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樹里ちゃん、新しい敵と遭遇する

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドで、映画にもドラマにも引っ張りだこの人気ママ女優でもあります。


「首領、大変な事がわかりました」


 いつもと違う展開なので、ちょっと焦ってしまう地の文です。


 ここは五反田邸にある有栖川倫子の部屋です。実は倫子は世界的大泥棒の怪盗ドロントだと思い込んでいる痛いおばさんです。


「違うわよ! 私はドロント! 思い込んでるんじゃないわよ!」


 真実をねじ曲げようとするまるで◯◯のように性格の悪い地の文に切れる倫子です。


「話の続き、いいですか?」


 若干呆れ気味の顔で告げるドロントの一の部下であるヌートこと、黒川真理沙です。


 彼女は自分の事を五反田邸の住み込み医師だと思っています。


「先日、お邸に現れた胡散臭い週刊誌の記者ですが、とんでもない存在でした」


 地の文のボケを完全無視で話を続ける真理沙です。心が折れかける地の文です。


「やっぱりね。あいつらの組織の一人なのね?」


 真顔で応じる倫子の小皺が目立つと思う地の文です。


「やかましい!」


 目を血走らせて地の文に激ギレする倫子です。どうやらNGワードだったようです。


「あのお、話を進めていいですか?」


 ややイラつき気味に尋ねる真理沙です。


「あ、はい、どうぞお進めください」


 それに気づき、ギクッとして敬語で応じる倫子です。


 実は真理沙が切れると◯ジラより手がつけられないのです。


「一回地獄を観に行きますか?」


 真理沙にドスの効いた低い声で囁かれ、漏らしてしまった地の文です。


 以後気をつけます。紙パンツ買いに行っていいですか?


「首領の読み通りでした。あの記者は例の組織の一員でした」


 真顔で応じる真理沙に惚れ直してしまう地の文です。


 あの組織とは、お酒のハンドルネームばかりの某組織と同じでしょうか?


「違うわよ! それにハンドルネームじゃないでしょ、それは!」


 何かを敏感に感じ取り、ボケ倒す地の文に切れる倫子です。


「世界中の犯罪者を裏で取りまとめ、思うがままに操っている世界犯罪者連盟(world criminal federation)、略して世犯連(WCF)。いよいよ日本にも乗り込んできたのね」


 真顔で言う倫子には惚れ直さない意外に冷静な地の文です。


「惚れ直してくれなくて結構よ!」


 ムッとした顔で負け惜しみを言う倫子です。


「負け惜しみなんか言ってないわよ!」


 更に地の文の挑発に乗せられる倫子に、


「首領、いい加減にしないと、私、怒りますよ」


 真理沙が目が全く笑っていない笑顔で告げました。


「申し訳ありません!」


 瞬時に見事な土下座をする倫子です。もう少しで失神しそうになった地の文です。


「まずいわね。何が切っ掛けで樹里さんが目をつけられたのか知らないけど」


 倫子は腕組みをして言いました。


「これは私の推測ですが、渋谷栄一のつながりではないかと」


 真理沙が言いました。渋谷栄一とは、以前、五反田氏を暗殺しようとして自滅した前世がガマガエルのジイさんです。


「違うぞ!」


 どこかの刑務所の独房で雄叫びをあげる渋谷です。


「そして、もう一つ。樹里さんの夫の杉下左京さんが警視庁時代に刑事部長だった男も絡んでいますよ、首領」


 そこへエロメイドの目黒弥生ことキャビーが入ってきました。


「そっちもなの? まさか、アホのあっちゃんもつながってないわよね?」


 真理沙が切れそうなので、弥生も倫子も地の文のボケを完全無視です。


 血の涙が出そうになる地の文ですが、女の子ではないので、泣きませんでした。


「まさか、それはないでしょう。あの人は本当に只の阿呆ですから」


 弥生は肩を竦めて完全否定しました。


「へっくしょい!」


 その頃、どこかの刑務所の中で、寒くもないのにくしゃみをするあっちゃんこと六本木厚子です。


「誰がパーフェクトヒューマンよ!」


 誰も何も言っていないのに「あっちゃんボケ」をかます本当にアホなあっちゃんです。


「いずれにしても、樹里さんと左京さんを守れるのは私達だけ。そして、世犯連を潰せるのも、私達だけよ」


 倫子は真理沙と弥生を見て言いました。真理沙と弥生は黙って頷きました。


 ここまで、主役の樹里が全く出てこないのは、初期のお話以外なかった展開だと思う地の文です。


 もしかして、最終回が近いのかと危惧する地の文ですが、信長公記があるので一安心です。


「そうなんですか」


 それにも関わらず、樹里は笑顔全開で応じました。


「くうう……」


 樹里を守ろうとした昭和眼鏡男と愉快な仲間達は、JR水道橋駅近くの路地で這いつくばっていました。


「御徒町樹里さんですね?」


 眼鏡男の顔を革靴で踏みつけにした黒のダブルのスーツを着た長身で七三分けのイケメンが笑顔で言いました。


「違いますよ」


 樹里は笑顔全開で否定しました。イケメンはグリッと眼鏡男の顔を更に踏みつけると、


「ご冗談はおやめください。正直にお答えにならないと、この変態男の顔がトマトみたいに潰れちゃいますよ」


「私は杉下樹里ですよ」


 笑顔全開で答える樹里です。イケメンは苦笑いをして眼鏡男の顔から足をどけると、


「そうでしたね。まだ離婚されていないのですよね。失礼致しました」


 深々とお辞儀をしました。そして、ゆっくりと顔を上げると、不敵な笑みを浮かべ、


「先日、我が同志が貴女に警告しましたよね? このままではすまなくなると」


「そうなんですか?」


 樹里は首を傾げて応じました。イケメンはイラッとして、


「週刊誌の記者になっている我が同志の事ですよ、樹里さん。お忘れですか?」


 すると樹里はポンと手を叩いて、


「ああ、ありがとう◯春の方ですか?」


 あるBさんが思い出して欲しくない事実を掘り起こした樹里です。


「違いますよ。そうでした、これが貴女のテクニックでしたね。相手をイラつかせて、自滅を誘う。そのせいで幾人もの同志が倒されている事実を忘れかけていましたよ」


 そう言いながらも、かなりイラついているイケメンです。


「私は世界犯罪者連盟の野矢亜のやあごうです。以後お見知り置きを」


 野矢亜は名刺を差し出しました。


「言っておきますが、名刺屋ではありません」


 樹里のボケ封じをする野矢亜です。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で名刺を受け取りました。


「大岡越前、好きでした」


「その剛じゃねえよ!」


 全く別の方面からのアタックを仕掛けられ、思わず全力で切れてしまう野矢亜です。


 年配の方にしか、このボケは理解できないと思う地の文です。


「では、今日はこれにて!」


 野矢亜は樹里のボケの直撃のせいでフラフラしながら立ち去りました。


「お気をつけて!」


 樹里はそんな野矢亜に追い討ちをかけるように言いました。


 


 めでたし、めでたし。

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