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樹里ちゃん、もう一度赤城はるなを祝福する

 御徒町樹里は世界に躍進する企業グループの創業者である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 そして、とうとうハリウッドから出演のオファーが来ると予感する地の文です。


 


「樹里様にはご機嫌麗しく」


 今回は出演を成し遂げた昭和眼鏡男と愉快な仲間達です。


「おはようございます」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「おはよ」


 愛娘の瑠里も笑顔全開なので、眼鏡男達は日本代表がワールドカップ出場を決めたかのように感動しています。


 そして、樹里は笑顔全開でベビーカーを押し、保育所に向かいます。


 不甲斐ない夫の杉下左京の遺品の整理も終わり、後は喪が明けるのを待つだけです。


「勝手に殺すな!」


 どこにいるのかもわからない左京が力の限り切れました。


 でも、敵は地獄のデ○トロンではありません。


「そうなんですか」


 それでも樹里は笑顔全開です。


「おはようございます、樹里さん」


 今回はカットされまいと素早く割り込んで来た保育所の男性職員の皆さんです。


「おはようございます」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「おはよ、しぇんしぇい」


 瑠里が博多弁のような挨拶をしました。武田鉄矢に怒られると思う地の文です。


 樹里は瑠里を保育所に預け、愉快な仲間達のうちの一人が瑠里の護衛で残りました。




 いつものように何事もなく樹里は五反田邸に到着しました。


「では、またお帰りの際に」


 眼鏡男達は敬礼して去りました。彼等はどうやって生計を立てているのか気になった地の文です。


「ありがとうございました」


 樹里は深々とお辞儀をしました。


「おはようございます、樹里さん」


 住み込みメイドの赤城はるなが二日酔いの顔で登場です。


「違います!」


 口から出任せを言った地の文に切れ、フラッとしてしまうはるなです。


(祐樹になんて言おうか考えていたから、もう何日も眠れていない……)


 自分の心情をモノローグで語ってしまうという手抜きな演出をするはるなです。


「……」


 地の文に切れようと思ったはるなですが、目眩がして地面に倒れ込みました。


「はるなさん!」


 樹里はすぐさま七百八ある資格のうちの看護師の顔になり、はるなを支えました。


「どうしましたか?」


 はるなのパンチラが見られると思って、警備員さん達もやって来ました。


「そんな事は思っていません!」


 警備員さん達は深層心理を語ってしまった地の文に切れました。


 樹里は警備員さん達に手伝ってもらい、はるなを邸の中に運び、空いている客間のベッドに寝かせました。


「はるなさん、黒川先生をお呼びしました。大丈夫ですか?」


 樹里が脈拍を計りながら尋ねました。はるなは虚ろな目で樹里を見て、


「大丈夫です、ちょっと寝不足なだけですから……」


 強がりを言いますが、本当はもう丸三日も眠っていないのは内緒です。


「それは伝えてくれてもいいのに……」


 はるなは朦朧としながらも、気ままな地の文に抗議しました。


「どうしましたか?」


 黒川真理沙ことヌートが白衣を着て現れました。久しぶりの本格出演に緊張しているようです。


「脈拍は正常値です。瞳孔反応も呼吸も通常レベルです」


 樹里が真理紗に告げました。


「そうですか」


 真理沙は聴診器を取り出して、はるなの診察を始めました。


 真理沙に完全にボケを無視され、軽く落ち込んでいる地の文です。


「はるなさん、眠れていないようですね。何か心配事でも?」


 真理沙が微笑んで尋ねます。はるなは部屋の中には真理沙と樹里しかいないのに気づき、


「祐樹に偽名の事を何て説明すればいいのかわからなくて、悩んでいたら、眠れなくなってしまったんです」


 涙ぐんで言いました。その一連の仕草が可愛いと思う地の文です。


 真理沙は微笑んだままで、


「それなら心配いらないわ、キャビー。首領がうまく取り計らってくれるから」


 その言葉に目を見開くはるなことキャビーです。でも本当の名前は卯月うづき弥生やよいです。


「え? はるなさんて、キャビーさんだったんですか?」


 樹里のとんでもないボケに苦笑いするはるなと真理沙です。


「もうすぐ目黒祐樹さんがあなたのお見舞いに来ます。心配しないで、成り行きに任せてね、キャビー」


「はい、ヌートさん」


 はるなは涙ぐんで応じました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。




 しばらくして、本当にはるなの恋人である目黒祐樹が邸を訪れました。


「いらっしゃいませ、祐樹様」


 樹里が出迎えいました。祐樹は奥を覗き込み、


「はるなさんが寝込んでいるって、本当ですか?」


「はい。どうぞ、こちらです」


 樹里は客間に案内しました。


「祐樹……」


 はるなはまだ朦朧とする状態で、入って来た祐樹を見ました。


「はるな、大丈夫かい? あまり無理しなくていいんだよ」


 祐樹は笑顔ではるなの頬を撫でます。そのあまりの熱さに彼は驚いてしまいました。


「熱があるのか?」


「ううん、そうじゃないの」


 祐樹に触れられて興奮して顔が火照ったとは言えないはるなです。


「違うわよ」


 はるなは力なく地の文に切れました。あまりの健気さに涙ぐんでしまう地の文です。


有栖川ありすがわ先生から聞いたよ。はるなはあの水無月グループの重役の令嬢なのを隠して、僕と付き合っていたって」


 祐樹が目を潤ませて言ったのですが、はるなは初めてその事実を知りました。


(私が水無月グループの重役の令嬢?)


 何の事かよくわからないはるなですが、有栖川倫子ことドロントが仕組んだ話だとは理解しました。


「本当の名前を教えて欲しい。有栖川先生には本人から訊くように言われたんだ」


 祐樹ははるなに顔を近づけて言いました。はるなは恥ずかしさと嬉しさで気を失いそうです。


「私の名前は卯月弥生よ」


 はるなはそう告げると目を伏せました。


「はるなも可愛い名前だけど、本当の名前も素敵だね」


 祐樹の言葉にはるなは目を開けました。


「改めて言うよ。卯月弥生さん、僕と結婚してください」


 弥生に改めてプロポーズするというカッコいい展開をする祐樹に惚れてしまいそうな地の文です。


「はい」


 はるな、いえ、弥生は祐樹を真っ直ぐに見て応えました。祐樹はソッと口づけしました。


 真理沙と樹里は顔を見合わせて微笑みました。


「おめでとうございます、はるなさん。あ、弥生さんでしたね」


 樹里が笑顔全開で祝福しました。


「おめでとう、弥生さん」


 真理沙は涙ぐんで祝福しました。


「ありがとうございます、樹里さん、真理沙さん」


 はるなは涙を流してお礼を言いました。


 


 めでたし、めでたし。

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