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樹里ちゃん、ライバル事務所に敵視される

 御徒町樹里は世界に躍進し続ける企業グループの創業者である五反田六郎氏の邸の専属メイドで、とうとうハリウッドデビューが決定間近の女優でもあります。


 ですが、決して、ヌードにはなりませんし、金髪にもしません。




 今日は上から目線推理作家の大村美紗原作の「メイド探偵は見た ご主人様、お別れの時です 前編」の撮影の日です。


 撮影場所は、予算の関係で五反田邸です。


 心の広い五反田氏が無償で提供しました。今世間に蔓延はびこっているブラック企業とは大違いです。


「○タミさんですか?」


 樹里がいきなり尋ねました。あまりの危険球ぶりに言葉を失う地の文です。


 そして、ご機嫌取りのために当選祝いの酒樽を送ろうと思う地の文です。


 樹里はいつものように愛娘の瑠里を連れて、保育所に向かいます。


「樹里様と瑠里様にはご機嫌麗しく」


 眼鏡男と愉快な仲間達が滑り込みセーフな登場をしました。


 最近、カットされてしまう事が多いので、作者にお中元を贈ったらしい眼鏡男です。


「贈ってはいません!」


 賄賂的なものを忌み嫌う眼鏡男は推測でものを言うブラックな地の文に切れました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「おはようございます」


 カットを恐れて信号の手前まで迎えに来るという荒技に出た保育所の男性職員の皆さんです。


「おはようございます」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「おはようごさます」


 瑠里も笑顔全開で挨拶しました。それを見て感極まる職員さん達です。


(こいつら、危ない)


 眼鏡男達は職員さん達を危険人物に認定しました。


(こいつら、いつも何で樹里さんと一緒にいるんだ?)


 男性職員さん達も眼鏡男達を警察に通報しようと考えていました。


 どちらもある意味危険なのは同レベルだと思う地の文です。


 


 その頃、都内にある某芸能事務所「ポリプロダクション」では、幹部会議が開かれていました。


「我が事務所の最大のライバルであるオッカーの御徒町樹里と船越なぎさは、あの五反田六郎をバックに付けて、ロクに実力もないのにドラマや映画に幅を利かせているようです」


 専務が言いました。するとそれを受けて常務が、


「まるで剛○と○田みたいじゃないか」


 危険球発言だったので、自主規制した地の文です。


「それで、二人を潰すために送り込んだやり杉雄すぎおはどうしているのかね?」


 社長が営業部長に尋ねました。営業部長は揉み手をしながら、


「只今、鑓は次の作戦を準備中です」


「早く潰せと言っておきたまえ。殺す必要はないが、芸能界にいられなくなるくらいには痛めつけるのだ」


 社長はまるで大村美紗のような顔で言いました。


「はい、社長」


 営業部長も美紗のような顔で応じました。


 


 樹里は無事、五反田邸に到着しました。


「では樹里様、お帰りの時まで失礼致します」


 眼鏡男達は敬礼して去りました。


「ありがとうございました」


 樹里が深々とお辞儀をしていると、


「樹里さーん!」


 いつものようにエロい事ばかり考えている新婚メイドの赤城はるな改め、目黒エロ子が走って来ました。


「エロい事ばかり考えてないし、目黒エロ子なんて名前じゃないわよ!」


 新婚ボケの目黒弥生が地の文に緻密に切れました。


「おはようございます、はるなさん」


 樹里は笑顔全開で昔の名前を言いました。弥生は苦笑いして、


「おはようございます。もうそろそろ新しい名前を覚えてください、樹里さん」


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「大村美紗先生がいらしています」


 弥生は露骨に嫌そうな顔をして告げました。


「嫌な顔なんかしてません!」


 正直過ぎる地の文にまたしても精密に切れる弥生です。


「そうなんですか」


 樹里はそれでも笑顔全開です。そして、美紗がいる応接間に向かいました。


 


「おはようございます、大村様」


 樹里は深々と頭を下げて挨拶しました。美紗はソファに上から目線で座ったままで、


「おはよう、樹里さん。さっき、誰かが遠くで私の悪口を言わなかった?」


「いえ、どなたも大村様の悪口は言っていないと思います」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「そうなの? おかしいわね」


 どうやら美紗は地の文がポリプロで囁いた言葉を聞きつけたようです。


 すでに妖怪の域に達していると思う地の文です。


「ほら、今また私の悪口を言った人がいるわ!」

 

 美紗は興奮気味に天井を見渡しました。


「どなたもおっしゃっていません、大村様。お疲れなのではないですか?」


 樹里は美紗に近づき、脈拍を診ました。すでに七百八ある資格の一つである看護師の顔になっています。


 後の七百七の資格も見てみたいと思う地の文です。


「そうね。働き過ぎね、私は」


 何故か誇らしそうに言う美紗です。どこまで傲慢なのでしょうか?


「ほら、また……」


 そこまで言って口を噤む美紗です。


(どうせ信じてもらえないのだから、言うのはよそう)


 苦笑いして樹里を見ました。


「お待たせ致しました」


 そこへプロデューサーと撮影スタッフが到着しました。


「やっと来たわね。さっさと始めなさいよ。忙しい合間を縫って、こうして来てあげているのだから」


 美紗は立ち上がって上から目線で言いました。


 誰も来てくれと頼んでいないと思いながら応接間を出て行くスタッフ一同です。


「やっほー、樹里! 来たよ!」


 するとそこへ何故か、出演予定のないなぎさが現れました。


「ひ、ひ、なぎさ、なぎさ……」


 途端に引きつけを起こす美紗です。


「回想シーンで登場する事になったって六ちゃん(五反田氏の事です)から言われて来たの」


 なぎさはヘラヘラ笑いながら言いました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「ひいい!」


 とうとう美紗はソファに倒れ込んでしまいました。


「あ、叔母様、そんなに嬉しいの、私が来たのが?」


 世界ポジティブ選手権優勝候補のなぎさが美紗に言いました。


「ひいい!」


 美紗はなぎさの言葉に更に悲鳴を上げ、泡を吹いてしまいました。


「なぎさ、なぎさ……」


 どこまで行っても、なぎさからは逃れられない運命の美紗なのでした。


 


 めでたし、めでたし。

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