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樹里ちゃん、歴史ドラマの記者会見にゆく

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドで、ホラー映画と歴史ドラマを掛け持ちするママ女優でもあります。


「では、行ってきますね、左京さん、瑠里、冴里」


 樹里はいつものように笑顔全開で告げました。


「行ってらっしゃい」


 不甲斐なさなら誰にも負けない自信がある杉下左京は項垂れ全開で応じました。


「うるせえ!」


 緻密な紹介をしたはずの地の文に切れる左京です。


 信長公記はもう明智光秀に討たれて終了にしようと思う地の文です。


「酷過ぎるぞ!」


 血の涙を流して抗議する左京です。


「いってらっしゃい、ママ!」


 もうすぐ五歳の長女の瑠里はママに負けない笑顔全開で応じました。


「いてらしゃい、ママ!」


 二歳になったばかりの次女の冴里も、お姉ちゃんに負けじと笑顔全開です。


「樹里様と瑠里様と冴里様にはご機嫌麗しく」


 そこへいつものようにワンパターンの登場をする昭和眼鏡男と愉快な仲間達です。


「ううう……」


 触れてはいけない事を言ってしまった地の文のせいで項垂れる眼鏡男達です。


「はっ!」


 我に返った眼鏡男達ですが、いつものようにすでに樹里の姿はありません。


「ママはきしゃかいけんだから、くるまでいったよ」


 瑠里が代理として笑顔全開で告げてくれました。


「そうなんですか」


 思わず樹里の口癖で応じてしまう眼鏡男達です。


「瑠里ちゃーん、冴里ちゃーん、おはよう!」


 そこへもう一つの変態集団が登場しました。


「変態集団ではありません!」


 キリッとした顔になり、地の文に抗議する保育所の男性職員の皆さんです。


 ああ、変態軍団だったのですね。


「それも違います!」


 さらに切れる男性職員の皆さんです。イチャモンが多いと思う地の文です。


「はっ!」


 同様に我に返り、周囲を見渡すと、すでに瑠里と冴里は左京に連れられて、その場を歩き去っていました。


「ワンワン!」


 ゴールデンレトリバーのルーサが、ケージの向こうから、


「お前ら、マヌケだな」


 そんな感じで吠えています。


「ううう……」


 同類相憐れむ状態の眼鏡男達と男性職員の皆さんです。


 


 そして、樹里はいつものように何事もなく、歴史ドラマの撮影をしている日本テレビ協会のビルに到着しました。

 

「樹里さん、お待ちしておりました」


 ロビーにいた歴史ドラマのチーフプロデューサーである丹東たんとう斜男はすおが出迎えました。


「お待たせして申し訳ありません」


 樹里は深々と頭を下げました。すると丹東は嫌な汗を掻いて、


「いやいや、そういう意味で言ったのではないので、お気になさらず」


 慌てて言いました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。デジャヴュだと思う地の文です。


「今日は撮影はありませんが、記者会見がありますので、よろしくお願いします」


 ハンカチで額の汗を拭いながら告げる丹東です。


「そうなんですか」


 更に笑顔全開で応じる樹里です。


「樹里姉、久しぶり!」


 樹里が丹東と共に記者会見が行われる会場に行くと、歳の離れた妹の真里、希里、絵里がいました。


「久しぶりですね、真里、希里、絵里」


 樹里は笑顔全開で応じました。


 歴史ドラマは、明治をたくましく生き抜いた女性の一代記を描くもので、樹里の高祖母に当たる人の話なのです。


 よって、幼少期のシーンを、ブーフーウーの三人が担当しています。


「豚じゃないわよ!」


 真里と希里と絵里は同じボケを使い回す某新◯劇の皆さんのような地の文に切れました。


 では、トンキチチンペイカンタですか?


「それは男でしょ!」


 続けてボケる地の文に更に切れる真里希里絵里です。


「そうなんですか」


 樹里はそれでも笑顔全開です。


「樹里さん、お久しぶりね」


 そこへ登場したのは、ドラマの原作となった小説の作者です。


「お久しぶりです、加藤佐和子先生」


 樹里は笑顔全開で応じました。何と、あの脱獄囚顔の加藤真澄警部の母親の加藤佐和子が原作者でした。


 いよいよ、上から目線作家は降板確定だと思い、ほくそ笑む地の文です。


「誰かが私の悪口を言っているようだけど、幻聴なのよ! 反応してはダメなの!」


 しばらくぶりの登場に張り切って叫ぶ大村美紗です。

 

「まさか、貴女の高祖母の方の生涯だとは思わなかったわ。貴女がどう演じてくれるか、すごく楽しみよ」


 佐和子は微笑んで言いました。この人はボケに反応してくれないので、若干苦手意識がある地の文です。


「ありがとうございます」


 樹里は深々と頭を下げました。


「記者会見を始めますので、よろしくお願いします」


 ADの女の子が告げました。主な出演者達がズラッと並べられた椅子に腰掛けていきます。


 最前列の中央には、原作者の佐和子と、主演の樹里が座りました。佐和子の隣には、総合演出を担当するラリー修善寺が座っています。


 修善寺は数々の歴史ドラマを手がけてきた高名な演出家です。でも、ハーフではありません。


 名前の由来を明かすと、警察沙汰になってしまうので言えない地の文です。


「そんな事はない!」


 捏造を繰り返す地の文に全力で切れる修善寺です。


「そうなんですか」


 それでも樹里は笑顔全開です。


「それではこれより、来年一月から放映予定の歴史ドラマ『明治れいでぃーず』の記者会見を行います」


 女性アナウンサーが緊張した顔で言いました。


 そして、丹東が長々とドラマの制作が決まった経緯いきさつを述べましたが、全部カットする地の文です。


「何でだよ!?」


 血の涙を流して地の文に抗議する丹東です。長いからに決まっていると思う地の文です。


「そうなんですか」


 樹里はそれでも笑顔全開です。


(御徒町樹里……。あんたのスキャンダルをでっち上げて、芸能界から追放してやるよ)


 記者席の最後尾の端の席に座っている陰険な顔をした記者がニヤリとしました。


 もしかして、センテンススプリングの方ですか?


「違う!」


 ズバッと切り込んだ地の文に顔を引きつらせて否定する記者です。


 はてさて、どうなりますか。

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