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樹里ちゃん、左京に相談する

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 その樹里のところに、女優時代に交流があったスケベ俳優と意地悪女優がやってきました。


「違う!」


 いつでも素早く捏造ができる地の文に切れる加古井かこいおさむと旧姓:稲垣琉衣です。


 二人の結婚式の招待状を渡された樹里でしたが、それが上から目線作家である大村美紗の愛娘のもみじと内田ホームグループの社長の御曹司の内田京太郎との結婚式と同じ日だったのです。


 もう旬を過ぎた俳優と女優の結婚式など無視して、これからの日本を背負って立つ存在になる京太郎ともみじの結婚式に出席するべきだと思う地の文です。


「旬は過ぎていません! これからも活躍します!」


 すでに出産を終え、すっかり母親の顔になってしまった琉衣が涙ぐんで叫びました。


「ううう……」


 指摘の仕方がえげつない地の文のせいで、項垂れてしまう琉衣です。


「僕だって、まだまだこれからです!」


 たくさんの女優達とあんなシーンやそんなシーンを演じたい願望がある加古井は全力で否定しました。


「語弊がある言い方をするな!」


 白い目で自分を見ている琉衣に苦笑いをしながら、地の文には切れてみせる加古井です。


「どうすればいいか、左京さんに相談してみます」


 樹里は笑顔全開で言いました。


「そうなんですか」


 樹里の口癖で応じたもう一人のメイドの目黒弥生は、


(相談するまでもないし、左京さんに相談するくらいなら、カラスに相談した方がいいと思う)


 結構酷い事を思っていました。


 そしてその日の夜、樹里は長女の瑠里と次女の冴里を保育所に迎えに行き、自宅に帰ると、遅くなってから帰宅した左京に事情を説明し、相談しました。


「いや、樹里、どう考えても、出席すべきは内田家と大村家の挙式・披露宴だろう?」


 左京は瑠里と冴里を寝かしつけながら、言いました。


 左京の頭の中には、今日面接した斎藤真琴という巨乳の美女の事しかありません。


 ですから、いい加減な返事をしていると思う地の文です。


「そんな事はないぞ!」


 全身から嫌な汗を掻きながら、取り敢えず地の文の話を否定する左京です。


「そうなんですか?」


 樹里は首を傾げて応じました。


(可愛い!)


 樹里のその仕草に欲情してしまう左京です。


「よ、欲情はしていないぞ!」


 実はもう少しで樹里を押し倒しそうになったのは内緒にしたい左京です。


「だから、内緒にしろー!」


 すぐにバラしてしまう地の文に血の涙を流して切れる左京です。


「大村先生は樹里を女優の世界に導いてくれた大恩がある方だ。そして、内田ホームの社長は、樹里の雇い主である五反田氏とも昵懇じっこんの仲らしいじゃないか」


 左京は樹里を一生懸命説得しました。


「そうなんですか」


 樹里は加古井からもらった出席者の一覧表を見ながら笑顔全開で応じました。


「何、それ?」


 左京は気になってその表を見せてもらいました。


(おおお! すごいじゃないか! 名だたる芸能界の重鎮の皆さんがズラッと……)


 出席者の格を比べると、甲乙つけ難いと思った左京です。


(しかも、昔大ファンだった森山もりやま千種ちぐささんも出席するのか!?)


 森山千種とは、ミニスカがトレードマークの人気アイドルでした。


 足フェチの左京は、彼女が出る番組は全て録画し、擦り切れるまで観たのです。


 エロとしがらみの狭間に立たされ、苦悩するスケベな左京です。


「うるせえ!」


 真実を明らかにしたはずの地の文に理不尽に切れる左京です。


「じゃあ、こうしよう。加古井君と稲垣さんの挙式・披露宴は俺が出席して、樹里はもみじさんと京太郎君の挙式・披露宴に出席してくれ」


 結局のところ、エロが勝った左京です。


「ううう……」


 痛いところを指摘した地の文のせいで、大きく項垂れる左京です。


「そうなんですか? 森山さんに会いたいのですか?」


 突然核心に迫る質問をする樹里によって、左京はもう少しで昇天してしまうところでした。


「そ、そんな事はないよ、樹里。俺はあくまで、大村先生の顔を立てるべきだと思っただけだよ」


 わかりやすい程棒読みの左京です。


「そうなんですか」


 純粋無垢な樹里は笑顔全開で応じました。


「では、左京さんがもみじさん達の挙式・披露宴に出席してください。加古井さんと稲垣さんの方がは、私が出席します」


 更に笑顔全開で、衝撃的な事を告げる樹里です。


「そうなんですか」


 あまりの事に、樹里の口癖で応じてしまう左京です。


(実は樹里は全てを見通した上で俺を翻弄しているだけなのか?)


 非常に嫌な汗が全身から噴き出す左京です。


「これで解決ですね。左京さん、ありがとうございました」


 樹里は笑顔全開で告げると、夕食の後片付けを終え、風呂に入って寝てしまいました。


(樹里は全部わかっているのか? 俺が実はものすごくスケベな奴だっていう事も!?)


 顔を引きつらせ、またガクッと項垂れる左京です。


 そして、意気消沈したまま、風呂に入り、浴槽のお湯を抜いて洗いました。


(俺は何て浅はかな男なんだ。樹里のような素晴らしい女性と夫婦になれたというのに、他の女に目を奪われてしまって……)


 上辺だけ反省した左京は、樹里が眠っている寝室に行き、そっと隣のベッドに入りました。


「上辺だけじゃねえよ! 心の底から反省してるよ!」


 泣きながら地の文の憶測を否定する左京です。


(そうだ。樹里に頼んで、森山千種さんのサインをもらってもらおう)


 そんなよこしまな事を妄想してしまうダメ男です。


 果たして、それで収まりがつくのでしょうか?


 不安になる地の文です。

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