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樹里ちゃん、神戸蘭と宮部ありさに詰め寄られる

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドで、ドラマと映画で活躍するママタレです。


 その人気は絶大で、スマートフォンのアプリで「そうなんですか」という目覚ましコールがあるそうです。


 でも樹里は普通の携帯電話を使っているので、そんなアプリがある事すら知りません。


 そして今日も、五反田邸に出勤です。


「おはようございます、樹里さん」


 住み込みメイドの赤城はるなが慌てふためいて走って来ました。


 目の下の隈が、夜遊びの何よりの証拠です。


「うるさいわよ!」


 鋭い推理を展開する地の文に切れるはるなです。


「おはようございます、はるなさん」


 樹里は笑顔全開で挨拶しました。


「樹里さん、宮部ありさ様がお見えです」


 はるなは息を落ち着けながら言いました。


「そうなんですか」


 樹里はそれでも笑顔全開です。




 ありさは応接間で樹里を待っていました。


「おはようございます、ありささん」


 樹里は瑠里をベッドに寝かせてから応接間に行きました。


「おはよう、樹里ちゃん。仕事先まで顔を出してごめんね」


 ありさは樹里ににじり寄りました。


「樹里ちゃん、この前、蘭のバカがここに来たでしょ?」


「蘭のバカという方は存じません」


 樹里は笑顔全開で否定しました。ありさは項垂れました。


(そういう子だったのを忘れてたわ……)


神戸かんべらんがここに来たでしょ?」


「はい、いらっしゃいました」


 樹里は更に笑顔で応じます。


「あいつ、私と同じ式場で同じ時間に式を挙げるんでしょ?」


 ありさは小声で尋ねました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じます。


 ありさは挫けそうになりましたが、何とか踏み止まりました。


「樹里ちゃん、あいつの式に出席するって言ったの?」


「はい、言いました」


 樹里は悪びれる事なく答えました。


「あいつの式に出るという事は、私達の式には出ないという事なの?」


 ありさは樹里の手を握りしめて充血した目で尋ねました。


「いえ、ありささんの式にも出席しますよ」


 樹里はそれでも笑顔全開で言いました。


「どうやって? 時間も一緒なのよ」


 ありさは涙ぐんでいます。


「蘭さんの式には左京さんが出席して、ありささんの式には私と瑠里が出席します」


 樹里が笑顔全開で答えると、ありさはムッとして、


「蘭の式になんか出なくていいの! 左京には私達の式に出席しなさいって言って」


「では、私と瑠里が蘭さんの式に……」


 樹里が言うと、ありさがそれを遮ります。


「だから、蘭の式には樹里ちゃんも出なくていいの!」


「瑠里だけ蘭さんの式に出席するのは無理ですよ」


 樹里が深刻な顔で言ったので、ありさはまた項垂れました。


(久しぶりに樹里ちゃんとサシで話したら、メチャ疲れた……)


 心が折れそうになっているありさです。

 

 


 その頃、神戸蘭は樹里の不甲斐ない夫である杉下左京の探偵事務所にいました。


「だから、ありさの式には貴方も樹里も出なくていいわよ!」


 蘭が今にも掴み掛からんばかりの形相で左京を睨みます。


「いや、しかし、瑠里だけありさの式に出席という訳には……」


 似た者夫婦になって来たと思う地の文です。


「そんなボケはいらないわよ!」


 蘭は左京の襟首を捩じ上げました。


「お、落ち着け、蘭、冷静になれ……」


 左京は苦笑いして蘭を説得しました。


「あんた達家族は、全員私達の式に出席すればいいのよ!」


 蘭は鬼も逃げ出す顔で左京を威嚇しました。


「もし、当日ありさの式に出席したら、その時は覚悟しなさいよ!」


 蘭は捨て台詞のような言葉を残して、事務所を出て行きました。


(今頃、ありさの奴、樹里を説得しているはず……。そうはいかないわ)


 蘭は五反田邸に向かいました。


(蘭の式に出席しないと、多分命が危ない……)


 左京はありさを見限る事にしました。相変わらずセコい男です。


「やかましい!」


 的確な表現をした地の文に切れる左京です。


 


 ありさを見送って庭掃除を始めた樹里のところにまたはるなが駆けて来ました。


 何故か涙ぐんでいます。


 恋人の目黒祐樹に別れ話でも切り出されたのでしょうか?


「違うよ!」


 はるなは思い当たる節があるのか、顔色を悪くして切れました。


「樹里さん、神戸蘭様がお見えです」


 はるなは鬼の形相の蘭に会って、腰を抜かしそうになったようです。


「そうなんですか」


 でも樹里は相変わらずの笑顔全開です。




 蘭は応接間で樹里を待っていました。


「いらっしゃいませ、蘭さん」


 樹里は笑顔全開で挨拶しました。


「樹里、ありさの式には出ないでちょうだい。左京も承諾してくれたわ」


 蘭は目を血走らせて樹里を見ました。


「そうなんですか」


 樹里は全く怖じ気づく事なく、笑顔です。


「ですが、先程ありささんに出席する事を約束してしまいました」


 樹里は笑顔で言いましたが、蘭は顔を真っ赤にして、


「ダメよ! あいつの式には出ないで! 貴女も左京も私達の式に出なさい!」


「では、瑠里だけでもありささんの式に……」


 樹里が新提案をしました。


「夫婦で似たようなボケかますな!」


 蘭は樹里と左京の時間差の夫婦めおと漫才に切れました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


 こうして、左京も樹里も蘭の式に出席する事で落ち着きました。


 


 めでたし、めでたし。




「めでたくねえよ! そんな勝手、許すもんか!」


 ありさが猛反発しました。


 はてさて、どうなることやら。楽しみな地の文です。

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