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樹里ちゃん、五反田氏と相談する

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 今日も樹里は次女の冴里さりをベビースリングで抱き、長女の瑠里と手を繋いで、出勤します。


 不甲斐ない夫の杉下左京は、上から目線作家の大村美紗の依頼を受け、美紗の娘のもみじの交際相手を調査する事になり、朝早くから出かけています。


 設定ではそういう事になっていますが、実は降板させられたのは内緒です。


「ふざけるなー!」


 日本捏造王の称号を持つ地の文の作り話にどこかで切れる左京です。


「そうなんですか」


「しょーなんですか」


 それでも樹里と瑠里は笑顔全開です。冴里も笑顔全開です。


「樹里様と瑠里様と冴里様にはご機嫌麗しく」


 いつものように昭和眼鏡男と愉快な仲間達が登場しました。


 衣替えをすませ、こざっぱりとした眼鏡男達です。


(以前の服装を全く描写されていないのにどうしてなのだ?)


 唐突な季節の表現をした地の文に戸惑いが隠し切れない眼鏡男達です。


「おはようございます」


「おはようござましゅ」


 樹里と瑠里は笑顔全開で挨拶しました。冴里も眼鏡男達を見ました。


「おお!」


 歴史的瞬間に立ち会えた喜びを噛みしめる眼鏡男達です。


(相変わらずおかしな連中だ)


 それを電柱の陰から観察して嘲笑っている保育所の男性職員の皆さんです。


 世に言う「目くそ鼻くそを笑う」だと思う地の文です。


「どっちが目くそですか!?」


 妙な突っ込みをする男性職員の皆さんです。


「おはようございます」


 そんな醜態をしっかり樹里に見られてしまいました。


「お、おは、おは、おはよう、ご、ございます!」


 動揺し過ぎだと思う地の文です。


「おはよ、しぇんせい」


 瑠里が言いました。


 そして、瑠里は増員された親衛隊員二人と共に保育所に向かいました。


 遠目に見ると、誘拐犯にしか見えない親衛隊員と男性職員の皆さんです。


「そうなんですか」


 樹里は冴里と笑顔全開です。


 


 そして、いつものように樹里達は何事もなく五反田邸に到着しました。


「おはようございます、樹里さん、冴里ちゃん」


 エロエロメイドの目黒弥生がやって来て挨拶しました。


「何でエロが増えてるのよ!?」


 上機嫌に切れる弥生です。何故なら、黒川真理沙より出番が多いからです。


「ち、違うわよ!」


 図星を突かれて焦る弥生は可愛いと思う地の文です。


「キモ」


 露骨に嫌われてしまい、絶望に打ちひしがれる地の文です。


「そうなんですか」


 それでも樹里と冴里は笑顔全開です。


「旦那様がお待ちです」


 苦笑いして告げる弥生です。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


 


 いつもとは違い、五反田氏が待つ書斎に紅茶を淹れて訪れる樹里です。


「おはようございます、旦那様」


 樹里は深々とお辞儀をして部屋に入りました。


「おはよう、樹里さん。忙しいのに悪いね」


「いえ、大丈夫です」


 五反田氏が黒革のソファに座り、樹里も紅茶を五反田氏に出してから向かいのソファに座ります。


「時間がないので、単刀直入に話を始めるよ、樹里さん」


 五反田氏が言うと、


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「実は、大村美紗先生に作家生活三十周年記念の式典に招待されたんだよ」


 五反田氏は困った顔で言いました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。何年かぶりに樹里にイラッとした五反田氏ですが、


「同じ日になぎさちゃんの結婚式があるんだよね。どうしたものかと思ってね」


 腕組みをしました。樹里は笑顔全開のままで、


「そうなんですか」


 また少しイラっとする五反田氏です。


「なぎささんの結婚式には奥様にご出席いただけばよろしいかと思います」


 樹里は突然真顔になって告げました。しかし五反田氏は、


「そういう訳にもいかなくてね。なぎさちゃんに祝辞を頼まれているんだよ」


「では、大村先生の式典の方に奥様にご出席いただけばよろしいと思います」

 

 またしても真顔で告げる樹里ですが、五反田氏は苦笑いして、


「式典には私だけ招待されているんだよ。妻を代理で出席させたりしたら、気難しい大村さんの事だから、機嫌を損ねると思ってね」


「そうなんですか」


 樹里は深刻そうな顔で応じました。その顔に慣れていない五反田氏はドキッとしました。


「失礼致します」


 そこへ五反田氏の愛娘の麻耶の家庭教師という表の顔を持つ有栖川ありすがわ倫子りんこことドロントが入って来ました。


「余計な解説を入れないでよね!」


 丁寧がモットーの地の文にイチャモンをつける倫子です。そして、五反田氏に近づいて微笑み、


「大村先生の件ですが、私にお任せいただけませんか?」


「は?」


 五反田氏はキョトンとしました。


「そうなんですか」


 樹里はようやく笑顔全開に戻りました。倫子は真顔になって、


「旦那様はご存知かと思いますが、私は実は怪盗ドロントなのです」


 突然ビックリ仰天な告白をしました。


「そうなんですか」


 樹里が笑顔全開で応じたので、倫子はイラッとしました。


(貴女はずっと前から知ってたでしょ!)


 ところが、五反田氏は、


「いや、知らなかったよ。驚いたな。貴女のような美人で聡明な人が泥棒だなんて……」


 結構白々しいと思う事を言いました。五反田氏に「美人で聡明」と言われ、赤くなる倫子です。


「お誉めにあずかり、光栄です」


 気を取り直して話を始める倫子です。


「私が旦那様に変装して、大村先生の式典に出席致します。旦那様はなぎさ様の結婚式にご出席ください」


「そ、そうかね……」


 五反田氏は倫子の衝撃の告白に驚いているのか、曖昧な返事をしました。


「それがすんだら、私はここを去ります。黒川真理沙も私の部下のヌートなのです」


 倫子は真顔で告げました。


「そうなんですか」


 にも関わらず、笑顔全開で応じる樹里です。


「そ、そうなのか……」


 五反田氏は呆然としたままです。


「では、失礼致します」


 倫子は寂しそうな笑みを浮かべて、書斎を出て行きました。


(首領は私の事を話さなかった……)


 こっそり聞いていた弥生ことキャビーは複雑な心境です。


 はてさて、どうなりますか。

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