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樹里ちゃん、引越しをする

 御徒町樹里は、日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドで、映画監督もこなすママ女優でもあります。


 樹里が、刑期を終えて出所した亀島馨につきまとわれた事を知った五反田氏は、


「樹里さんの家族を邸の離れに引越しさせよう」


 愛娘の麻耶の家庭教師である怪盗ドロントの助言を受けて決断しました。


「私は有栖川ありすがわ倫子りんこです!」


 地の文のほんのちょっとしたつかみ的なジョークに激ギレする心の狭い倫子です。


「狭くて申し訳ないのだが、その方が安全だろう」


 五反田氏は、同じ敷地内にある以前住み込みメイドだったキャビーが住んでいたメイド用の家屋を使うように言いました。


「私は目黒弥生です!」


 同じく激ギレする気が短い弥生です。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


 不甲斐ない夫の杉下左京も、草葉の陰で喜んでいる事でしょう。


「俺は生きているぞー!」


 亀島にがされた睡眠ガスのせいで未だに眠ったままなのに、左京は地の文のボケを聞きつけて、ベッドの中で切れました。


「瑠里ちゃんは、黒川真理沙先生が迎えに行ってくれたから、心配しなくても大丈夫よ、樹里さん」


 奥さんの澄子が樹里に微笑んで言いました。


「ありがとうございます、旦那様、奥様」


 樹里が深々と頭を下げてお礼を言うと、五反田氏は苦笑いをして、


「前回、亀島が邸の前に現れた時に手を打っておけば、ご主人も被害に遭わずにすんだのだから、申し訳ないと思っているんだ。礼なんてとんでもないよ」


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


 


 黒川真理沙ことヌートは、五反田グループのトラックを運転し、瑠里を迎えに行くと、その帰路に、アパートに立ち寄り、同行していた警備員さん達と樹里達の家財道具一式を運び出しました。


「瑠里ちゃん、今度から、麻耶ちゃんのおうちで暮らすのよ」


 地の文のボケを軽くスルーした真理沙が笑顔で告げると、


「そうなんですか」


 瑠里は笑顔全開で応じました。地の文は落ち込み全開です。


「今度から、保育所には私が送り迎えするから、安心してね」


 真理沙が言うと、瑠里は悲しそうな顔になり、


「パパは?」


「え?」


 ドキッとしてしまう真理沙です。


(瑠里ちゃんは左京さんとの通園が楽しみだったのね。どうしよう?)


 左京の死を瑠里の伝えるのを躊躇ためらってしまう真理沙です。


「だから、俺は死んでねえよ!」


 左京はまだ眠ったままで切れました。


 何の役にも立っていないのですから、ストーリー的には死んだも同然だと思う地の文です。


「ううう……」


 眠りながら項垂れるという高等技術を駆使する左京です。


(左京さんには遠回りになるけど、瑠里ちゃんとのひと時も貴重よね)


 真理沙はそう思って、


「じゃあ、パパが送り迎えをするようにお願いしておくね」


「そうなんですか」


 樹里とほぼ同じ笑顔で応じる瑠里を見て、若干顔を引きつらせる真理沙です。


 こうして、樹里一家は無事に五反田邸に引越しをすませました。


 但し、左京は全く何もしていないのは秘密です。


「全然秘密にしてねえだろ!」


 ようやく目を覚ました左京が地の文に本日三度目の激切れです。


 


 そして、翌日の朝です。


「では、行って来ますね、左京さん、瑠里」


 五反田邸の広大な庭の端にあるメイド用の家の玄関で、樹里は笑顔全開で言いました。


 冴里もベビーカーで笑顔全開です。


 メイド用の家から、五反田邸までは徒歩で五分です。


「じゃあ、俺達も出かけようか、瑠里」


 左京は瑠里とのドライブが嬉しくて、ウキウキしています。


「うん、パパ」


 瑠里も車でお出かけは嬉しいようです。


 左京の車はメイド用の家の脇にある駐車場にあるので、いつもより楽をしている左京です。


「樹里さん、おはようございます」


 エロメイドが邸の玄関で挨拶しました。


「まともな紹介をしてよ!」

 

 今回は二度目の地の文のボケなので、だるそうに切れる弥生です。


「おはようございます、弥生さん」


 樹里は名前ボケをしないで挨拶しました。冴里は笑顔で手を振りました。


「おはよう、冴里ちゃん。もうすぐお話できそうね。そしたら、颯太そうたと仲良くしてね」


 何故かレッサーパンダの事を言い出す弥生です。


「颯太は私の子供です!」


 風太と間違えている地の文に本気で切れる弥生です。


 大人気おとなげないと思う地の文です。


「どっちがよ!」


 更に切れる弥生です。


「そうなんですか」


 それでも樹里は笑顔全開です。

 

 


 その頃、そんな事になっているとは夢にも思っていない昭和眼鏡男と愉快な仲間達は、亀島の睡眠ガス攻撃に対抗するためにガスマスク持参でJR水道橋駅に降り立ちました。


 警戒しながら、樹里がいたアパートへ向かった眼鏡男達ですが、亀島は現れませんでした。


 そして、樹里達が住んでいた部屋がもぬけからになっていたので、凍りついてしまいました。


「樹里様ー、瑠里様ー、冴里様ー!」


 雄叫びをあげる眼鏡男達です。


(何をやっているんだ、あいつらは?)


 その様子を遠くから観察している保育所の男性職員の皆さんは、瑠里が車で来るのを女性職員の皆さんに教えてもらっていないという仕打ちを受けていました。


(思った通りだ。想定内だよ)


 更にそれを離れた場所から見ているのは、亀島でした。


(瑠里ちゃんはお友達がいるから、保育所を替えないと推測したのが当たったな。これで計画は決まった)


 亀島は狡猾な顔で笑いました。


 さてさて、どうなるのでしょうか?

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