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樹里ちゃん、自伝映画の第三弾を宣伝する

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドで、テレビ局にも引く手数多のママ女優でもあります。


 今日は、樹里は自伝の映画の第三弾の宣伝のために日本で最初の民間放送局であるテレビジャパンに来ています。


 そんな展開なので、不甲斐なさだったら世界レベルの夫の杉下左京も、昭和眼鏡男と愉快な仲間達も、保育所の男性職員の皆さんも、声の出演もありません。


「樹里さん、ドキドキして来ました」


 局のエントランスで、エロメイド担当の目黒弥生が言いました。


「エロメイド担当って何よ!」


 地の文の会心のボケに鋭く突っ込む弥生です。


「またあの子、誰もいない方を向いて叫んでいるわね。症状が改善していないんじゃないの?」


 何故か有栖川倫子こと怪盗ドロントも来ています。


 父兄同伴という事でしょうか?


「誰が保護者だ!」


 倫子と弥生が揃って地の文に切れました。


(首領にも幻聴が聞こえているのね)


 それを呆れた顔で見ている黒川真理沙ことヌートです。


「そうなんですか」


 樹里はそれでも笑顔全開で授乳中です。


「樹里さん、授乳は控え室でお願いします」


 ADの女の子が焦って言いました。


「そうなんですか」


 それにも関わらず、樹里は笑顔全開で授乳を終えました。


「ドロント一味を演じられた皆さんは、樹里さんと加古井さんの後ろで微笑んでいるだけですから、心配要りませんよ」


 牛乳瓶の底みたいな眼鏡をかけたガリガリのディレクターが言いました。


「そうなんですか」


 樹里の口癖で応じる本物のドロント一味です。


「それは言っちゃダメ!」


 揃って地の文に突っ込む倫子と真理沙と弥生です。


 そして、樹里達は朝の情報番組が放送されるスタジオに入りました。


「朝早くからありがとうございます。私、この番組の総合司会を務めます、漏斗じょうご一太いちたと申します」


 きっちり七三分けの真面目が服を着ているような男性アナウンサーが挨拶しました。


(わあ、本物の漏斗アナだ!)


 ミーハーが服を着て歩いているような弥生は、漏斗アナのファンのようです。


 夫の祐樹に言いつけましょうか?


「別に大丈夫だもん」


 弥生は強がりを言いました。つまらないので、何もしない地の文です。


「よろしくお願います」


 倫子が弥生を押しのけて漏斗アナに急接近しました。


「よ、よろしくお願いします……」


 顔が近い倫子に嫌な汗を掻く漏斗アナです。おばさんは嫌いのようです。


「おばさん言うな!」


 耳だけは達者な倫子が地の文に切れました。


(首領も症状が悪化しているわ……)


 苦笑いして見ている真理沙です。


 


 そんなこんなで、番組の放送が始まりました。


「皆さん、おはようございます。今日も始まりました、取れ立て情報生番組、ザット。司会の漏斗一太です」


「同じく、浦見うらみ益代ますよです」


 福々しい容姿の女性アナウンサーが笑顔で言いました。


「今日は私、いつもより張り切っています」


 漏斗アナが言いました。すると浦見アナが、


「え? どうしてですか?」


 実にわざとらしい質問をしました。寒気がする地の文です。


「私は台本どおりに喋っているだけです!」


 細かい事が気になってしまう地の文に切れる浦見アナです。


「実は、今日は、今注目の映画の『樹里伝説III』に出演されている御徒町樹里さん、加古井かこいおさむさん、そして、有栖川倫子さん、黒川真理沙さん、目黒弥生さんが来てくださっているからなんですよ!」


 更に大袈裟に言ってのける漏斗アナです。演技力がなさ過ぎだと思う地の文です。


 パッとカメラが切り替わると、樹里達が映りました。


 笑顔で会釈をする加古井理と倫子と真理沙と弥生ですが、樹里は授乳全開です。


 ディレクターが慌ててカメラを漏斗アナ達に戻させました。


「樹里さん、授乳は控え室でお願います」


 ADの女の子が涙ぐんで言いました。


「そうなんですか」


 樹里はそれでも笑顔全開で応じました。女の子が満腹になって眠ってしまった次女の冴里を抱き、スタジオの外に行きます。


 それを顔を引きつらせて見ている樹里以外の面々です。


「只今、お見苦しい点がありました事をお詫び致します」


 漏斗アナが真顔で謝罪しました。隣で黙って頭を下げる浦見アナです。


「さて、改めまして、皆さん、ようこそいらっしゃいました」


 漏斗アナが言いました。樹里達はそれぞれ会釈をしました。


「樹里さん、ご自分の自伝の映画化で、ご自分自身として出演された感想をお伺いしていいですか?」


 漏斗アナが尋ねました。


「いいですよ」


 樹里は笑顔全開で応じました。漏斗アナは微笑んで頷き、


「如何でしたか?」


「自分の人生を辿り直したような気がして、感慨深いものがありました。こういう体験は、なかなかできるものではありませんから、本当に嬉しかったです」


 樹里が笑顔全開でまともな事を言ったので、転けようとしていた加古井と弥生は逆の意味で転けそうです。


(樹里ちゃん、そんなまともなコメントしたら、困るな)


 苦笑いしている弥生です。


(樹里さん、そんな貴女も素敵です。ますます好きになりました)


 加古井はスケベ俳優の面目躍如な感想を持ちました。


「誰がスケベ俳優だ!」


 加古井は真相を暴露した地の文に切れました。


「皆さん、是非観てください」


 樹里はそれにも関わらず、笑顔全開で言い添えました。




 めでたし、めでたし。

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