樹里ちゃん、赤城はるなにアドバイスする?
御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。
今日も愛娘の瑠里をベビースリングで抱き、元気に通勤です。
「おはようございます、はるなさん」
樹里は住み込みメイドの赤城はるなに挨拶しました。
「おはようございます、樹里さん」
はるなは何故か眠そうです。
「どうしたのですか、はるなさん?」
樹里が不思議そうな顔をして尋ねます。
するとはるなは、
「実は、祐樹さんと今日デートなんです。それで、夕べ眠れなくて」
と恥ずかしそうに言いました。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で応じました。
そして、瑠里に授乳してベビーベッドに寝かせると、仕事にかかります。
「樹里さん」
はるなが樹里に真剣な表情で声をかけました。
「何ですか?」
樹里は掃除用具一式を持ちながら尋ねます。
「やっぱり、男の人って、胸が大きい女の子が好きなんでしょうか?」
はるなは小声で尋ねました。
「どうしてそう思うのですか?」
樹里は笑顔で更に尋ねます。
「だって、樹里さんも胸大きいし、璃里さんも胸大きいし……」
はるなは悲しそうです。
「私は出産したから大きくなっているだけですよ。子供におっぱいを飲ませるために乳房はあるのですから、男の人は関係ないですよ」
樹里の真正面からの解答に苦笑いするはるなです。
「それはそうでしょうけど……。樹里さんの旦那さんはどうなんですか? あの人の周りの人、皆胸が大きいですよね?」
はるなは、宮部ありさと神戸蘭を思い浮かべます。
「でも、ドロントさんは小さいですよね」
樹里は笑顔全開で言ってはいけない事を言いました。
蒼ざめるはるなです。
(首領は地獄耳だから、聞きつけて来るかも)
でも、さすがのドロントも五反田邸の会話は聞こえなかったようです。
五反田駅前にあるビルの中の水無月探偵事務所。
「ハックション!」
水無月葵ことドロントが大きなくしゃみをしました。
「風邪ですか、首領?」
黒川真理沙ことヌートが尋ねました。
「うーん、寒暖差アレルギーかも」
ドロントはムズムズする鼻を擦りました。
(今時、噂をされたからくしゃみが出たなんて古い話、誰も言わないわよね)
ドロントはそう思いましたが、実はその通りでした。
再び、五反田邸です。
庭掃除をしながら、はるなはしばらくドロントが来ないかと周囲を警戒していましたが、
「はるなさん、次のお仕事に移りますよ」
樹里に言われて、
「は、はい!」
と駆け出します。
はるなはキッチンで洗い物をしている時にまた樹里に尋ねました。
「樹里さん、首領の事はともかく、やっぱり男の人って、胸が大きい女の子が好きだと思うんですよ」
はるなはあくまで「巨乳至上主義」です。
「はるなさんはどうしてそんなに胸にこだわるのですか?」
樹里は首を傾げてはるなを見ます。
(ああ、可愛い、樹里ちゃん!)
おかしな気分になりそうなはるなです。
「私の胸が貧相だからです」
はるなはシュンとして答えます。
「そうなんですか? そんな事ないと思いますよ」
樹里は笑顔で言いました。
「え?」
はるなはびっくりしました。
樹里がいきなり胸を触り始めたからです。
「樹里さん、そんな、私、そういう趣味なくて……」
真っ赤になって照れるはるなです。
(でも樹里ちゃんとなら……)
もうすぐ陥落しそうなはるなです。
「私はワ○ールのビューティアドバイザーの資格を持っているのです」
樹里ははるなのブラの付け方を調べていただけでした。
さすが資格マニアです。
「そ、そうなんですか」
期待してしまった自分が恥ずかしいはるなです。
樹里の指導ではるなはブラを付け直しました。
するとあら不思議、バストが盛り上がったのです。
「おおお! 夢にまで見た谷間が!」
感動して涙を流すはるなです。
「はるなさん、女性の象徴は確かに乳房かも知れませんが、それだけにこだわっていては、大事な事を見失ってしまいますよ」
樹里のまともバージョンが本編にも浸透したのかと思う地の文です。
「はい」
はるなには樹里が「美の伝道師」に見えていました。
(首領には内緒にしとこう)
心が狭いはるなです。
やがて、樹里達の仕事は終わり、樹里は帰る時間になりました。
はるなは迎えに来た目黒祐樹とお出かけです。
「楽しんで来てね、はるなさん」
五反田氏の愛娘で、祐樹に心惹かれていた麻耶が笑顔で言います。
「はい、お嬢様」
はるなはそれに感動して涙ぐみます。
「ごめんなさい、祐樹お兄様。私、クラスに好きな子ができたの。だから私の事は諦めてね」
麻耶はニコッとして言いました。
「そう。それは残念だな」
祐樹は麻耶の優しさを感じました。
祐樹とはるなは腕を組んで五反田邸を出て行きました。
「大人になったわね、麻耶」
麻耶の立派な態度に感動し、母親の澄子さんが彼女を後ろから抱きしめます。
「うん」
麻耶は少しだけ涙に濡れた目で澄子さんを見ました。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で素敵な母子を見ています。
めでたし、めでたし。