」


 祐子はそのドカンと飛び出た胸に見入ってしまいました。そして、キッと左京を睨み、


「あら、所員さんは随分と胸が大きな方を採用なさっていますのね」


 嫌味率百パーセントの言葉を吐きました。


「いや、そういう基準で採用した訳では……」


 止め処なく汗が噴き出し、脱水症状で救急搬送されそうな左京です。


「左京、忘れ物、取りに来たよ」


 すると更に間が悪い事に、産休中のグウタラ所員である加藤ありさも入ってきました。


 祐子の視線がいつもより大きめになっているありさの胸に注がれます。


(何故このタイミングで現れるんだ、バカありさめ!)


 心の中で血の涙を流している左京です。


「なるほど。とにかく、調査の方、よろしくお願いしますね」


 祐子は軽蔑の眼差しを左京に投げつけてから、ドアを乱暴に開け放ち、叩き壊すつもりかというくらい強く閉めました。


「誰、今の?」


 ありさはキョトンとした顔で尋ねました。


「お前には関係ないよ」


「何よ、それ? 教えてくれたっていいじゃないのよ」


 剥れるありさですが、全く可愛くありません。


「うるさいわね!」


 ありのままの事実を述べた地の文に切れるありさです。


 それでも左京はありさを無視して、テーブルの上の書類をひとまとめにすると、自分の机の引き出しに放り込みました。


「浮気調査の依頼人ですよ」


 もう一人の巨乳の女性が言いました。


「真琴ちゃん、余計な事を言わないでくれ」


 左京はもう一人の女性をたしなめました。


「あ、ごめんなさい、所長」


 真琴と呼ばれたその女性は、全く悪びれる様子もなく、舌を出して肩をすくめました。


「どうもお邪魔様!」


 ありさは自分が使っていた机から化粧品を取り出すと、真琴を一睨みしてから、出て行きました。


「皆さん、何をカリカリしているのですかね?」


 真琴はありさが出て行ったドアを見て、呑気な声で言いました。


「何をだろうね……」


 この先が思いやられそうな左京は、机に突っ伏して言いました。

 



 一方、樹里はある人物の訪問を受けていました。


「久しぶりね、樹里」


 それはありさに続いてもう一人の無駄に巨乳な平井蘭警部でした。


「無駄ってどういう事よ!?」


 同級生のありさに二人目ができたのでイラついている蘭は、地の文に切れました。


「そうなんですか」


 樹里はそれでも笑顔全開です。蘭も気を取り直して、


「以前、左京と加藤君が捜査して逮捕した政治家が服役を終えて出所したの」


「それはおめでとうございます」


 樹里は笑顔全開で言いました。蘭は苦笑いして、


「あまりおめでたくもないのよ。そいつ、殺し屋を雇ったっていう噂なの」


「そうなんですか」


 全く動じていない樹里に若干イラッとする蘭ですが、そこは何とかこらえ、


「この二人組なの。貴女も狙われるかも知れないから、今日から私が護衛に付くわね」


 写真を二枚テーブルの上に置きました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じ、写真を見ました。


 男と女のコンビのようですが、どこかで見た覚えがあると思う地の文です。

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