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樹里ちゃん、家族でお花見をする

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 今日は仕事がお休みの樹里は、愛娘の瑠里と共に近くの公園にお花見に出かける予定です。


 女性弁護士との長い不倫旅行から帰って来た不甲斐ない夫の杉下左京も辛うじて一緒です。


「不倫旅行なんかしてねえよ!」


 長期間のブランクをものともせず、切れ味鋭い突っ込みをする左京です。


「そうなんですか」


「しょーなんですか」


 樹里と瑠里は笑顔全開で応じました。


「樹里、体調はいいのか? 無理しないでくれよ」


 いよいよ来月に出産を控えた樹里を気遣う左京ですが、不倫相手の出産も気になります。


「だからそれはシリーズが違うだろ!」


 番外編の源氏物語の宣伝をちょこちょこ入れる地の文に切れる左京です。


「大丈夫ですよ」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「だいじょぶらよ、パパ」


 瑠里も笑顔全開で応じます。そして、


「はやくあいたいよ、あかちゃん」


 瑠里が樹里のお腹を撫でて言いました。


「そうですね」


 樹里が笑顔全開で応じると、老化現象で涙脆くなった左京は泣いてしまいました。


「うるせえ!」


 左京は涙を拭いながら、心ない一言を放った地の文に切れました。


「樹里様と瑠里様にはご機嫌麗しく」


 いつものように登場する昭和眼鏡男と愉快な仲間達ですが、今日はブルーシートを持っています。


 河川敷を追い出されたのでしょうか?


「我々にはきちんとした住居があります!」


 住所不定にしようとした地の文に眼鏡男達が声を揃えて切れました。


「お花見の場所取りは完璧です。心ゆくまでお楽しみください」


 眼鏡男が敬礼して言いました。


「そうなんですか。ありがとうございます」


「ありがとね」


 樹里親子に感謝され、天にも昇る気持ちになる眼鏡男達です。


(この人達はどうやって生計を立てているのだろうか?)


 左京は改めて眼鏡男達の神出鬼没さを恐れました。


 


 そして、今回は保育所の男性職員さんにも、エロメイドにも触れる事なく、樹里達は桜が見頃の公園に到着しました。


 もうすでにたくさんの人が桜を見て盛り上がっています。


「それでは樹里様、家族水入らずでお楽しみください」


 ブルーシートを敷き、食事と飲み物の準備を終えると、眼鏡男達は敬礼して立ち去りました。


 ご相伴にあずかろうとするような行為を一切せず、好感度を狙って来た眼鏡男達です。


「そのようなつもりは毛頭ありません」


 嫌味な事を言う地の文にも冷静に対応する眼鏡男です。


 これで好感度は三パーセントは上がったと思う地の文です。


「ううう……」


 背中で泣きながら去る眼鏡男達です。


「ありがとうございました」


「ありがとね」


 樹里親子にまたお礼を言われ、勇気がみなぎる眼鏡男達です。


(樹里と瑠里と花見か。いいもんだなあ)


 左京は瑠里と料理を並べる樹里を見てにやけました。


 相変わらずよこしまな事しか考えないエロ男です。


「違う!」


 地の文の指摘をすかさず否定する左京です。


「やっほー、樹里! お待たせ!」


 するとそこへ、船越なぎさと片平栄一郎がやって来ました。


「え?」


 親子水入らずの予定を突き崩された左京は呆然としました。


「樹里、なぎささん達を呼んだのか?」


 左京が小声で尋ねると、


「呼んでいませんよ」


 樹里は笑顔全開で応じました。左京の顔が引きつります。


「申し訳ありません、杉下さん。一緒でいいのですか?」


 腰の低い栄一郎が尋ねたので、


「もちろんですよ。お二人は家族同然ですから」


 心の中に米粒程もそんな思いを描いていない上っ面だけの左京が言いました。


「うるさいよ!」


 左京は千里眼クレヤボヤンスのように見抜いてしまう地の文に切れました。


「わーい、瑠里ちゃん、なぎさお姉ちゃんだよ!」


 なぎさが瑠里をいきなり高い高いしたので、左京と栄一郎が焦りました。


 当の瑠里はキャッキャと大喜びです。


「なぎささん、危ないからやめましょうよ」


 栄一郎が言いました。するとなぎさは、


「私達の子供が生まれた時のために練習台にしているんだから、いいでしょ?」


 何気に失礼な事を言いました。栄一郎は顔を引きつらせて、


「まだ先の事ですから」


 左京と樹里にすみませんと言いながら、なぎさから瑠里を受け取り、座らせました。


 ホッとする左京と、相変わらず笑顔全開の樹里です。


「そうなんですか」


 左京は瑠里を庇うように前に出て、


「お二人は今年結婚するんですか?」


 すると栄一郎は真っ赤になって照れましたが、なぎさはニヘラッとして、


「うん、そうだよ、松下さん」


 サラッと名字を間違えて応じました。左京は顔を引きつらせながら、


「杉下ですよ、なぎささん」


「あれ? そうだっけ? 占いで名字を替えたの?」


 アッケラカンとした顔で尋ねるなぎさです。


「いえ、生まれた時から杉下です」


 左京は頬の筋肉をピクピクさせながら言いました。


「そうなんだ。知らなかった」


 なぎさはケラケラ笑って言いました。固まりそうになる左京です。


「お待たあ!」


 するとそこへ、すでに出来上がっている雰囲気の樹里の母親の由里と、姉の璃里、そして真里、希里、絵里の三人の妹、更に三つ子の紅里くり瀬里せり智里ちり、それから璃里の長女の実里みりと次女の阿里ありが現れました。璃里は苦笑いしています。


 石化しそうになる左京です。


 更にその後ろから、由里の夫の西村夏彦と璃里の夫の竹之内一豊がたくさんのレジ袋を抱えてやって来ました。


「ああ、持ちますよ」


 何とか復活した左京が二人の荷物を半分受け取りました。


「おう、なぎさちゃん! お久!」


 由里がハイテンションな乗りで言いました。


「お久です、由里おばさん!」


 二人は何故かハイタッチをして盛り上がっています。


(こういうのもいいか)


 左京は一豊から缶ビールをもらい、思いました。


「そうなんですか」


「しょーなんですか」


 それでも樹里と瑠里は笑顔全開です。


 


 めでたし、めでたし。

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