御徒町樹里ちゃんがゆく

探偵編

樹里ちゃん、お散歩番組に出演する

　御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドで、今やテレビ番組に引っ張りだこのママ女優でもあります。

　今日も樹里は、笑顔全開で次女の冴里をベビースリングで抱き、出かけます。

「行ってらっしゃい」

　不甲斐ない夫の杉下左京が、いつものように項垂れて言いました。

「いってらっしゃい、ママ」

　長女の瑠里が笑顔全開で言いました。

「行って来ますね、左京さん、瑠里」

　樹里は笑顔全開で応じました。

「樹里様と瑠里様と冴里様にはご機嫌麗しく」

　昭和眼鏡男と愉快な仲間達がいつものように現れました。

「おはようございます」

　樹里が挨拶しました。

「おはよう、たいちょう」

　瑠里が挨拶しました。冴里が笑顔で眼鏡男達を見ました。

「おおお！」

　久しぶりに樹里母子の三重奏を観た眼鏡男達は、感動に打ち震えました。

　無駄に大袈裟だと思う地の文です。

　そして、例の如く、樹里達は何事もなく、目的地に着きました。

「では、樹里様、お帰りの時にまた」

　眼鏡男達は敬礼して去りました。

　今日はテレビ江戸の番組の収録がありますので、江戸タワーのそばにある局の建物に樹里達は来ました。

「樹里さん、お久しぶり！」

　そこへ、お笑いコンビのうぃんたーずがやって来ました。

　髪が長いのが下柳誠、坊主頭なのが、丸谷一男です。

「お久しぶりです」

　樹里は笑顔全開で、授乳も全開です。

　むっつりスケベな下柳は顔を背けて目だけで見ました。

　そのままスケベな丸谷は樹里のマシュマロを凝視しました。

「樹里さん、授乳はロケバスの中でお願いします！」

　ＡＤの女の子が焦って樹里の壁になりながら言いました。

「そうなんですか」

　樹里はそれでも笑顔全開です。

　チッと舌打ちするうぃんたーずです。

「本日はよろしくお願いします」

　そこへ担当のディレクターとアナウンサーが来ました。

「テレビ江戸のアナウンサーの江藤さつきです」

　丸顔童顔の女子アナが挨拶しました。

「よろしくお願いします」

　樹里は授乳を終了しながら言いました。江藤アナは、そのマシュマロの大きさに目を見開きました。

　私の三倍はあると思ったようです。

「そんなに違いません！」

　勝手に分析した地の文に抗議する江藤アナです。

（どうしたんだ、江藤？）

　うぃんたーずとディレクターは、誰もいない空間に向かって叫ぶ江藤アナを見て首を傾げました。

　そして、ロケバスで移動した樹里達は、五反田邸がある世田谷区成城に到着しました。

　樹里は無駄に動いたと思う地の文です。

「どうも、うぃんたーずです。うぃんたーずの一歩二歩散歩、始まりました」

　下柳と丸谷が挨拶しました。

「どうも、テレビ江戸アナウンサーの江藤さつきです」

　江藤アナが挨拶します。そして、樹里を紹介するはずなのですが、樹里がいません。

「え？　あれ？」

　三人でアタフタして樹里を探すと、彼女は近くのラーメン屋の大将と話していました。

　どうやら、顔見知りのようです。

「最近、法ちゃんと律ちゃんが全然来てくれなくてさ。寂しいんだよね」

　内輪ネタを言う大将です。店の名前は「麺道場」だと思う地の文です（拙作：殺人プール参照）。

「そうなんですか」

　樹里は笑顔全開で応じました。

「ああ、いらっしゃいました、ゲストの御徒町樹里さんです！」

　江藤アナが嫌な汗を掻きながら、樹里を紹介しました。

「俺達、他局だけど、樹里さんと会ってるんだよね」

　ストレートなスケベの丸谷が嬉しそうに言いました。

「そうそう」

　むっつりスケベな下柳は無関心そうに応じました。

「ああ、そうなんですか。では、お二人とはお友達ですね？」

　江藤アナが樹里に言うと、

「そうなんですか」

　微妙な返事をしました。顔が引きつるうぃんたーずと江藤アナです。

「こちら、世田谷区成城は、樹里さんが普段お仕事をされている五反田邸があるんですよね？」

　江藤アナが気を取り直して樹里に言いました。

「はい」

　樹里は笑顔全開で応じました。

「へえ、凄いとこで働いているんだね、樹里さん。給料は月にいくらくらいもらっているの？」

　下柳が冗談で尋ねると、樹里は、

「○○○万円です」

　具体的な数字を答えてしまいました。樹里の好感度のために伏せ字にする地の文です。

　うぃんたーずは仰天して口を開いてしまい、江藤アナは泣きそうです。

　以前よりもらっているので、夫の左京が聞いていたら、血の涙を流すと思う地の文です。

（五反田邸、すげえ……）

　ディレクターは樹里を大事にしようと決意しました。

「と、取り敢えず、こちらに行ってみましょう」

　ディレクターからの急な段取り変更指示により、一行は五反田邸に向かいました。

　媚び媚びだと思う地の文です。

「え？」

　見えて来た五反田邸を見て、また驚愕するうぃんたーずと江藤アナです。

（塀の終わりが見えない……）

　通りのずっと向こうまで高さ五メートルの塀が続いているのです。

「凄いですねえ、ここ、誰のお邸ですかね？」

　下柳が惚けて言いました。すると、

「こちらが、日本有数の大富豪の五反田六郎様のお邸ですわ」

　呼ばれてもいないのに、ドロント一味が登場しました。

「違うわよ！」

　地の文の会心のボケに突っ込みを入れる有栖川（ありすがわ）倫子（りんこ）と目黒弥生です。

　その後ろで、黒川真理沙が苦笑いしています。

「おお、綺麗なお姉さん達が登場だ」

　丸谷が言いました。すると倫子がニコニコして、

「ありがとうございます」

「あ、お母さんはちょっと下がっていてください」

　丸谷が言いました。

「誰がお母さんだ！」

　倫子が丸谷の首を絞めました。

「ああ、倫子さん、ダメですよ！」

　慌てて止める真理沙と弥生です。

　下柳と江藤アナは苦笑いしています。

（うん、これはこれで面白いかも知れない）

　何故か納得して大きく頷いているディレクターです。

「そうなんですか」

　樹里は笑顔全開です。

　めでたし、めでたし。