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樹里ちゃん、ハリウッドからのオファーを受ける

 御徒町樹里は世界に躍進する五反田グループの創業者である五反田六郎氏の邸の専属メイドにして、世界的な大女優への階段を昇るシンデレラです。


 でも、お兄ちゃんはいません。


 今日はいつものように五反田邸に出勤です。


 但し、不甲斐ない夫の杉下左京は、どうした事か、昨日からアパートに帰っていません。


 きっと若い女性弁護士と浮気しているのだと推測する地の文です。


「してねえよ!」


 どこかのベッドに横になっている左京が地の文に切れました。


「ベッドに横になってなんかいねえよ!」


 図星を突かれて更に切れる左京です。


「図星じゃねえ!」


 止め処ない癇癪持ちです。もう無視する地の文です。


「そうなんですか」


 樹里はそれでも笑顔全開で愛娘の瑠里と手を繋いで出勤です。


「樹里様と瑠里様にはご機嫌麗しく」


 今回も登場でき、感無量の眼鏡男と愉快な仲間達です。


「おはようございます」


「おはよ」


 そっくり親子に挨拶され、更に倍返しな感無量の眼鏡男達です。


「意味がわかりません」


 眼鏡男はすぐに流行を追いかける節操のない地の文に小声で抗議しました。


 そして、樹里は瑠里と共に保育所を目指します。


「おはようございます!」


 カットされるのを恐れたのか、アパートから一分のところで登場した男性職員の皆さんです。


「おはようございます」


「おはよ」


 樹里と瑠里は笑顔全開で応じました。


(こいつら、絶対におかしい)


 眼鏡男達と職員さん達は互いにそう思いました。


 どっちも十分おかしいと思う地の文です。


「うるさい!」


 双方から鋭い突っ込みをもらい、今年最高の快感を得た地の文です。


「ママ、またね」


 瑠里は男性職員の皆さんが預かり、樹里はJR水道橋駅へと向かいます。


 親衛隊員の一人が職員さんに同行します。


 まだお互いを牽制し合っています。


「瑠里、いい子にしているのですよ」


 樹里は笑顔全開で言いました。


「おお!」


 母親フルスロットルの樹里に感銘を受け、涙する眼鏡男達です。


「そうなんですか」


 樹里はそれでも笑顔全開です。


 


 そして、いつものように何事もなく五反田邸に到着しました。


「では樹里様、お帰りの時にまた」


 眼鏡男達は敬礼して去りました。


「ありがとうございました」


 樹里は深々とお辞儀をしました。


「樹里さん、おはようございます」


 警備員の皆さんの挨拶を割愛するかのようにエロメイドの目黒弥生が言いました。


「エロメイドじゃないわよ!」


 名誉を毀損するような暴言を吐いた地の文に弥生は切れました。


 慰謝料を請求されても破産しているので気にならない地の文です。


「破産している事を気にしなさいよ!」


 弥生は地の文を心配してそう言いました。何だかんだ言っても、地の文の事が好きなようです。


「断じて違う!」


 弥生は、とある彗星帝国と戦った某進君のように激怒して異を唱えました。


 そして、呼吸を整えてから、


「旦那様がハリウッドの映画会社の方とお待ちです」


 興奮気味に告げました。エロい事を考えたのでしょうか?


「エロから離れろ!」


 弥生はしつこい地の文にもう一度フルアタックで切れました。


「そうなんですか」


 樹里はごく普通に笑顔全開で応じました。


 とうとうこの日が来ました。地の文が待ちわびた日です。


 渡米するにあたり、いよいよ離婚でしょうか?


「やめろー!」


 また聞き耳を立てていた左京が絶叫しました。洒落にならないのでやめておきましょう。


 


 樹里は五反田氏とハリウッドの映画会社の人が待つ応接間に行きました。


「おはようございます」


 樹里は深々と頭を下げて挨拶しました。


「おはよう、樹里さん。こちら、バーナーシスターズ映画のプロデューサーのベイブ・スパイダーさんだ」


 五反田氏が映画会社の人を紹介しました。


「オハヨウゴザイマス、樹里サン。初メマシテ」


 スパイダー氏は片言の日本語で挨拶しました。


 常々疑問だったのですが、何故外国の方の台詞はカタカナなのだろうと今更ながら思う地の文です。


「おはようございます。遥々おいでくださり、ありがとうございます」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「ホームラン記録が抜かれて残念でしたね」


 樹里が言いました。


「ソノベイブデハアリマセン」


 スパイダー氏は苦笑いして応じました。ボケが国際的になって来たと思う地の文です。


 五反田氏は顔を引きつらせました。


「私ハ貴女ノメイドトシテノ才能ト女優トシテノ才能ヲ高ク評価シテイマス」


 スパイダー氏の台詞は変換しにくくて大変だと思う地の文なので、ナレーションベースにします。


 スパイダー氏は樹里が出演した映画全作とテレビドラマ全話を観て、樹里の才能に惚れ込み、ハリウッド映画への出演依頼をするために来たそうです。


 そしてできるなら、今月中に渡米して、撮影に入って欲しいと言いました。


「どうするかね、樹里さん? 私の邸は弥生さんがいれば大丈夫だと思うから、それは考えてくれなくていいよ」


 五反田氏が言いました。すると樹里は、


「もう少しお時間をください。まだメイド探偵の後編の映画の撮影が残っていますので」


 原作者の大村美紗が聞いたら、涙を流して喜ぶ事を言いました。


「ソレヲキャンセルシテ来テ欲シイノデス、樹里サン」


 スパイダー氏は美紗など見捨てて欲しいと願っています。


 激しく同意な地の文です。


「メイド探偵はその映画で完結します。待ってくださっているファンの皆様のためにも、そのような事は致しかねます」


 樹里はいつになく真顔で言いました。五反田氏は久しぶりに樹里の真顔を見たので驚いてしまいました。


 スパイダー氏は肩を竦め、


「ワカリマシタ。ソレデハ、今回ノ件ハナカッタ事ニシマスネ」


 そう言うと、ドスンドスンと床を踏み鳴らして部屋を出て行ってしまいました。


「申し訳ありません、旦那様。ご迷惑をおかけしてしまいました」


 樹里は五反田氏に深々と頭を下げて詫びました。すると五反田氏は微笑んで、


「樹里さんらしかったよ。もし、オファーを受けていたら、軽蔑していただろう」


 樹里はその言葉に感激し、涙ぐみました。


「ありがとうございます、旦那様」


 五反田氏も樹里の涙を見てウルッと来ていました。


 左京が登場しないといい話になると思う地の文です。


「余計なお世話だ!」


 最後まで切れているバカ左京です。


 


 めでたし、めでたし。

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