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樹里ちゃん、左京に深刻な話をする

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドで、雑学王でもあるママ女優です。


 今日は樹里は仕事がお休みです。


 五反田氏が奥さんの澄子と娘の麻耶を連れて、ヨーロッパ一周旅行に出かけているからです。


 そのせいで、ドロント一味も一緒に休暇をとり、出かけています。


「ドロント一味ではありませんから! それに別々に出かけていますから!」


 どこかで聞きつけた麻耶の家庭教師の有栖川倫子と、住み込み医師の黒川真理沙、更にレッサーパンダの母親が抗議の声をあげました。


「どうして私にだけもう一度ボケるのよ!」


 もう一人のメイドの目黒弥生が、粘着質な地の文に切れました。


 もちろん、弥生の事が特別に好きだからとは言えない地の文です。


「キモいからやめてー!」


 魂の叫びを発する弥生です。当然の事ながら、本命は今でも真理沙なのは内緒にしておく地の文です。


「お断わりします!」


 それを聞きつけた真理沙にきっぱりと拒絶され、今度こそ本当にお遍路の旅に出ようと思う地の文です。


 前振りが長くなりましたが、いつものように不甲斐ない夫の杉下左京は、いつものように仕事がなくて、フラフラしています。


「うるせえ!」


 容赦がない指摘をする地の文に切れる左京です。


「そうなんですか」


「そうなんですか」


「しょーなんですか」


 樹里と長女の瑠里と次女の冴里は笑顔全開で応じました。


「ルーサ、おさんぽにいくよ!」


「ワンワン!」


 瑠里は休みの日の日課となっているゴールデンレトリバーのルーサの散歩に出かけました。


「おねえたん、さーたんもいく!」


 冴里もたどたどしい足取りでお姉ちゃんについていきます。


 散歩とは言っても、広大な五反田邸の庭を歩くだけなので、安心です。


「しばらく拝見できない間に、お二人共大きくなられて、感動しております」


 門扉の間から、こっそりと覗いている犯罪者の皆さんです。


「違います!」


 犯罪者と思われた怪しい人物達は、もう降板したかと思われていた昭和眼鏡男と愉快な仲間達でした。


 顔を忘れてしまっていた地の文です。


「酷いです!」


 涙を流して、非情な事を言う地の文に抗議する眼鏡男達です。


 それでも、声の出演すらない保育所の男性職員の皆さんに比べれば、厚待遇だと思う地の文です。


「そうなんですか」


 それでも樹里は笑顔全開です。


「心配だから、二人について行くよ」


 毎日仕事がない左京が言いました。


「うるせえ!」


 正しい事を述べただけの地の文に理不尽に切れる左京です。


 まるで、○○○さんみたいだと思う地の文です。ちなみにヒントは漢字三文字です。


「左京さん」


 樹里が笑顔全開で瑠里達を追いかけようとした左京に声をかけました。


「何だい、樹里?」


 左京は微笑んで応じました。気持ち悪いのでやめて欲しいと思う地の文です。


「いちいちうるせえよ!」


 まるでどこかのチンピラのように凄んで地の文に切れる左京です。


「お話があります」


 樹里は更に笑顔全開で告げました。一瞬にして血の気が引いてしまう左京です。


「お・は・な・し・が?」


 最近、何かと話題な某五輪関係のボケを久しぶりにぶっ込んで来る左京です。


「そんなつもりはねえよ!」


 更に地の文に切れる左京ですが、樹里はすでに家に戻ってしまっていました。


「樹里ー!」


 恐怖のあまり、雄叫びを上げて樹里を追いかける左京です。


 多分、離婚の話だと思う地の文です。


「やめろー!」


 玄関のドアを勢いよく開いて泣きながら地の文に懇願する左京です


 


 左京は深呼吸をしてから、樹里が待つ居間に行きました。


 樹里はソファに座っています。目の前のテーブルには、緑の線で縁取られた紙がおごそかに置かれていました。


「嘘を吐くなー!」


 捏造を繰り広げる地の文に切れる左京です。


(一瞬、本当に離婚届かと思った……)


 左京は思いました。テーブルの上には、便箋が置かれていました。


 どうやら、誰かからの手紙のようです。


「ずっとアメリカに行っている父から手紙が届きました」


 樹里は笑顔全開で告げました。左京はホッとして向かいのソファに座り、


「そうなんですか」


 思わず樹里の口癖で応じました。


(樹里のお父さんて、アメリカで宇宙開発事業に携わっているんだっけ?)


 左京は以前樹里から聞いた事を思い出しました。


「仕事が一段落して、夏季休暇を取れたので、帰国するそうです」


 樹里は笑顔全開で続けました。左京は便箋を手に取って読もうとしましたが、バカなので読めません。


「違うよ! 英語で書いてあるから読めないんだよ!」


 苦しい言い訳をする左京です。


「そうなんですか」


 樹里はそれにも関わらず、笑顔全開です。


「ううう……」


 地の文の鋭い指摘に項垂れる左京です。


「左京さん」


 突然樹里が真顔で言いました。


「はい!」


 ビクッとしてソファの上で正座してしまう左京です。


「実は困った事がわかりました」


「困った事?」


 樹里が深刻な表情なので、心臓が壊れそうな程速く動き始める左京です。


(このままでは身体が保たない……)


 息苦しくなって来る左京です。もう一息だと思う地の文です。


「うるせえ!」


 それでも元気よく切れる左京です。


「父は一週間後に帰国すると書いています」


 樹里は便箋を見て言いました。TOEIC(国際コミュニケーション英語能力テスト)レベルAの樹里は難なく便箋に書かれた英語を読みこなしています。


 どう考えても、不釣り合いな夫婦だと思う地の文です。


「ううう……」


 床に四つん這いになって項垂れる左京です。


「その日は、母も璃里お姉さんも都合がつかず、私も瑠里と冴里を連れて、保育所の体験入園に行かなければならないのです」


「そうなんですか」


 涙ぐんで応じる左京ですが、ハッとなります。


「え? どういう事? もしかして?」


 嫌な予感がする左京です。樹里はもう一度笑顔全開になり、


「はい、左京さんに横田基地まで、父を迎えに行って欲しいのです」


「よ・こ・た・き・ち?」


 また五輪ボケをぶっ込む左京です。


「はい。父はアメリカ軍の要請で宇宙開発事業に携わっているので、日本に来る時は、いつも軍用機です」


 樹里は笑顔全開で告げました。


「そうなんですか」


 またしても、樹里の口癖で応じてしまう左京です。


 


 はてさて、どうなりますか。

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