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樹里ちゃん、芸能事務所に所属する

 御徒町樹里は世界的な大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 その上、押しも押されもしないママ女優でもあります。


 先日、樹里に危害を加えようとしてスタジオに潜入した大野おおの真千代まちよとその一味は、結局何もできずに撤収しましたが、真千代が睡眠薬で眠ってしまった騒動はその後警備の不行き届きだと発覚しました。


 真千代達が盆暮れ正月の付け届けを欠かさなかった警備員達のいる会社は契約を打ち切られ、別の警備会社が入る事になりました。


 それは五反田邸を警備している五反田グループの警備会社です。


 当日の出来事を調査員から報告された五反田氏が樹里が狙われたらしい事に気づき、スタジオ側と交渉したのです。


 スタジオ側としては、お得意様である五反田氏のグループの警備会社であれば、二つ返事で承知するしかありません。


「樹里さん、これからは不審者は絶対に中に入らせないからね」


 五反田氏が樹里に言いました。


「そうなんですか。ありがとうございます、旦那様」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「それから、樹里さん一人でスタジオやロケ先に行くのも危険だろうから、私の知り合いの経営する芸能事務所に所属したらどうだろうか?」


 五反田氏は樹里の身を案じて提案してくれました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「そこにはもちろん、貴女の親友の船越なぎささんにも所属してもらうよ。彼女も貴女同様、私にとっては大切な人だからね」


 何しろ、なぎさは五反田氏の親友ですからね。五反田氏の使いっ走りでもいいからお近づきになりたいと思う地の文です。


 樹里はその場で必要書類にサインして、その事務所に所属する事になりました。


「ご主人にも知らせた方がいいのではないかね?」


 五反田氏は不甲斐ない夫の杉下左京の事を思い出して言いました。


「夫は事件で忙しいので、後でお話します」


 樹里は笑顔全開で言いました。


「そうか、忙しいのか。それは良かったね」


 左京の探偵事務所が繁盛していない事を心配していた五反田氏はホッとしました。


「もう一ヶ月くらい家に帰って来ていません」


 そんな情報すら笑顔全開で話す樹里に少しだけ顔を引きつらせる五反田氏です。


「そうなんですか」


 つい樹里の口癖で応じてしまいました。


 五反田氏はその後仕事に出かけました。


「いいなあ、樹里さん。私も芸能界デビューしたいなあ」


 住み込みメイドで夜遊び女の赤城はるなが言いました。


「夜遊び女じゃないわよ!」


 はるなは適当な噂を広めておとしめようとする地の文に切れました。


「はるなさんは美人で聡明ですから、すぐに芸能界に入れますよ」


 樹里が笑顔全開で言うと、はるなは顔を赤らめて恥ずかしがり、


「樹里さんに美人だって言われると照れ臭いです」


 可愛いので何とか汚れ役でもいいから芸能界デビューさせてあげたいと思う地の文です。


「汚れ役はお断りよ! いい加減にしてよね!」


 聞き捨てならない事をこっそりと言った地の文に猛抗議するはるなです。


「そうなんですか」


 樹里はそれでも笑顔全開です。


 


 樹里とはるなが庭掃除をしていると、なぎさがやって来ました。


「やっほー、樹里。六ちゃんから聞いたよ」


 その後ろから、なぎさの恋人の片平栄一郎が来ました。


「樹里さん、はるなさん、おはようございます」


 片平君も素敵ね、と心の中で思うはるなです。恋人の目黒祐樹に言いつけましょう。


「そんな事思ってないし!」


 情報を捏造してなりすまし事件を起こそうとする地の文にはるなは激怒しました。


「私達、同じ事務所に入るんだよね」


 なぎさははるなと地の文の抗争を無視するかのように話を進めます。


「そうですよ」


 樹里は笑顔全開で応じました。なぎさはニコニコして、


「六ちゃんに頼んでさ、栄一郎もはるなさんも入れてもらおうよ。その方が楽しいよ」


 なぎさは芸能事務所をサークルだと思っているようです。


「あーいやいや、はるなさんはともかく、僕は所属はできませんよ」


 いつになく動揺している栄一郎です。


 あら、片平君たら私に気があるのね、と思うはるなです。やっぱり……。


「違います!」


 また勝手な妄想を繰り広げる地の文に切れるはるなです。


(もう、変な事を言われたから、片平君を意識しちゃいそう)


 はるなは火照った顔を手で扇ぎました。


「あ、やっぱりダメ」


 急になぎさが言いました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「どうしたんですか、なぎささん?」


 栄一郎はキョトンとしてなぎさを見ました。するとなぎさはクネクネしながら、


「だって、同じ事務所に入ったら、栄一郎、モテちゃうから、私、捨てられそう」


 妙な心配をしていました。


「そうなんですか」


 樹里はそれにも笑顔全開で応じました。


 栄一郎は恥ずかしさで顔を赤らめましたが、


「僕は絶対になぎささんを裏切ったりしませんよ。安心してください」


「ありがとう、栄一郎。大好き!」


 いきなりなぎさに抱きつかれてキスをされ、栄一郎は気絶しそうなくらい驚いてしまいました。


(羨ましい……。私も祐樹にあんな風にしてみたい……)


 なぎさの天真爛漫さが欲しいと思うはるなです。


 


 めでたし、めでたし。

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