樹里ちゃん、メイド探偵の映画の宣伝をする
御徒町樹里は世界的大企業五反田グループの創業者である五反田六郎氏の邸の専属メイドにして、いよいよハリウッドが放っておかない女優でもあります。
今日は「メイド探偵は見た ご主人様、お別れの時です 前編」の宣伝のため、テレビ局に来ています。
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
キャスターの松尾彩アナが樹里と貝力奈津芽に挨拶しました。
「おはようございます」
樹里と奈津芽は笑顔全開で応じました。
今日は問題児の船越なぎさがいないので、ホッとしている松尾アナです。
「ばらさないでください!」
本音を語られてしまった松尾アナは顔を赤らめて抗議しました。
可愛いのでもっと切れて欲しいと思う変態の地の文です。
そして、油断は禁物だとも思う地の文です。
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
薄毛が気になっているディレクターが挨拶しました。
相変わらず手が早そうなのは同じですが、髪の毛は随分減少したと思う地の文です。
「手は早くねえよ」
ディレクターはズバリと指摘した地の文に小声で切れました。
でも、髪の毛の事は否定できないディレクターです。
「ううう……」
図星を突かれて項垂れるディレクターです。また抜け毛は増えそうです。
「またお会いできて光栄です、御徒町さん」
視聴率が取れれば土下座でもするチーフプロデューサーが言いました。
本当は樹里の授乳を見たかったのですが、さすがにもうそれはないとわかり、ちょっとガッカリしているムッツリスケベです。
「違う!」
憶測に推測を加算して二乗している地の文に切れるプロデューサーです。
「そうなんですか」
樹里はそれでも笑顔全開です。
「貝力さん、期待してますよ」
取って付けたように言うプロデューサーです。
「そんなつもりはない!」
更に疑惑の総合商社のような表現を用いる地の文に切れるプロデューサーです。
「ありがとうございます」
事務所の社長とマネージャーにプロデューサーには愛想よくと教え込まれている奈津芽は作り笑顔で応じました。
「自然な笑顔です!」
奈津芽は勝手な妄想を繰り広げる地の文に切れました。
「そうなんですか」
それにも関わらず、樹里は笑顔全開です。
顔を引きつらせて一連のやり取りを見ていた松尾アナと男性アナです。
(また抜け毛が酷くなりそうだ……)
ディレクターは育毛剤を早めに取り寄せようと思いました。
そして、番組が始まり、いよいよ樹里と奈津芽の宣伝の時間が来ました。
「さて、番組の冒頭でも予告致しました通り、本日は女優の御徒町樹里さんと貝力奈津芽さんにお越しいただいております」
松尾アナの紹介で、登場する樹里と奈津芽です。
「おはようございます」
二人は笑顔で声を揃えて挨拶しました。
「今週の土曜日から公開される『メイド探偵は見た ご主人様、お別れの時です』に主演されているのですよね?」
男性アナが言いました。
「はい。この映画をたくさんの皆さんに見ていただくために日本中を駆け回るつもりです」
優等生なコメントをそつなくこなす奈津芽です。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で応じました。
「番組をご覧の皆さんの中から抽選で二十名の方に映画の無料観賞券をプレゼントしたいと思います」
奈津芽が更にカンペに書かれた台詞を笑顔で読みます。
「そうなんですか」
樹里は合いの手のように応じました。
「それは凄いですね。応募先は今画面の下に出ていますので、奮ってご応募くださいね」
松尾アナが年齢に似つかわしくないぶりっ子な声で告げました。
「ぶりっ子じゃありません!」
可愛くほっぺを膨らませて抗議する松尾アナにメロメロの地の文です。
「御徒町樹里さんと貝力奈津芽さんでした。どうもありがとうございました!」
松尾アナは笑顔で拍手して、樹里と奈津芽を送り出しました。
(船越さんがいないと、本当にホッとするわ)
松尾アナはディレクターと微笑み合いました。二人はできているようです。
「できていません!」
全力否定の松尾アナを見て、ちょっとだけ傷ついたディレクターです。
そして、ADが出したカンペを見て松尾アナと男性アナは凍りつきそうになりました。
(サプライズゲストが中継先にいる?)
「ええっと、樹里さんがもう一つ主演されています映画『黒い救急車』の宣伝をするためにある方がスカイツリーの前にいらっしゃいます」
誰なのかわかってしまった松尾アナは顔を引きつらせて言いました。
「やっほー、樹里、見てる? なぎさだよお」
大方の予想通り、またしても登場のなぎさです。
「そうなんですか」
プロデューサーに呼び戻されてまた出演の樹里です。
「メイド探偵もいいけど、黒い救急車も観てね!」
なぎさは映画の宣伝用の看板を掲げて言いました。
「最後に決めポーズをしますね。朝○バ!」
裏番組のタイトルコールをしてしまうなぎさに蒼ざめる松尾アナと男性アナとディレクターとプロデューサーです。
「そうなんですか」
やっぱり樹里は笑顔全開です。
めでたし、めでたし。