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樹里ちゃん、外藤龍二に狙われる

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドで、ホラー映画と歴史ドラマの主役を務めるママ女優でもあります。


「おはようございます」


 何故か、長女の瑠里と次女の冴里が通っている保育所の男性職員の皆さんが、いきなり現れました。


「おはようございます」


 ゴミ捨てに出ていた不甲斐ない夫の杉下左京は、イレギュラーな登場をした男性職員の皆さんに顔を引きつらせて挨拶しました。


(何なんだ、こいつらは?)


 その異常行動に犯罪の臭いを嗅ぎつけた元ヒラ刑事の左京です。


「元警部だよ!」


 経歴詐称をした地の文に切れる左京です。声は綺麗ではなく、イケメンコメンテイターでもありません。


「うるせえ!」


 正しい分析をした地の文に理不尽に切れる左京です。


 でも、男性職員の皆さんの目には、左京は写っていません。


「おはようございます」


 樹里は笑顔全開で挨拶を返しました。


「おはよう、せんせい!」


 瑠里は元気全開で挨拶しました。


「おはよ、しぇんしぇい!」


 冴里も元気全開で挨拶しました。


「おはよう、瑠里ちゃん、冴里ちゃん!」


 男性職員の皆さんの中にも存在する、瑠里派と冴里派の危ない人達は恍惚とした表情で挨拶しました。


 この人達は、東京オリンピックの頃には塀の中にいると思う地の文です。


「そんな事はありません!」


 該当する皆さんが、核心を突いた地の文に切れました。


「樹里様と瑠里様と冴里様にはご機嫌麗しく」


 そこへのこのこと間抜けなタイミングで登場する昭和眼鏡男と愉快な仲間達です。


(またこいつらか!?)


 男性職員の皆さんと眼鏡男達は宿命のライバルであるお互いを睨みつけて思いました。


(いつか決着をつけなければなるまい)


 更に互いに思う変態集団です。


「違う!」


 正確な推理を展開している地の文に抗議の声をあげる眼鏡男達と男性職員の皆さんです。


「はっ!」


 そして、ほぼ同時に我に返りました。大方の予想通り、樹里達はすでにそこにはいませんでした。


 今日は、犯罪の臭いを嗅ぎつけたヘボ探偵の左京が、すっかり大きくなったゴールデンレトリバーのルーサを連れているので、ビビりな男性職員の皆さんは近づく事ができません。


「樹里様はいずこに?」


 眼鏡男達は周囲を見渡しましたが、樹里はどこにもいませんでした。


 今日は、樹里は映画の撮影で、映画会社の車が迎えに来て乗って行ってしまったのは、教えるつもりがない地の文です。


 


 樹里は無事に貸しビルに造られた会社のセットに到着しました。


「お待ちしていました、樹里さん」


 また不用意な一言を言ってしまう頓馬なプロデューサーの丸山秋男です。


「お待たせして申し訳ありません」


 樹里は深々と頭を下げて詫びました。


「いや、樹里さん、私は決してそういうつもりで言ったのではないのですよ」


 嫌な汗を顔じゅうから大量に噴き出して焦る丸山です。


「やっほー、樹里!」


 そこへ共演者である親友の松下なぎさが現れました。


(どうしてこの人は登場シーンがない会社のセットにも来るんだ?)


 監督である岩清水信男は、妙に陽気で、スタッフに馴れ馴れしく声をかけまくるなぎさを見てイライラしていました。


 早速、なぎさの親友の五反田氏に報告しようと思う地の文です。


「やめてくれ!」


 大人の数学が絡んだ事象に恐れをなし、地の文に懇願する岩清水監督です。


「おはようございます、なぎささん」


 樹里はそれにも関わらず笑顔全開で応じました。


「おはようございます、樹里さん」


 そこへ更に意地悪女優ではないと言い張る貝力かいりき奈津芽なつめがやって来ました。


「だって、本当の事ですから!」


 ムッとして地の文に言い返す奈津芽です。要するに意地悪女優だという事のようです。


「違います!」


 ヒステリックに切れる奈津芽です。情緒不安定のようです。


「ううう……」


 執拗な地の文のボケにとうとう精根尽き果てて項垂れる奈津芽です。


「おはようございます、奈津芽さん」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「おはようございます。今日も美人がたくさんいて、嬉しいですね」


 そこへ中堅俳優の外藤そとふじ龍二りゅうじが現れました。


 今日は挨拶だけでお話が終わってしまいそうだと思う地の文です。


「おはようございます」


 樹里と奈津芽は笑顔全開で挨拶しました。奈津芽の笑顔は作り笑顔だと思う地の文です。


「そんな事ありません!」


 ほんの軽い冗談を言った地の文に劇ギレする奈津芽です。


「美人は私と樹里しかいないよ、龍ちゃん」


 なぎさはあっけらかんととんでもない事を言い放ちました。


 奈津芽の顔が引きつりました。他の女性スタッフの顔も同様です。


(龍ちゃんて……。何様のつもりなのよ、あの女は!)


 外藤のマネージャーが赤い三角眼鏡をクイッとあげてから、ムッとしてなぎさを睨みつけましたが、なぎさのバックには五反田氏がいるので、何も言いません。


「そんな事はないですよ、なぎささん。ここにいる女性は全員美人じゃないですか」


 外藤はタメぐちを利いたなぎさに笑顔で返しました。


 奈津芽も女性スタッフも、嬉しそうに外藤を見ました。


(まあ、俺の狙いは樹里さんと奈津芽ちゃんだけだけどな。後はブサイクだからどうでもいい)


 外藤は誰にも見られないようにニヤリとしました。


 今日は、樹里の役である壇野浦だんのうら美代みよが勤める会社で、外藤演じるトップの成績を続ける営業課のエースとの出会いのシーンの撮影があるのです。


 そして、互いに一目惚れした二人が、誰もいない給湯室でキスをするシーンもあります。


 夫の杉下左京が知ったら、半狂乱になるでしょうが、キスはするふりだけで、実際にはしません。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


(だが、俺は本当にする。それも濃厚なキスをな)


 外藤は台本にはない事をしようとしているのでした。只のエロオヤジだと思う地の文です。


 はてさて、どうなりますか。

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