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樹里ちゃん、とある親衛隊に狙われる(前編)

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 そして同時に日本で指折りのママ女優でもあります。


 樹里にはマニアックなファンがたくさんいますが、映画の共演者である加古井かこいおさむにも特殊なファンがいます。


 それはある程度年齢を重ねて、お金と時間がある女性達です。彼女達は別名「アラサー」とも呼ばれています。


「御徒町樹里、許すまじ! 理様の唇を私達に断わりなく奪うとは!」


 彼女達は樹里が加古井とキスシーンを演じた事をどこからか知り、樹里に憎悪の念を燃やしていました。


 それを一般的には「逆恨み」と呼びますが、彼女達にはそんな概念はミジンコほどもありません。


「御徒町樹里に正義の鉄槌を!」


 自称「加古井王子親衛隊」のメンバーは雄叫びを上げました。すでに危険です。


「さあ、皆さん、行きますわよ」


 親衛隊の隊長である大野おおの真千代まちよが号令します。


「おお!」


 すでに小学生にはおばさんにしか見えない人達が気勢を上げました。


「誰か悪口を言っているわね」


 真千代が呟きます。もしかすると上から目線作家の大村美紗と気が合うかも知れないと思う地の文です。


 


 そしてまた、樹里の親衛隊である昭和眼鏡男と愉快な仲間達も時を同じくして、似たような事を考えていました。


「加古井理、許せん! 我らの樹里様は、神聖にして侵すべからずなのだ!」


 いつになく熱くなっている眼鏡男達です。彼らはネットを駆使して、加古井の親衛隊が樹里襲撃を企てている事を察知していました。


 某情報部並みの収集能力が無駄に消費されていると思う地の文です。


「何としても不逞ふていやからの暴挙を阻止するのだ!」


 眼鏡男達はエイエイオーと掛け声を上げ、樹里達がいる撮影スタジオへと向かいました。


 今回も登場予定がない不甲斐ない夫の杉下左京は、離婚の危機だと思う地の文です。


「勝手に人の家庭を崩壊に導くな!」


 熱血弁護士に好かれているのがわかり、気もそぞろな左京です。


「違うよ!」


 姿も見せられないのに切れる左京です。


「あいつら、いつもと様子が違うな」


 それを電柱の陰から、某野球漫画の某姉ちゃんのように見ていた悪人面の男が呟きました。


 誰でしたっけ?


京亜久きょうあく半蔵はんぞうだよ!」


 悪人面の男が忘れっぽいフリをする地の文に切れました。


「気になるな」


 半蔵は眼鏡男達を尾行しました。


 


 樹里はスタジオに到着し、撮影の準備が終わるまで控室で親友の船越なぎさと五反田氏の愛娘の麻耶と共にティータイムです。


「樹里さんが羨ましいなあ。この前のキスシーンがうまく撮れていなかったので、もう一度なんでしょ?」


 加古井にメロメロで父親の五反田氏とボーイフレンドの市川はじめをヤキモキさせている麻耶が口を尖らせて言います。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


 実は加古井がもう一度樹里とキスをしたくて監督を買収したのは内緒です。


「麻耶ちゃんて、男の趣味悪いね。あんなののどこがいいの?」


 なぎさは板チョコをバリバリ噛りながら言いました。すると麻耶はウットリとした顔で、


「全部よ、全部。あんなに素敵な男の人、他にはいないよ、なぎさお姉ちゃん」


「そうなんですか」


 樹里となぎさが異口同音に言いました。


 それを部屋の隅で聞き、ホッとしている片平栄一郎です。


(なぎささんが加古井理に全く興味がないのは、一時的な事ではないんだな)


 いつしかなぎさも落とされてしまうのではないかと不安な栄一郎でしたが、その心配はないようです。


「私は栄一郎の方がずっとかっこいいと思うよ」


 なぎさがニコッとして見たので、顔が真っ赤になる純情な栄一郎です。


「そうなんですか」


 今度は麻耶とハモる樹里です。


 


 その頃、大野真千代率いる加古井親衛隊がスタジオの建物の前に来ました。


「さあ、乗り込むわよ」


 真千代が隊員全員を見ます。隊員達は大きく頷きました。その時です。


「そうはいかない。君達にはお引き取り願おうか」


 眼鏡男達が立ちはだかりました。全員、鎖帷子くさりかたびらを装備して、戦闘態勢は万全です。


「何よ、あんた達は?」


 真千代は汚いものでも見るような目をしました。


「我らは樹里様の親衛隊だ。樹里様に近づきたいのなら、まずは我らを倒してからにしてもらおうか」


 眼鏡男は噛まずに言えたので感動しています。


「うるさい、どけ、○貞!」


 真千代が最終兵器的悪口を言いました。


 それはまるで悪魔の呪文のように眼鏡男達を硬直させてしまいました。


「さあ、行くわよ」


 真千代は固まってしまった眼鏡男達を勝ち誇った顔で見てから建物に入って行きました。


「そういう事か。ならば俺のする事は只一つ。樹里様をあの魔女共から守る事だ」


 半蔵は力及ばず燃え尽きてしまった眼鏡男達に敬礼し、真千代達を追いました。


 後編に続くとは思わなかった地の文です。

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