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樹里ちゃん、璃里と赤ちゃんを見舞う

 御徒町樹里は世界に躍進し続ける五反田グループの創業者である五反田六郎氏の邸の専属メイドにして、ハリウッドからオファーがあったらしいママ女優でもあります。


 今日は、二人目の子供を先週出産した姉の璃里がいる母親の由里の家に来ています。


 そのせいで、昭和眼鏡男と愉快な仲間達も保育所の皆さんも、色ボケメイドの赤城はるなもパンチラマニアの警備員さん達も登場しません。


「色ボケじゃないわよ!」


 代表してはるなが切れました。今回はこれで終了です。


「最近出番が減ってるわよ!」


 更に強引に台詞を放り込んで来るはるなです。


 でも、名前すら挙げてもらえない上から目線の推理作家よりはましだと思う地の文です。


 璃里の夫の竹之内一豊は勤務先に育児休暇を申請し、只今絶賛子育て中です。


「ううう……」


 樹里と一緒に見舞いに来た世界の不甲斐ない夫の殿堂入りをした杉下左京が項垂れます。


「そんな殿堂入りあるか!」


 左京は定番の突っ込みをしました。切れが悪くなっているようです。


(俺は俺は……)


 立派に育児に参加している一豊の姿を見て、罪悪感から樹里との離婚を決意する左京です。


「決意してねえよ!」


 想像でお話を進行している地の文に左京は切れました。では早く決断してください。


「しねえよ!」


 更に切れる左京です。そんなところもダメ人間です。


「ううう……」


 図星過ぎて反論できないため、項垂れる左京です。


「どうしたの、左京ちゃん?」


 由里が三つ子をまるでジャグリングのように抱き替えながら尋ねました。


「ひっ!」


 その仕草に仰天する左京です。


「そうなんですか」


「しょーなんでしゅか」


 樹里と瑠里はそれでも笑顔全開です。


「璃里お姉さん、調子はどうですか?」


 出産を終えてしばらく寝込んでしまった璃里は顔色がまだすぐれません。


 居間のソファに座っていても、辛そうなのが見てとれます。


 それでも樹里は笑顔全開で尋ねました。それに引きつる左京と一豊です。


「ありがとう、樹里。もう随分良くなったわ。まだ本調子じゃないけど」


 璃里は苦笑いをして応じました。さすがお姉さんです。その程度では動じません。


「璃里は貧乳だから母乳の出も悪いのよ。でも、無理はしない方がいいしね」


 由里はさも心配そうに言いました。ムッとする璃里ですが、爆乳の由里に言われると反論できません。


「そうなんですか」


 思わず樹里の口癖で応じてしまう左京と一豊です。


「できれば、この子も母乳で育てたかったんだけど、ちょっと無理みたい」


 璃里はゆりかごの中ですやすや眠っている次女を見ました。


「そう言えば、名前は決まったんですか?」


 左京が尋ねました。何を思い上がっているのでしょう。


「思い上がってなんかいねえよ!」


 突然の地の文の意味不明の突っ込みに冷静に対処する左京です。


「考えるのが大変だったので、阿里ありにしました」


 一豊が毛筆で書いた色紙を見せました。


「いい名前ですね」


 わかり易いお世辞を言う左京です。ボキャブラリーが少ないと思う地の文です。


「お世辞じゃねえよ!」


 本当の事を言われて激高して反論する左京です。


「違うって言ってるだろ……」


 地の文の執拗な嫌がらせに精魂尽き果てた左京です。


「あーちゃん、ねんね」


 瑠里が笑顔全開で眠っている阿里に言いました。


「るーたん、しずかにしないと、メよ」


 阿里のお姉ちゃんの実里みりが瑠里に小さな声で言いました。


 二人でシーッと言い合いながら、そっと阿里から離れる心優しい実里と瑠里です。


「では、私がお手伝いしますね」


 樹里は阿里を抱き上げ、マシュマロを取り出して授乳を開始しました。


「えええ!?」


 仰天する一豊と左京と由里と璃里です。よく事情がわからない実里と瑠里は大喜びです。

 

「し、失礼します」


 一豊は樹里のマシュマロを見てしまったので、慌てて部屋から出て行きました。


「ううう……」


 すでに鼻血が止まらない左京です。久しぶりなので、かなり大量です。


「左京ちゃん、自分の女房のオッパイ見て興奮しないでよ」


 容赦のない由里がゲラゲラ笑いながら指摘しました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で授乳継続中です。


「樹里はまだ出るの?」


 璃里は目を見開いて尋ねました。


「はい。まだ出ますよ。しばらく阿里に飲ませに来ますね」


 樹里は笑顔全開で言いました。


「そうなんですか」


 璃里まで樹里の口癖で応じてしまいました。


「パパ、だいじょぶ?」


 瑠里がティッシュの箱を左京に差し出しました。


「ありがとう、瑠里」


 鼻血まみれの顔で瑠里に礼を言う左京です。


 何とか鼻血が収まり、ホッとした時です。


「左京さん、私達も早く二人目が欲しいですね」


 授乳を終えた樹里が耳元で囁いたので、よこしまな妄想をした左京はまた鼻血を噴きました。


 大量の輸血の必要性を感じる地の文です。


「ばっちいな、左京ちゃん! もう外に出てよね」


 家の持ち主である由里にムッとされてしまいました。


「すびばせん」


 鼻の穴にティッシュを詰め込んで詫びる左京です。


「そうなんですか」


「しょーなんでしゅか」


 樹里と瑠里はそれでも笑顔全開です。


 


 めでたし、めでたし。

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