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樹里ちゃん、芸能人の祭に参加する(前編)

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドで、日本有数のママ女優でもあります。


 今日も樹里は、次女の冴里をベビースリングで抱き、笑顔全開で出勤します。


「いってらっしゃい、ママ」


 長女の瑠里が笑顔全開で言いました。


「行ってらっしゃい」


 不甲斐ない夫の杉下左京も項垂れ全開で言いました。


「行って来ますね、左京さん、瑠里」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「樹里様と瑠里様と冴里様にはご機嫌麗しく」


 そこへいつものように全く役に立っていない事が判明した昭和眼鏡男と愉快な仲間達が来ました。


「ううう……」


 直球勝負が好きな地の文の猛攻に項垂れる眼鏡男達です。


「本日はいつもとは違う出勤コースと伺いました。準備は万端ですので、ご安心ください」


 眼鏡男が素っ頓狂な事を言い出しました。


「素っ頓狂ではありません! 今日、樹里様は大東京テレビ放送に行かれるのです! テレビ夕焼ではないのです!」


 眼鏡男はここぞとばかりにストーカーぶりをアピールしました。


「ストーカーではありません!」


 更にヒートアップして抗議する眼鏡男ですが、


「はっ!」


 我に返り、周囲を見渡すと、予想通り、樹里達はいませんでした。


「でも大丈夫です。場所はわかっていますから」


 ドヤ顔で言う眼鏡男です。親衛隊員達は拍手で眼鏡男を讃えました。


 ところが、大東京テレビ放送は、今年から住所が変わった事を知らない眼鏡男です。


 そして、知っているのに教えない地の文です。


 


 樹里達は何事もなく五反田にある大東京テレビ放送に着きました。


 眼鏡男達の降板がまた一歩前進したと思う地の文です。


「樹里様、冴里様、どちらですかー!?」


 迷子になった眼鏡男がどこかで叫びました。


「お待ちしていました、御徒町さん」


 そこへ現れたのは、大東京テレビ放送の一番人気の男性アナウンサーの安掛あんかけ一郎いちろうです。


 好感度ナンバーワンですが、実は腹黒いと噂です。


「デマはやめてください!」


 週刊誌を毎週全誌読んでいるゴシップ好きの地の文に抗議する安掛です。


「では、御徒町さんにはDTB開局六十周年感謝祭のオープニングを飾る芸能人駅伝に参加していただきますので、こちらへどうぞ」


 安掛は樹里を人気のない方へと連れて行きます。


 誘拐するのでしょうか?


「違います! スタート地点にご案内しているんです!」


 地の文のちょっとしたジョークにもすぐに切れる腹黒アナウンサーです。


「腹黒はやめろ!」


 安掛はしつこい地の文に更に切れました。


「御徒町さん、ようこそ、DTBへ」


 そこへ感謝祭のプロデューサーがやって来ました。


 テレビ夕焼のプロデューサーと違って、薄いのは手の指紋ではなく、髪のようです。


「おい、今、カツラとか言わなかったか?」


 プロデューサーは少しズレている髪を修正して、安掛に詰め寄りました。


「言ってませんよ」


 安掛はビクッとして言いました。心の中で罵っていただけです。


「何だと!?」


 プロデューサーは安掛の顔を睨みつけました。


「何も言ってませんよ」


 嫌な汗を大量に掻いて見え透いた言い訳をする安掛です。


「そうなんですか」


 樹里はそれでも笑顔全開です。


 


 そして、お約束のその場で着替えようとする樹里のボケを挟み、放送が始まりました。


 朝の八時から夜の九時までの長丁場です。


「皆さん、おはようございます。DTBアナウンサーの安掛一郎です。今日は開局六十周年記念番組の総合司会を仰せつかりました。これから十三時間、よろしくお願い致します」


 いつものようにまるで心がこもっていない愛想笑いで告げる安掛です。


 そこへ、樹里の自伝の映画の第三弾に出演する稲垣いながき琉衣るい貝力かいりき奈津芽なつめ、そして、スケベ俳優の加古井かこいおさむが樹里と共に登場です。


「誰がスケベ俳優だ!」


 地の文のボケに見事に反応して切れる加古井です。


 本当は樹里の親友の松下なぎさが走る予定でしたが、妊娠がわかったので、スケジュールが空いていた加古井が代わりに出場する事になりました。


「そんな裏事情、教えないでくれ!」


 涙ぐんで地の文に抗議する加古井です。


「それでは、この番組のオープニングを飾る五反田一周駅伝大会に出場してくださる皆様方をご紹介致します」


 安掛は作り笑い全開で樹里達に近づきました。


「まずは、メイド探偵シリーズの劇場版の大ヒットで一躍有名になったにも関わらず、出産子育てに専念するために一度芸能界を引退した御徒町樹里さんが華麗に復活され、ご自身の自伝の映画に出演されました。そして、その第三弾の宣伝を賭けて、この駅伝に出場します」


 安掛がマイクを樹里に向けました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。安掛は樹里がまともに受け答えしてくれないのを大学が同期のテレビ夕焼の松尾彩アナから聞いているのです。


 二人はどうやら付き合っているようです。


「つ、つ、付き合ってなんかいないぞ!」


 あからさまに動揺するわかり易い安掛です。


「さて、続きましては、我がDTBが社運を賭けて製作した日米合作ドラマ『金門橋ゴールデンゲートブリッジ』の出演者の皆さんです」


 そこには、樹里の事務所の先輩である竹林たけばやし由子ゆうこ下戸しもと那奈なな浅田あさだ涼子りょうこがいました。


 三人共、樹里に敵意剥き出しです。


 そして、もう一組は売れない芸人チームなので、容赦なく紹介を省略する安掛です。


 雄叫びを上げる芸人チームを俯瞰からカメラが写し、CMです。


 そして、ここで前編だと知った地の文です。

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