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樹里ちゃん、種飛ばし大会に参加する

沢木先生のお題である「フライングスペシャル」に基づいて書いてみました。


ちょっとエロいので気をつけてね!

 御徒町樹里は日本で五指に入る大富豪(決して五指が入るのではありません)である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。




 今日は日曜日です。


 樹里は夫の杉下左京と愛娘の瑠里と一緒に、G県T市にある梅園に来ています。


 以前解決した殺人事件が縁で、G県警の招きで来たのです。


「お招きいただき、ありがとうございます」


 左京が本部長に挨拶しました。すると本部長は、


「いやあ、お子さんがお産まれとは知りませんでした。後でお祝いを送らせてください」


と樹里と話しています。左京は項垂れました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開です。


「ここ、T市の梅林は北関東随一です。後で梅干も差し上げますので、お持ち帰りください」


 T警察の署長も樹里の美しさを聞き、呼ばれていないのに来ています。


「君は何故ここにいるのだね?」


 本部長はムッとしてT警察署長に尋ねます。すると署長は、


「ここは我が署の管轄です。樹里さんに何かあっては一大事ですから、護衛を兼ねて参りました」


と敬礼しました。


「うぬぬ」


 そう言われてしまうと反論できない本部長です。


 


 こうして、一部でいさかいはありましたが、樹里と左京は梅園のイベントを見学する事になりました。


「地の文まで俺を邪険にしてる……」


 先に樹里の名前を書いたので、左京がいじけています。


 でも仕方ありません。このお話は樹里が主人公で、左京は「脇役」ですから。


「ううう」


 左京に更に追い討ちをかける性格が悪い地の文です。


 樹里達は梅干や梅ゼリー、梅ようかん、梅茶、梅パン、梅ジュースをもらいました。


 そして最後にこのイベントの締めを飾る種飛ばし大会が始まりました。


 ここまでいいところがない左京が意地になり、参加をしました。


「昔、飛ばした種で敵の戦闘機を落とした腕を見せてやるぜ」


 笑いを取ろうとしましたが、誰も聞いていません。


 頼みの樹里はマシュマロを出して瑠里に授乳中です。


 周囲にいるT警察のおまわりさん達は、警備しているフリをして樹里のマシュマロに釘付けです。


「ガルル!」


 それに気づいた左京は樹里の前に立ち、おまわりさん達を威嚇します。


 やがて、種飛ばし大会が始まり、特設の台の上から老若男女が種を飛ばします。


 子供達は種より自分が飛んでいます。


 お爺さんは種ではなく、入れ歯が飛んでしまいました。


 お母さんは勢いがつき過ぎて、スカートのホックが弾け飛びました。


 お父さんは思い切り頭を動かしたせいで、種ではなくかつらが飛んでしまい、大恥を掻きました。


 そしていよいよ左京の番です。


「ああ、その辺の人、危ないですよ、種が当たりますから」


 左京は五十メートルくらい先にいるカメラマンに言いました。


 カメラマン達は肩を竦めて一応避けました。


(ここで一番飛ばしてみせて、樹里に感動してもらうんだ。で、今夜二人目を……)


 よこしまな力で種を飛ばすつもりの左京です。


「うるせえ!」


 自分の妄想を地の文に覗かれて切れる左京です。


 左京は精神統一をし、構えます。


 一瞬、辺りが静まります。


 左京は思い切り反り返り、反動をつけて、


「ブウー!」


と種を噴き出しました。


 しかし、種は上に上がってしまい、ポトリと台の上に落ち、


「失格です」


 真っ白に燃え尽きる左京です。


 会場全体から大ブーイングです。


 左京は担架で運ばれました。


「私も参加していいですか?」


 樹里が笑顔全開で言いました。


「もちろんですよ。お子さんをお預かりしましょう」


 本部長が言いました。


「大丈夫ですよ」


 樹里は笑顔で応じます。


 そして、眠っている瑠里をベビースリングで抱きかかえたままで、台の上に行きます。


(あの子が飛ばした種が欲しい)


 邪な妄想をする男共がたくさんいます。でも、正義は勝ち、悪は滅びるのです。


 樹里は係員さんから梅干をもらって食べます。


「美味しかったです」


 樹里は種まで食べてしまいました。そこにいた全員が約束していたかのようにこけました。


「それじゃあ競技になりません。種は食べずに飛ばしてください」


 係員さんは項垂れながらもう一つ梅干を渡します。


「そうなんですか」


 樹里は今度は種を残して食べました。


 樹里の飛ばした種を手に入れようと目を血走らせる男達。


 それを呆れて見ている女性達。


 会場に緊張が走ります。


「行きます」


 樹里は高々と右手を上げました。まるでオリンピックです。


「ふ!」


 樹里が種を飛ばしました。


「よし!」


 飢えた男達が、係員を押し退けて種を追おうとしました。


「え?」


 しかし、樹里の飛ばした種は、梅園から遥か彼方へと飛んで行ってしまいました。


 一同唖然です。


「計測不能です。種飛ばし大会フライングスペシャル、優勝は御徒町樹里さんです」


 場内アナウンスが告げました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開です。


 樹里の優勝を聞き、燃え尽きていた左京が復活です。


「樹里!」


 左京は駆け寄ろうとしましたが、


「はい、押さないでね」


とおまわりさんに野次馬扱いされて近づけませんでした。


(今夜は俺が思いっきり種飛ばしだ!)


 酷いエロネタで締めようとする左京ですので、無視して続けます。


 樹里は優勝商品の梅干一年分と梅ゼリー一か月分、梅ジュース一年分をもらいました。


 


 めでたし、めでたし。

お粗末さまでした。

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