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樹里ちゃん、お礼を言う

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドで、完全復帰したママ女優でもあります。


 京亜久きょうあく半蔵はんぞうという懐かしい登場人物の思わぬ活躍で、長女の瑠里は助け出されました。


「警視庁ですか? 神戸蘭警部をお願いします」


 半蔵は、瑠里を送って行く途中で、警視庁に連絡を取りました。


「神戸は結婚して、平井に姓が変わっています。失礼ですが、どちら様でしょうか?」


 オペレーターが尋ねました。


「そうですか、失礼しました。私は以前、平井警部にお世話になった京亜久半蔵と申します」


 半蔵が正直に名乗ると、オペレーターは、


「はいはい、そういう事にしておきますね。では、平井に取り次ぎますので、そのまましばらくお待ちください」


 完全になりすましだと思われた半蔵は、苦笑いしました。


「平井です。貴方はどなたですか?」


 電話を代わった蘭も、なりすましだと思っているようです。


「ですから、京亜久半蔵ですよ、平井警部。杉下左京元警部のお嬢さんの瑠里様を救出しました。今から、そちらにお連れします」


「え? どういう事?」


 何も知らない蘭は仰天しました。半蔵は蘭に事件の全貌を搔い摘んで説明しました。


「亀島君が、瑠里ちゃんを誘拐したの……」


 あまりの嬉しさに言葉を失う蘭です。


「感情表現がおかしいでしょ!」


 喜怒哀楽を混同している地の文に切れる蘭です。


「どうしてわざわざ警視庁こっちに連れて来るの? 貴方、自分が指名手配犯だってわかっているでしょ?」


 蘭は半蔵の行動に疑問を覚えて問い質しました。すると半蔵は、


「もちろん、わかっています。ですが、亀島の行動を見ていて、わかったんです。逃げ回っている自分は、亀島と同じなのではないかと」


 あまりに真っ当な発言をする半蔵に衝撃を受ける地の文です。


 このお話は、いい加減でふざけた内容なので、そういうのはいらないと思う地の文です。


「本当にそれでいいの? 左京に対する殺人未遂や銃刀法違反等で、前回より罪は重いから、当分出て来られないわよ」


 何故か半蔵の事を気遣ってしまう自分に驚く蘭です。


「はい。自分はそれだけの事をしたのです。仕方ありません」


 半蔵は自嘲気味に言いました。


 そして、半蔵は眠っている瑠里を抱いて警視庁に出頭し、その場で逮捕されました。


 半蔵から亀島が気絶している廃ビルの場所を聞き出した蘭とその夫である平井拓司警部補は、機動隊員を引き連れて、現場に急行しました。


 亀島は気絶したまま護送車に乗せられて、警視庁に連行されました。


 半蔵は取り調べを受けた後、留置場に収監され、大人しくしていました。


 


 しばらくして、蘭と平井警部補がやって来ました。


「面会よ」


 蘭が言ったので、半蔵はハッとしました。自分には身内はいません。天涯孤独です。


 一体誰が会いに来たのだろう? 以前所属していた組は解散させられ、当時の組員達も連絡が取れなくなっているのです。


 思い当たる人物がいないので、首を傾げたまま面会室に行くと、頑丈なアクリル板の向こうにいたのは、左京と樹里と瑠里でした。


「ありがとうございました、京亜久さん。貴方がいなければ、瑠里はどうなっていたか、わかりません」


 樹里が涙ぐんで頭を下げたので、半蔵はドキッとしました。


「俺からも礼を言うよ。俺が憎いはずなのに、娘の瑠里を助けてくれてありがとう」


 左京も頭を下げました。


「おじちゃん、ありがとね。いつか、あそびにきてね」


 瑠里が笑顔全開で言うと、半蔵は涙を零してしまいました。


「はい、いつか、遊びに行きます。その頃は、瑠里様もご結婚されているでしょうね」


 半蔵の思ってもみない言葉に左京もウルッとしてしまいました。


(瑠里が結婚……)


 遠い将来を妄想して涙ぐむバカ左京です。


「うるせえ!」


 容赦のない地の文に切れる左京です。


「そうなんですか」


 樹里は涙を浮かべながらも、笑顔で応じました。


「今度こそ、真っ当な人間になって、皆さんにお会いしたいと思っています」


 半蔵は立ち上がって深々と頭を下げました。


 つい涙ぐんでしまう地の文です。


「お待ちしていますね」


 樹里が笑顔全開で応じました。


「まってるね」


 瑠里も笑顔全開です。


「待ってるよ」


 左京は苦笑いして応じました。


 


 一方、ようやく意識を回復した亀島は取調室に連れて行かれ、蘭と再会しました。


「こんな形で再会するなんて思ってもみなかったわ、亀島君」


 蘭は悲しそうに言いました。すると亀島はニヤリとして、


「私もですよ、平井警部」


 そのふてぶてしい顔を見て、蘭は切れました。


「あんたね! どこまで腐っているのよ! いつまで左京に逆恨みを続けるつもりなの!? このままだと、本当に取り返しがつかなくなるわよ!」


 涙を浮かべて亀島の襟首をねじ上げる蘭を、平井警部補が止めました。


「蘭さん、暴力はいけません」


 蘭はキッとして夫を睨みつけてから、仕方なさそうに亀島の襟を放しました。


「貴女に心配してもらう筋合いはないですよ、平井警部。貴女だって、樹里さんに杉下さんを取られて、悔しかったんでしょう?」


「何ですって!?」


 また切れた蘭が亀島に掴みかかろうとしましたが、平井警部補が寸前で止めました。


「私にはもう何も残っていないんですよ。この先どうなろうと、知った事ではないんです」


 亀島はニヤついてそう言い放ちました。蘭は歯軋りして彼を睨みつけました。


「何を偉そうな事言ってるんだ、このボケナスが!」


 すると、いきなりドアを開いて、年配の女性が入って来ました。


「母ちゃん!」


 亀島は仰天しました。それはずっと以前、声だけの出演をした事がある母親だったのです。(樹里ちゃん、亀島馨の彼女になる?参照)


「このひょうろく玉め、どこまで親に迷惑かければ気がすむんだ!」


 蘭と平井警部補が止める間もなく、亀島は母親の往復ビンタの洗礼を受け、床に倒れました。


「このこの!」


 母親が馬乗りになって亀島をビンタしまくるのを呆然として見ている蘭と平井警部補です。


 


 めでたし、めでたし。

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