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樹里ちゃん、左京に離婚を申し出られる

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドで、もうすぐ引退してしまうママ女優でもあります。


「それは間違いないの?」


 五反田邸の一室、ドロントの隠れ家での会話です。


「違います! 私は有栖川倫子!」


 誰もいない空間に向かって意味不明の自己紹介をする倫子です。


「ううう……」


 どこまでも意地の悪い地の文の仕打ちに項垂れてしまう倫子です。


 今更、そんなおとぼけは必要ないと思う地の文です。


「間違いありません。これで全ての点が線でつながりました」


 住み込み医師の黒川真理沙ことヌートが真顔で言いました。


「もしそうだとしたら、樹里さんだけではなく、左京さん、それから瑠里ちゃんと冴里ちゃんも危ないわね」


 倫子も項垂れから復活し、真顔で応じました。


「どうしますか、首領?」


 エロメイドが尋ねました。


「こんな真剣なやり取りのシーンで、そういうボケこそ要らないでしょ!」


 TPOをわきまえずにボケまくる地の文に切れる目黒弥生ことキャビーです。


「璃里さんにも伝えましょう。場合によっては、御徒町一族全体にも危害が及ぶ可能性がありますから」


 真理沙が倫子を見て言いました。


「そうね。そうして。璃里さんは一族で只一人、いろいろな意味で頼りになる人だから」


 倫子は真理沙を見て言いました。真理沙は黙って頷きました。


 要するに樹里達の母親の由里は、騒がしいだけで何の役にも立たないと言いたい倫子です。


 早速、由里に伝えようと思う地の文です。


「どうして情報を歪めて解釈するのよ!」


 伝言ゲームが大好きだった地の文に切れる倫子です。


 


 ドロント一味のコントが思った以上に長かったせいで、昭和眼鏡男と愉快な仲間達、保育所の男性職員の皆さんの登場シーンを泣く泣くカットした地の文です。


「酷過ぎます!」


 眼鏡男達と男性職員の皆さんが合同で作成したプラカードを掲げ、デモ行進しました。


 それでも無視を貫く地の文です。


「おはようございます、樹里さん」


 すでに五反田邸に到着してしまった樹里に慌てて挨拶に来たキャビーです。


「目黒弥生です!」


 いつでもどこでもボケる事が生きがいの地の文に切れる弥生です。


「知っていますよ」


 笑顔全開で応じる樹里に項垂れてしまう弥生です。


「そうなんですか」


 今はそれが精一杯の返しの弥生です。それでも何とか玄関に辿り着くまでには復活し、


「樹里さんにお話があるんです」


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。弥生は玄関を入ると、樹里をロビーの端まで連れて行きました。


「本当にあった怖い話ですか?」


 樹里はそれでも笑顔全開です。弥生は苦笑いして、


「ある意味怖い話かも知れないんですけど、そういう類いじゃないんです」


「そうなんですか?」


 樹里は弥生の言っている事が意味不明なので、首を傾げました。


「実はですね……」


 弥生が樹里の耳元に口を近づけた時でした。樹里の携帯が鳴りました。


「すみません、弥生さん」


 樹里はバッグから携帯を取り出して通話を開始しました。相手は不甲斐ない夫の中でも群を抜いた存在の杉下左京でした。


「うるさい!」


 電話口の向こうからでも地の文に切れるという高等技術を見せる左京です。


「どうしましたか、左京さん?」


 樹里は笑顔全開で尋ねました。すると左京は、


「実は、突然で申し訳ないんだが、離婚してくれないか?」


 とうとうおかしくなってしまったようです。


「違う!」


 すかさず地の文に切れる左京です。


「どうしてですか?」


 それでも樹里は笑顔全開で尋ねました。左京の声が漏れ聞こえていたので、弥生は樹里のリアクションに顔を引きつらせています。


(左京さんが離婚してくれって言ってきているのに、樹里ちゃん、どうして笑顔なの!?)


 樹里の心理が理解できない弥生です。自分に置き換えると、気が狂いそうなくらい恐ろしいと思いました。


「やめてー!」


 例え話でも、そんな事を言われたくない実は離婚の危機にある弥生です。


「そうじゃないわよ!」


 どこまでも妄想を暴走させてしまう地の文に切れる弥生です。


「実は、好きなひとができたんだ。樹里とはもう一緒にいられなくなった」


 あまりにも棒読みなセリフの左京です。演技が下手過ぎるので、次回から降板させた方がいいと思う地の文です。


「更にうるさい!」


 間髪入れず地の文に突っ込む左京です。これが最後の突っ込みになるのでしょうか?


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開でしたが、両目から、真珠のような涙が零れ落ちていました。


「樹里さん!」


 弥生が思い余って樹里から携帯を奪い取り、


「左京さん、どういう事ですか!? 好きな女ができたって、どの口が言うんですか!?」


 逆なら仕方がないと思い、怒鳴り散らしました。


「弥生さんには関わりのない事です。樹里に代わってくれませんか?」


 憤懣やる方ない弥生ですが、無言のまま、まだ涙を零している樹里に携帯を返しました。


「いくら詫びても詫びきれない事だが、許してくれ。もう俺達はやっていけないんだよ」


 今度は何故か感情の篭った声で告げる左京です。降板が嫌なので、頑張ったようです。


「そうじゃねえよ!」


 心情をおもんぱかったはずの地の文に理不尽に切れる左京です。


「わかりました、左京さん。今から家に戻りますね」


 樹里は涙を拭いながら、告げ、通話を終えました。


「樹里さん……」


 もらい泣きしているフリをする弥生です。


「本当にもらい泣きしてるのよ!」


 感情を逆撫でするのが大好きな地の文に切れる弥生です。


「弥生さん、申し訳ありませんが、早退させていただきます」


 樹里は携帯をバッグにしまうと、深々とお辞儀をし、玄関を出て行きました。


(何が起こっているの?)


 弥生はすぐさま、倫子の部屋へと走りました。


 


 ドキドキが止まらない地の文です。

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