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樹里ちゃん、ドロントと共闘する?

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 ドラマの撮影と映画の撮影が一段落し、樹里はいつものように邸に出勤します。


「おはようございます、樹里さん」


 住み込みメイドで目黒祐樹にメロメロの赤城はるなが挨拶しました。


「おはようございます、キャビーさん」


 いきなり昔の名前で呼ばれて、思わず赤いトラクターに乗りたくなるはるなです。


「なるか!」


 はるなは中年以上の人々にしかわからない話をごく当たり前のようにする地の文に切れました。


「は!」


 その時はるなは殺気を感じ、樹里と瑠里を庇って邸の門をくぐりました。


「どうしたんですか、はるなさん?」


 樹里が不思議そうな顔で尋ねます。


「また殺し屋が現れたようです。樹里さん、邸の中に避難してください」


 はるなは辺りを警戒しながら言いました。


「そうなんですか」


 樹里はそれでも笑顔全開で応じます。


「今頃気づいても後の祭だ」


 どこかから声が聞こえました。


「前の祭はどこですか?」


 樹里が尋ねました。


「知らねえよ!」


 声が切れました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じます。


「どこにいるの!?」


 はるなは樹里と瑠里を庇いながら叫びました。


「お前如きに見つけられはしない。死ね!」


 上空から黒尽くめの男が舞い降りて来ました。


「樹里さん、逃げて!」


 はるなは舞い降りて来る黒い仮面を着けた黒尽くめの男を待ち構えます。


「はっはっは、私は囮だ、間抜けな女め!」


 黒尽くめの男はニヤリとして地面に降り立ちます。


「何ですって!?」


 はるながハッとして樹里を見ると、樹里は五人の黒尽くめの男に囲まれていました。


「樹里さん!」


 はるなが助けに向かおうとすると、


「お前の相手は私だ、こそ泥」


 さっきの黒尽くめの男がはるなに掴み掛かりました。


「えい!」


 はるなは男の腕を跳ね除けます。


「樹里さん!」


 樹里に近づこうとするはるなですが、男に阻まれます。


「お前の相手は私だと言っているだろう、こそ泥」


 どうやらロリコンのようです。気持ち悪いです。


「誰が宮崎○だ!」


 男が問題発言をしたので、伏せ字にしました。


 決してナ○シカの作者の事ではありません。


「私はロリコンではない!」


 男はムキになって否定します。どうやら容疑濃厚です。


「違う!」


 ロリコン男が地の文とトンマなやり取りをしているうちに、はるなが樹里に追いつきました。


 項垂れるロリコン男です。


「樹里さんに手を出すな!」


 はるなは素早い蹴りと突きを男達に繰り出しますが、男達はまるで新体操の選手のように華麗に舞い、はるなの攻撃をかわしてしまいました。


「温いぞ、こそ泥」


「うるさい!」


 嘲笑する男達に激怒したはるなが突進すると、上から網が落ちて来て捕らわれてしまいました。


「ああ……」


 はるなはたちまち男達に網ごと縛り上げられ、木の枝に吊るされてしまいます。


「あれ?」


 男達がハッと気づくと、樹里は何事もなかったかのように邸の玄関の扉を開いていました。


(樹里ちゃんが無事なのは良かったけど……)


 はるなは樹里が全く気にせずに行ってしまったのを嘆きました。


「哀れだな、こそ泥。お前は捨て駒にされたのだ」


 ロリコン男がニヤリとして言いました。


「私はロリコンではない!」


 男はまた地の文に切れました。


「今日は邸にはあの女しかいない。やれ!」


 どうやらロリコン男がリーダーのようです。他の男達が一斉に玄関に走ります。


「おまちどう様でした」


 樹里が戻って来て、深々とお辞儀をします。どうやら瑠里を寝かせに行っていたようです。


「樹里さん!」


 嬉しさのあまり号泣し、涙で樹里がよく見えないはるなです。


「バカめ、わざわざ殺されに来たか、御徒町樹里?」


 リーダーは樹里を嘲笑いました。


「警備員さんはどうしたのよ!?」


 はるなはもがきながら叫びましたが、警備員さんはすでに仲良く気絶していました。


「はるなさんを出してあげてください。でないと、私、怒りますよ」


 樹里は笑顔全開で言いました。


「何を言っている? お前が柔道の有段者なのは知っている。だからお前とは接近戦はしない。遠くから狙い撃ちだ」


 リーダーは部下達に指示して、銃を構えさせます。


「卑怯者!」


 はるなが叫びました。


「やれ!」


 リーダーの号令で部下達が引き金を絞ります。その時でした。


「私の可愛い部下に何してくれるのよ、ロリコンオヤジ!」

 

