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樹里ちゃん、過去に旅する?

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 この前、ベロトカゲことアホのあっちゃんが元警視庁の刑事で、元ドロントの部下であった亀島と共に現れました。


 亀島は杉下左京を憎んでおり、探偵事務所壊滅を宣言しました。


 その上、グウタラで全然役に立たない宮部ありさが左京の事務所を辞め、ドロントこと水無月葵の探偵事務所に行ってしまうという波乱が起こりました。


 ありさは樹里に、


「スパイとして潜入したのよ」


と言ったらしいのですが、性格がねじれている左京はそれを信じていません。


 ですから、主人公に相応しくないと判断し、主役を降りてもらう事になりました。


「おい!」


 地の文の独断専行に切れる左京です。


「どうして俺が降板しなきゃならないんだよ!?」


 左京は涙目で訴えました。


 簡単な話です。貴方は全然活躍していません。


「ううう……」


 それを言われると一言もない左京です。


「畜生、それもこれもみんなあいつが悪い!」


 左京はまだ放置されているありさの机を睨みます。


 樹里がありさの写真を飾り、花瓶に花を生けて置いたので、まるで殉職したようです。


「殉職……」


 ありさの笑顔の写真を見て、昔の事を思い出す左京です。


(あいつが死んだと聞かされた時、俺も死のうと思った)


 左京はありさを邪険にしながらも、惹かれている自分に気づいたのです。


(あの時の俺は、紛れもなくありさを愛していたんだ)


 今になって気づくバカ左京です。


「一度でも愛した女を全く信用しないなんて、俺は何て心の狭い人間なんだ」


 左京はありさを疑った事を恥じました。


 そして、彼女と警察で働いていた頃を思い出します。


 自分もまだ若く、ありさも神戸蘭も若い時代です。


 


 左京はある殺人事件の被疑者を追いかけていました。まだ年が明けて間もない一月上旬です。


 いつもは蘭と行動していた左京でしたが、その時は蘭が別の事件で負傷し、入院していたので、ありさと組んでいました。


「高校時代を思い出すね、杉下君」


 その頃のありさは今ほどえげつない性格ではなく、もっと素直で可愛い女性でした。


「嫌な事を思い出させるなよ、宮部」


 左京は拳銃の弾を確認しながら言います。


「何よ、私との甘い高校生活を思い出したくないの?」


 ありさが冗談めかして言うと、


「よせよ」


 左京は照れました。そして何より、その頃は蘭の事が気になっていたので、ありさには興味がなかったのです。


「つれないなあ、杉下君は。宮部じゃなくて、ありさって呼んでよ、昔みたいに」


「やなこった」


 左京は本当に嫌な奴でした。やっぱり降板させましょう。


「何でだよ!」


 その当時の左京が地の文に切れました。


 二人は車に同乗し、聞き込みに回りました。


 そして遂に犯人の潜伏先を突き止め、そのアパートに突入しました。


 犯人は隣の部屋に住んでいた主婦を人質にとり、アパートに立て籠ってしまいました。


 左京は応援を呼び、交渉人に説得に当たってもらいましたが、犯人は一向に応じる気配を見せず、時間ばかりが過ぎて行きます。


「人質の女性は大丈夫なのか?」


 左京はそれが気になっていました。


 犯人は何をするかわからない状態です。ずっと喚き散らしているのです。


「俺が身代わりになる」


 左京は決断し、犯人に呼びかけました。


 しかし犯人はそれには応じず、


「現金で一億用意しろ! もちろん円でだ。ウォンじゃないぞ!」


と要求して来ました。


「言いたい放題ね」


 ありさも忌ま忌ましそうに歯軋りしました。


 その時でした。


 何も知らない小さな女の子が、いつの間にかアパートに近づいていたのです。


「危ない!」


 左京は慌てて女の子を助けようとしましたが、犯人に見つかり、狙撃されました。


 肩を掠められただけで助かった左京でしたが、アパートに入ってしまった女の子は犯人に捕まってしまいました。


 更に警視庁捜査一課は追い込まれました。


 マスコミが嗅ぎつけて中継を始め、左京達の失態は多くの人の知るところとなります。


「まずい。テレビ放送を犯人が見れば、こちらの動きが筒抜けになる。どうすればいいんだ?」


 左京は焦りました。しかし事態を打開する手立てがありません。


 その時でした。


「うわあ!」


 いきなり中から犯人の叫び声が聞こえ、窓ガラスを破って、犯人が転がり出して来たのです。


「何だ?」


 左京達が何が起こったのか、訳がわかりませんでした。


「確保!」


 左京はすぐさま犯人を取り押さえ、長期化すると思われた立て籠り事件は解決しました。


 その後、中から女性と女の子が出て来ました。


 二人とも無事なのを知り、左京はホッとしました。


「大丈夫ですか?」


 左京は二人に駆け寄り、毛布と温かい飲み物を渡しました。


「ありがとうございます」


 女性が笑顔全開で応じました。


 


「あれ?」


 現在の左京です。


「あの時の女性の顔、樹里にそっくりだったような……」


 左京は首を傾げました。


(あの事件は、確か犯人を女の子が投げ飛ばしたんだったな。柔道を習っていたとかで。って事はあの女性は?)


 事件は十年以上前です。


 年代的に考えて、アパートにいた女性は樹里の母の由里、あの女の子は樹里。


「ははは……」


 左京は大笑いしました。


「何だよ、樹里。確かに俺はお前を殺人事件の容疑から救ったけど、それより遥か以前に俺の方が助けられていたんじゃないか」


 左京は樹里との不思議な縁にジンとしました。


 


 めでたし、めでたし。

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