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樹里ちゃん、左京の幼馴染と会う

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドで、ホラー映画と歴史ドラマの主演も務めるママ女優でもあります。


「では、行ってきますね、左京さん、瑠里、冴里」


 樹里は笑顔全開で告げました。


「行ってらっしゃい!」


 いつもは項垂れ全開の不甲斐ない夫の杉下左京ですが、今日はいつになく嬉しそうです。


 これはもしかすると、女性弁護士との不倫が復活したのでしょうか?


 Bさんが復帰した記念に不倫再開とは、嫌味な男だと思う地の文です。


「違う! そもそも不倫なんかしてねえよ!」


 真相に鋭く迫る地の文に理不尽に切れる左京です。


「いってらっしゃい、ママ!」


 髪の毛が随分と長くなってきた長女の瑠里が元気全開で応じました。


 そんな瑠里を見たら、瑠里命の親衛隊員が卒倒しそうです。


「いてらしゃい、ママ!」


 何でもお姉ちゃんに対抗しようとする次女の冴里も、負けじと髪を伸ばしています。


 でも、倍以上の人生を生きている瑠里にはどうしても敵いません。


 倍とは言っても、五歳と二歳ですが。


「樹里様と瑠里様と冴里様にはご機嫌麗しく」


 そこへのこのこと現れる昭和眼鏡男と愉快な仲間達です。


「おお!」


 早速、瑠里の長くなった髪に気づき、感動する変態隊員です。


 隊員ですが、入院した方がいいと思う地の文です。


「そのような心配は無用です!」


 自分の精神は健全だと胸を張る瑠里派の親衛隊員です。


 それがすでに変態だと思う地の文です。


「ううう……」


 何が何でもやりこめたいまるで桔◯屋さんのような性格の地の文のせいで、項垂れてしまう隊員です。


「おはようございます」


「おはよう、たいちょう!」


「おはよ、たいちょ」


 樹里と瑠里と冴里の笑顔全開の三重奏に癒され、復活する隊員です。


 今回は、放置プレーはなく、眼鏡男達は樹里を護衛しながら、JR水道橋駅に向かいました。


(なければないで、寂しさがこみ上げてしまう……)


 心の中で変態的な落胆をする眼鏡男達です。


「そうなんですか」


 それでも、樹里は笑顔全開です。


 


 その頃、警視庁の捜査一課では、すっかりおばさん化が進んだ平井蘭警部が、若い夫の平井拓司警部補と捜査会議に出席していました。


「うるさいわよ!」


 地の文の些細な悪口にも過敏に反応するまるで◯◯◯◯◯みたいな蘭です。


「どうしたんですか、蘭さん?」


 隣に座っていた平井警部補は小声で蘭に尋ねました。


「な、何でもないよ、たっくん」


 動揺を隠し切れず、職場では言わない約束の「たっくん」を口にしてしまい、更に焦る蘭です。


(バカか、全く)


 少し離れた席に座っている加藤真澄警部は、蘭の意味不明の言動に半目で呆れました。


「今日は、警察庁から出向してきた新しい管理官を紹介する」


 捜査一課長が告げました。会議室に緊張が走りました。年下のくせに上から目線のキャリア官僚が来ると思ったからです。


 ところが、捜査一課長の手招きで入ってきたのは、美しい女性でした。着ているのは黒のパンツスーツで、髪はショートカット。歳の頃は三十代前半でしょうか?


 途端に会議室にいる男性全員がどよめき、女性全員が嫉妬混じりの視線をその女性に向けました。


「本日付けで、警察庁から出向して参りました、今野敏子警視正です」


 制服姿ではない今野警視正は、頭を下げる敬礼をしました。会議室の面々は一瞬で遅れてから、お辞儀を返しました。


 今野警視正は室内を見渡してから、


(やっぱり、いないのか。本当に警視庁ここを辞めたんだ、お兄ちゃん)


 心の中で思いました。


 お兄ちゃんとは誰の事でしょうか? わざとらしくとぼけてみせる地の文です。


(誰かを探しているの?)


 女の勘だけは鋭い蘭が、今野警視正の様子に気づきました。


「女の勘だけは鋭いって、どういう言い草よ!」


 地の文とは付き合いが長いので、ちょっとした言葉も聞き逃さずに突っ込む蘭です。


 その後、会議はいつも通りに進められ、終了しました。


「平井警部」


 席を立って退室しようとした蘭に、今野警視正が声をかけました。


「何でしょうか、管理官?」


 蘭は愛想笑いをして揉み手をしながら近づきました。


「そんな事、するか!」


 勝手な演出をつけた地の文に切れる蘭です。


「お尋ねしたい事があるのですが」


 今野警視正は微笑んで告げました。


「お尋ねしたい事?」


 蘭はキョトンとして、平井警部補と顔を見合わせました。


「はい。元特捜班の杉下左京元警部の事です」


 今野警視正の返事に目を見開く蘭です。


 


 一方、樹里はいつも通りに五反田邸に到着しました。


「それでは樹里様、お帰りの時にまた」


 地の文に罵られるのを避けるかのように素早く敬礼をして立ち去る眼鏡男達です。


「ありがとうございました」


 樹里は深々とお辞儀をしました。


「樹里さん、おはようございます」


 そこへエロメイドの目黒弥生がやってきました。


「エロメイドじゃないわよ!」


 早速地の文に切れる弥生です。ブランクを全く感じさせない鋭い切れ方です。


 では、レッサーパンダの母親の方にしますか?


「どっちも却下よ!」


 顔を真っ赤にして更に切れる弥生です。今日は切れる人がいつもより多いと思う地の文です。


「はっ!」


 弥生が我に返ると、すでに樹里は玄関に入ってしまった後でした。


(ああ、しばらくぶりに出られたと思ったら、まさかの放置プレー……)


 恍惚とした表情になる弥生です。




 しばらくして、着替えを終えた樹里と弥生は、邸の掃除を始めました。


 一階を終え、二階に取り掛かろうとした時でした。


 ドアフォンが鳴りました。


「今日はどなたかのご訪問の予定はなかったはずですけど?」


 嫌な予感しかしない弥生は顔を引きつらせて言いました。


 上から目線作家の大村美紗が来たと思ったようです。


「そうなんですか」


 そんな事は全然気にしない樹里は、笑顔全開で玄関に向かい、扉を開きました。


「御徒町樹里さんですね?」


 そこに立っていたのは、何と今野警視正でした。


「はい」


 樹里は笑顔全開で応じました。すると今野警視正はフッと笑い、


「私、警視庁の今野敏子と申します。お兄ちゃん、いえ、杉下左京さんに約束を守ってもらうために参りました」


 樹里は追いついた弥生と顔を見合わせて、


「そうなんですか?」


 首を傾げて応じました。今野警視正は更にフッと笑い、


「私は杉下左京さんと婚約していました。ですから、婚約の履行を請求しに来たのです」


 衝撃的な事を言いました。


「そうなんですか」


 それにも関わらず、樹里は笑顔全開です。むしろ、第三者の弥生の方が驚き、


「こちらには、杉下さんはいませんが?」


 すると今野警視正は弥生を見て、


「存じております。私は樹里さんにお話があって来たのです」


「そうなんですか」


 それでも樹里は笑顔全開です。


「左京さん、いえ、お兄ちゃんと離婚してくださいませんか?」


 更に衝撃的な事を告げる今野警視正です。


 驚き過ぎて失禁しそうになった地の文です。



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