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樹里ちゃん、取材される

 御徒町おかちまち樹里じゅりは居酒屋と喫茶店で働くメイドです。


 本当のメイドなので、その人気は絶大です。


 とうとうテレビ局の取材が居酒屋に来ました。


「貴女が本物のメイドさんですね?」


 アポなし突撃取材で有名な芸人が言いました。


「打ち合わせではそうですと言えばいいと言われました」


 樹里のネタばらしの答えにいやな汗がドッと出る芸人。


 生放送なので撮り直しができません。


「あはは、面白いメイドさんだなあ。俺、弟子入りしようかなあ」


 芸人は何とかボケてその場を誤魔化しました。


「誰に弟子入りするのですか?」


 樹里は大真面目な顔で尋ねます。


「貴女にですよ、メイドさん」


 芸人が嫌らしい目つきで樹里に近づき、手を握りました。


「ありがとうございます。では明日からよろしくお願いします」


「あ、いや、そうではなくてね……」


 ここで手を振り払われて切れるのがこの芸人の「鉄板」でしたが、樹里は手を握り返して来ます。


「お、お、お……」


 芸人は、よく見るともの凄く可愛い樹里に手をギュッと握られているのに気づきました。


 「リアルに」狼狽しています。


「あはは、今日は四月一日だから、思い切って言っちゃいますね。俺と付き合って下さい」


 樹里に「遊ばれている」原状を何とか打開したい芸人は今度こそ拒否されると思って言いました。


「いいですよ」


 芸人は耳を疑いました。「リアル」には嬉しいですが、「芸人的」には致命傷です。


「あははは、メイドさん、俺を芸能界から抹殺したいんですか? でも、本当に付き合ってくれる訳じゃないですよね?」


 芸人は何とか樹里の「冗談」に持って行こうと必死に目で合図をして言いました。


「目にゴミが入ったのですか?」


「違うって! もういい加減にしてよ! 何だよ、そんなに俺の事が嫌いか!?」


 とうとう芸人は追い詰められて、滅茶苦茶な切れ方を決行しました。


 これで樹里が泣き出したり、逃げ出したりしたら「汚名(?)」が挽回できそうです。


「嫌いではないですよ。どちらかと言うと、好きです」


 笑顔全開でそう言われ、その芸人は天然爆弾にやられてしまいました。


 全面降伏です。


 CMに入り、廃人のようになった芸人が居酒屋から運び出されました。


「困りますよ、店長。段取り通りにしていただかないと」


 ディレクターが店長に言いました。すると周りにいた客が、


「お前、樹里様に文句があるなら、俺達が相手になるぞ」


「おまえんとこのテレビ局の視聴拒否運動をネットで立ち上げるぞ」


「ホームページを改竄するぞ」


「そうだそうだ」


 ディレクターの一言が、樹里信者の怒りを呼んでしまいました。


「いや、あの、その……」


 ディレクターは、甲子園で巨人を応援している人の心境です。


 ここは完全にアウェーです。


 テレビ局は逃げるように居酒屋を出て行きました。


「樹里様、貴女はやっぱり素晴らしい」


 樹里信者達は、自分達で作った歌を合唱し始めました。


「ありがとうございます」


 樹里は笑顔全開で言いました。


 


 そして次の日です。


 何故か昨日来たテレビ局の編成局長がディレクターと来店しました。


「昨夜は大変失礼致しました」


 編成局長は店長に頭を下げました。


「どういう事ですか?」


 店長は事情が飲み込めません。


「実はですね、昨晩の視聴率が、番組始まって以来の好成績だったのです。つきましては、メイドさんに番組のレギュラーになっていただいてですね……」


「お断りします」


 昨日ディレクターに因縁をつけた樹里信者が、店長の代わりに勝手に返事をしました。


「樹里様は、俺達のメイドさんなんだよ。お前らのような欲の皮の突っ張った連中に渡すものかよ」


「な、何という事を!」


 編成局長はムッとして店を出て行きました。店長は泣きながら、


「ありがとう、皆さん。これで樹里ちゃんはこの店のアイドルでい続けられます」


「わー!」


 皆、抱き合って涙しています。気持ち悪いです。


「一番テーブルの方、スペシャルお待たせいたしました!」


 何も知らない樹里が厨房から現れました。


 更にヒートアップする信者達です。


 こうして信者の集いは閉店まで盛り上がり続け、開店以来の売上を記録しました。

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