 どこからかオバさんの声がしました。


「誰がオバさんだ!」


 オバさんの声が真実を語った地の文に切れました。


「何者だ!?」


 黒尽くめの男達が辺りを見渡しました。


 たちまち銃を弾き飛ばされる男達です。


「ドロント参上」


 現れたのは、はるなの元雇い主である怪盗ドロントと先輩のヌートです。


 二人の登場と共に、部下五人がバタバタっと倒れてしまいます。


「げ……」


 リーダーは形勢が一気に逆転されたのを悟りました。


「さあ、どうするの、ロリコンさん?」


 ドロントは仮面の下の目をギラッと光らせて尋ねました。


「くそ!」


 男はバッと飛び上がると、部下を見捨てて逃げ去りました。


「追わなくていいんですか、首領?」


 ヌートに助け出されたはるなが言いました。するとドロントはフッと笑って、


「大丈夫。私に抜かりはないわ」


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開です。はるなはそんな樹里に駆け寄り、


「樹里さん、ありがとうございます。私のために……」


と涙ぐみました。


「はるなさんの事を瑠里は大好きなんです。いつも瑠里を可愛がってくれますから。だからその恩返しですよ」


 樹里が笑顔全開でそう言うと、はるなは号泣して樹里に抱きつきました。


「樹里さーん!」


 樹里ははるなを優しく抱きしめ返しました。


 


 一方、リーダーは雇い主の渋谷栄一の邸に戻っていました。


「またしくじったのか、愚か者め!」


 渋谷は醜いガマガエル顔を更に醜くして激怒しました。


「申し訳ありません、渋谷様」


 リーダーはガマガエルの形相に恐れをなし、震えて土下座しました。


「次で最後だ。次でしくじったら、死を以て償ってもらうぞ」


 渋谷はリーダーを睨みつけて言いました。


「はい!」


 リーダーは床に額を擦りつけて言いました。


「次なんかないわよ、ガマガエルさん」


 またオバさんの声がしました。


「だからオバさん言うな!」


 もう一度オバさんの声が切れました。


「だ、誰だ!?」


 渋谷は天井を見渡しました。


「初めまして、渋谷さん」


 天井から舞い降りたのはドロントとヌート、そして久しぶりのキャビーです。


「な、何だ、お前らは!?」


 渋谷は仰天して言いました。


「世界的大怪盗のドロント一味よ、ガマガエルさん」


 ドロントはニコッとして言いました。


「何だと!?」


 渋谷は三文芝居のように驚きました。


 蜷川幸雄がいたら、灰皿を投げつけているでしょう。


「うるさい!」


 渋谷は地の文の的確な指摘に切れました。


「もう貴方、おしまいよ、渋谷さん。五反田氏を何度も殺し屋を使って襲わせた事実、そして今回の御徒町樹里さんの殺人未遂、全て記録させてもらっています」


 ドロントはデジタルビデオカメラを取り出しました。


「な、何だと……」


 嫌な汗をいっぱい掻き、まるで四六の蝦蟇がま状態の渋谷です。


 出所後は筑波山に就職が決まりそうです。


「あんたもそれなりに裏社会でのし上がって来たんだろ? だったら最後くらい潔くしたらどうだい?」


 ドロントがバシッと言い放ちます。


 渋谷邸のあちこちにパトカーが乗りつけました。


「さてと。後は警察の皆さんにお任せするわ」


 ドロント達は煙幕と共に消えました。


「ううう……」


 渋谷はそのまま床に手を着き、項垂れました。


 


 ドロント達は邸の木の上で神戸蘭達に連行される渋谷と黒尽くめの男を見下ろしています。


「首領らしくないですね。儲からない仕事しちゃって」


 キャビーが言います。するとドロントはスッと一枚の画用紙を差し出しました。


「報酬はもらい過ぎているほどよ」


 その絵は、五反田氏の愛娘である麻耶が描いた有栖川ありすがわ倫子りんこの絵でした。


「有栖川先生、大好き」


 麻耶の言葉が綴られています。倫子の横には、麻耶らしき女の子の絵も描かれていました。


 笑顔で倫子を見ています。


「確かにもらい過ぎですね。この絵の首領、可愛過ぎ」


 キャビーは涙ぐんで言いました。


「うるさい」


 ドロントは目を潤ませて返します。


 


 めでたし、めでたし。

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