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樹里ちゃん、高瀬莉維乃に意地悪される

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 親友の船越なぎさの叔母である大御所推理作家の大村美紗の要請を受け、彼女の「メイド探偵は見た」のドラマに出演する事になりました。


 主演はオーディションを知らないうちに勝ち抜いたなぎさです。


 なぎさ演じる市原菜々子が働く邸の女主人役に大女優の高瀬たかせ莉維乃りいの


 その夫役に惚けた演技が好評の詰橋つめはしいさお


 娘役に若手の美人女優の南山みなみやま景子けいこ


 テレビ局の力の入れようがよくわかる豪華な顔ぶれです。


 


 今日は撮影初日です。


 なぎさと樹里はスタジオの控室で出番を待っていました。


 樹里は愛娘の瑠里に授乳中なので、男性スタッフの多くが撮影そっちのけで見に来ています。


「凄い人気ですね、なぎささん」


 樹里は自分を見に来られているとも知らずに言いました。


「困っちゃうなあ、もう。私、すごく人見知りだからさあ」


 意味がわかって言っているのかと思うなぎさの発言です。


 覗きに来た男性スタッフ達も呆れ顔です。


(でもなぎさちゃんも可愛い)


 そうも思うスケベ連中です。


 なぎさは今回のドラマの主役が決まった時点で、多くのスポンサーからCMのオファーが殺到しています。


 大村美紗の姪にして、大富豪の五反田氏とも親しいなぎさは話題性抜群なのです。


 しかし、マニアな人達は、チョイ役で出る事になっている樹里に注目していました。


 当然の事ながら、以前樹里をグラビアデビューさせた有海ありうみ範人のりと氏も樹里に注目しています。


(彼女はドラマのチョイ役で終わるような存在ではない。この芸能界の頂点に立つ女性だ)


 有海氏は樹里の映画出演を画策していました。




 多くの人で賑わう樹里となぎさの控室の様子を見聞きし、高瀬莉維乃は面白くありません。


(あんなポッと出の女が!)


 なぎさは利用するつもりなので、莉維乃は樹里をターゲットにしました。


 莉維乃の新人虐めは業界では有名で、多くの若手女優が芸能界を去ったほどなのです。


「あの女の出番はいつ?」


 莉維乃はマネージャーに尋ねました。


「あと三十分です」


 マネージャーがビビりながら答えました。


 莉維乃はニヤリとして、


「そう。ならば、私からコーヒーの差し入れをしてあげようかしら? きっと喉が渇いているでしょうから」


 マネージャーは莉維乃の顔を見て身震いしました。


 その顔はまさしく悪い魔女の顔だったのです。


 


 樹里は眠ってしまった瑠里をスタッフが用意してくれたゆりかごに寝かせました。


「可愛いなあ、瑠里ちゃん。私も早く赤ちゃんが欲しいなあ」


 なぎさが言いました。


「あーいやいや、まだまだ先の話ですよ、なぎささん」


 陣中見舞いに駆けつけたなぎさの恋人の片平栄一郎は顔を赤らめて言いました。


「そう? 今年の夏辺りに出産したいんだけどなあ」


 なぎさの自由奔放発言に仰天する栄一郎です。


 それは物理的に不可能だと思う地の文です。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開です。


「失礼します」


 そこへ莉維乃のマネージャーがホットコーヒーの入った紙コップを二つトレイに載せて現れました。


「いらっしゃいませ」


 職業病なのか、樹里は椅子から立ち上がって深々と頭を下げました。


「誰?」


 なぎさが言いました。マネージャーは、


「高瀬莉維乃のマネージャーです。高瀬からコーヒーの差し入れです。どうぞお飲みください」


 マネージャーはテーブルの上にトレイを置くと、


「では」


 そそくさと退室します。


「変な人」


 なぎさはそう言ってカップを手に取ります。


「船越様、出番のお時間が早まりました」


 スタッフがなぎさを呼びに来ました。


「え? そうなの。何だ、コーヒー飲みたかったのに」


 なぎさは残念そうに控室を出て行きました。


「樹里、私の分も飲んでいいよ」


 なぎさはそう言いましたが、


「瑠里に良くないので、カフェインは採らないようにしています。栄一郎さん、よろしかったらどうぞ」


 樹里は栄一郎に言いました。


「あーいやいや、僕はコーヒーは苦手で」


 栄一郎は恐縮しながら言いました。


「そうなんですか」


 樹里はトレイを持って控室を出ます。


「飲まないのも失礼ですね」


 樹里は高瀬莉維乃にお詫びに行く事にしました。


 するとそこへなぎさがいなくなったのを見計らって大村美紗が現れました。


「大村様、お疲れ様です」


 樹里はトレイを持っているので会釈ですませました。


「あら、樹里さん、気が利くわね」


 美紗は樹里が持ってるトレイのコーヒーを自分に持って来てくれたと勘違いしました。


 さすが上から目線作家です。


 美紗は二つとも飲んでしまいました。


「美味しかったわ、樹里さん」


 美紗は上から目線で言うと、スタスタと歩き出しますが、突然コテンと倒れてしまいました。


「大村様!」


 樹里が駆け寄ります。スタッフ達も驚いて駆け寄りました。


「どういう事なのよ!?」


 それを物陰から見ていた莉維乃がマネージャーに食ってかかりました。


「私にも何が何だか……」


 マネージャーは莉維乃の剣幕に漏らしそうです。


「御徒町樹里め、今度は必ず痛い目に遭わせてあげるわ」


 莉維乃は樹里を睨みつけて呟きました。


 


「な、なぎさ、なぎさ……」


 莉維乃によってコーヒーに仕込まれた睡眠薬で眠ってしまった美紗は、夢の中でなぎさに追いかけられていました。


「助けてー!」


 美紗は絶叫しながら迫り来るなぎさから逃れようと必死で走りました。


 


 莉維乃の嫌がらせはこれからも続くようです。

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