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樹里ちゃん、神戸蘭と宮部ありさの合同結婚式に出席する(後編)

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸に勤めるメイドです。


 今日はお仕事はお休みで、神戸かんべらん警部と宮部ありさの合同結婚式という黒魔術の儀式に参加しています。


「誰が黒魔術の儀式だ!」


 どこからか、蘭とありさの怒りの声が聞こえました。


 二人は今、アホのあっちゃんことベロトカゲの悪巧みで、どこかに監禁されているようです。


 その方が世の中のためなので、放置するべきだと思う地の文です。


「ふざけるな!」


 蘭とありさの声が切れました。最後の出演となるようです。


「何だと!?」


 更にヒートアップする蘭とありさの声です。


 


 礼拝堂に姿を見せ、羽織っていたローブの下は全裸というおバカ丸出しのあっちゃんです。


「そこはカットしてって言ったでしょ!」


 前回の失態を暴露する地の文に口を尖らせて抗議するあっちゃんですが、全然可愛くありませんので無視です。


「神戸と宮部を探すぞ、平井」


 ありさの夫という非常に物好きな道を選んだ加藤真澄警部が言いました。


「否定できない……」


 若干結婚を後悔し始めている加藤警部ですが、顔は凶悪犯です。


「関係ねえだろ!」


 加藤警部は心無い地の文の一言に切れました。


「加藤警部、急いでください」


 蘭の夫という史上稀に見るイバラの道を選択した平井拓司警部補が言いました。


「イバラの道なのかどうかはまだわかりませんよ」


 地の文のボケを軽くいなす平井警部補です。惚れてまうやろーの地の文です。


 二人は礼拝堂を飛び出して行きました。


「おい、ベロトカゲ、お前は本当にアホだな? ここにいる出席者のほとんどは現役の警察官だぞ」


 樹里の不甲斐ない事この上ない夫の杉下左京が言いました。


 一斉にあっちゃんを見上げる出席者達の目が、警察官の目になります。


「わかってるわよ、そんな事は。これでも食らいなさい!」


 あっちゃんはニヤリとして叫びました。すると礼拝堂の天井からたくさんの卵が落ちて来ました。


「何!?」


 左京は慌てて樹里を庇いました。どさくさに紛れて押し倒すつもりです。


「違うよ!」


 左京はよこしまな心の中を見透かした地の文に切れました。


「うわわ!」


 切れているうちに卵が次々に左京に当たります。


「いてて!」


 左京はグチャグチャになってしまいました。


「樹里、大丈夫か?」


 卵の白身と殻を払い除けながら、左京は樹里を探しました。


「あれ?」


 よく見ると、卵の直撃を受けたのは左京だけで、後の皆さんは全員礼拝堂の端に避難していて無事でした。


「ううう……」


 あまりの間抜けさに項垂れる左京です。


「そうなんですか」


 それでも樹里は笑顔全開です。


 


 一方、礼拝堂を飛び出した加藤警部と平井警部補は、通路にばら撒かれたビー玉に足を取られて転んでいました。


「ぬおお!」


 加藤警部は起き上がろうとして着いた手の下にまたビー玉があったため、滑って顔面を強打し、怖い顔がもっと怖くなりました。


「おのれえ!」


 加藤警部はビー玉を全部弾き飛ばしてようやく立ち上がります。


「たっくーん!」


 どこからか魔法使いのお婆さんの声が聞こえます。


「誰が魔法使いのお婆さんだ!」


 お婆さんは切れました。


「だからお婆さんじゃねえよ!」


 よく聞いてみると、蘭の声でした。


「蘭さん、どこですか?」


 平井警部補は加藤警部と違って無様に転んだりしていないので、顔はイケメンのままです。


「ここよ、たっくん!」


 蘭とありさは礼拝堂の屋根の上に不安定に乗せられた豚や牛を運ぶ時に使う檻に入れられていました。


「その表現の仕方は悪意があるぞ!」


 地の文の情景描写にイチャモンをつける蘭です。一緒に入れられているありさは高所恐怖症なのか、一言も発していません。


「きゃああ!」


 蘭が大声を出したので、檻が大きく傾きました。


「蘭さん!」


「宮部!」


 自分の妻になる女性の事を名字で呼ぶのはどうかと思う地の文です。


「は、恥ずかしいんだよ……」


 顔を赤らめて照れる加藤警部です。気持ち悪い上に怖いです。


「やかましい!」


 加藤警部は切れました。


「オーホッホッホ、拘置所で苦しんでいる亀島君の何倍も苦しませてあげるわ、神戸蘭、宮部ありさ!」


 屋根の上にあっちゃんが現れました。


「ベロトカゲ!」


 加藤警部と平井警部補があっちゃんを見て叫びます。


「アホ女め、蘭とありさを解放しろ!」


 白身塗れの左京が礼拝堂から出て来て言いました。


 説得力の欠片もない姿です。


「ううう……」


 地の文のストレートな批判に落ち込む左京です。


「六本木さんは亀島さんの事がお好きなのですね」


 樹里が笑顔全開で言いました。


「え? 好きなんかじゃないわよ。亀ちゃんとは一緒に仕事をした仲だから、只それだけよ……」


 樹里に妙な事を言われ、屋根の上でクネクネするあっちゃんです。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「六本木さんも一緒に結婚式を挙げたかったのかと思いました」


 樹里が更に笑顔MAXで言うと、あっちゃんが停止しました。


(私も結婚式を挙げたかったの?)


 亀島の笑顔がフラッシュバックします。まるで死んでしまったかのようです。


「死んでねえよ!」


 拘置所の中で一人寂しく切れる亀島です。


 バージンロードを歩く自分、その先で笑顔で待っている亀島。


 あっちゃんは今、妄想アイランドに一人旅立っています。


(ああ、私、亀ちゃんの事が好き……)


 またクネクネするあっちゃんです。


「私も結婚式を挙げたいわ!」


 大声で言ったあっちゃんの手首にガチャリと手錠がかけられました。


「ベロトカゲこと六本木厚子、拉致監禁の現行犯で逮捕する」


 こっそり屋根に登っていた平井警部補が言いました。


「大丈夫か、神戸、ええと、ありさ?」


 加藤警部は照れ臭そうに檻を支えながら尋ねました。


「マスミン……」


 加藤警部の優しい言葉に我に返ったありさです。


「いやあああ!」


 今度は高所恐怖症が甦り、絶叫しました。


「やかましいわよ!」


 蘭は耳を塞いで怒鳴りました。


「結婚式……」


 手錠をかけられた自分の手を呆然として見つめるあっちゃんです。


「拘置所で挙げてもらうんだな」


 何も活躍していないのに気取って言う左京です。


「そうなんですか」


 樹里はそれでも笑顔全開です。


 


 一応、めでたし、めでたし。

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