樹里ちゃん、映画の打ち上げに出席する
御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドにして、「メイド探偵は見た 劇場版 その弐」にも主演している女優でもあります。
でも樹里は自分の事を女優とは思っていないようです。
今日は、映画の撮影の打ち上げがあります。
関係者一同が主な撮影場所になった五反田邸に集まっています。
いつもなら、住み込みメイドの赤城はるなのパンチラを楽しみにしている警備員さん達ですが、今日はベテラン女優の高瀬莉維乃が目当てのようです。
「半分当たっていますが、半分外れです」
警備員さん達はとうとう自分達がロリコンだと自白しました。長い間張り込みをした甲斐があったと思う地の文です。
「そっちが当たっている方じゃありません!」
警備員さん達は恣意的に内容を改竄した地の文に抗議しました。
どうやら、警備員さん達は高瀬莉維乃に乗り換えたようです。
捨てられたはるなの反撃が楽しみです。
「捨てられてないし、反撃もしないし!」
最初から全部聞き耳を立てていたはるなが切れました。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開です。今日は不甲斐ない夫の杉下左京も来ています。
やはり莉維乃目当てのようです。
「洒落にならないからその冗談はやめてくれ」
左京は血の涙を流して地の文に抗議しました。
プロデューサーと監督は、早速五反田氏と奥さんの澄子さんに擦り寄り、媚を売っています。
嫌な大人の見本市のようだと思う地の文です。
「うるさい!」
プロデューサーと監督は見事なハモりで切れました。
「打ち上げの場所を提供していただいてありがとうございます」
すでに指の指紋が消失したと噂のプロデューサーが五反田氏にお礼を言いました。
これで犯罪を犯しても捕まらないのでプロデューサーは嬉しそうです。
「違うよ!」
勝手に犯罪者に仕立て上げようとする地の文に切れるプロデューサーです。
「次の主演も是非お嬢さんでお願いできればと思っています」
プロデューサーは軽井沢の別荘のローンを払うために次回作を持ちかけます。
「それは内緒にしてくれ!」
ネタ晴らしをした地の文に懇願するプロデューサーです。
「しかし、次回作はもう作らせないと大村さんがおっしゃっていましたよ」
五反田氏は苦笑いして言いました。
原作者の大村美紗は、姪の船越なぎさを出さないという約束を反故にしたプロデューサーに激怒し、
「次は別の映画会社で作る!」
と息巻いたのです。
「それは大丈夫です。あの先生はちょっと煽てるとすぐにその気になりますから」
プロデューサーは魔王のような顔で囁きました。
「何ですって!?」
いつの間にか近くに来ていた美紗が鬼の形相でプロデューサーに詰め寄ります。
「ひいい、嘘です、大村先生、許してください!」
絶体絶命のプロデューサーです。五反田氏は彼を哀れみました。
別の場所では、主演の麻耶と樹里となぎさが雑誌のインタビューに応じていました。
「大ヒットすれば、第三弾もありますよね?」
女性記者が微笑んで麻耶に話を振ります。
「私にはわかりません」
麻耶は優等生の答えです。ところがなぎさが、
「第三弾は作らせないって、叔母様が言ってたらしいから、ないよ」
あっさりネタ晴らしです。唖然とする女性記者です。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開です。
「叔母様ったら、自分が映画に出してもらえないからって、そんな意地悪するんだよ。子供みたいでしょ?」
なぎさはケラケラ笑いながら恐れを知らない事を言ってのけています。
「大丈夫なのか、あんな事言って」
樹里に瑠里を預けられた左京は、瑠里をあやしながら心配していました。
「あーいやいや、なぎささん、それは言ってはいけないですよ」
その隣で項垂れるなぎさの恋人の片平栄一郎です。
「そうなんですか」
それでも樹里は笑顔全開です。
「第三弾ができないとすれば、大村先生のせいという事でよろしいのですか?」
女性記者はドキドキしながらなぎさに確認します。
「それで間違いないよ。だって、叔母様が付き合ってる人気俳優の大林稔次さんから聞いたんだから」
なぎさが凄いゴシップを晒しました。色めき立つ各紙の記者達です。もし本当なら不倫だからです。
「そうなんですか」
樹里はそれでも笑顔全開です。
「な、何を言っているの、なぎさ、嘘を吐いてはいけないわ」
丸っきりの棒読みの台詞を言いながら、美紗が割り込んで来ました。そんな時でもなぎさを見ていない美紗です。
「皆さん、今のは全部嘘ですわ。この子は虚言癖がありますの。オホホ……」
美紗は顔を引きつらせて記者達に説明しました。
「では、映画は第三弾が製作されるという事でよろしいのでしょうか?」
女性記者が確認の意味でもう一度質問しました。
「ええ、もちろんです。これだけ皆様に愛されている作品を私一人の勝手で製作できなくする訳がないでしょう?」
美紗は卒倒しそうになりながら、笑顔で応じました。
「良かったですね、お嬢様。次回もあるみたいですよ」
樹里が笑顔全開で麻耶に囁きました。
「そうなんですか」
麻耶は引きつりながら思わず樹里の口癖で応じました。
めでたし、めでたし。




